Re:4 ひとりぼっちミミック
俺のミミック生活は三日目に突入していた。
しばらく探索をしてて、ここについて少しずつわかってきた。
このダンジョンは結構広く、入り組んでいる。
だがレイアウトは単調でたまに大部屋があるくらいで、景色も変わり映えしない。
何度か下に向かう階段を見かけたので何層かあるのだろう。
しかし未だに上に向かう階段を見かけてない。
ここが最上階なら出口があると思って探しているのだが、未だ発見には至っていない。
道中でモンスターも複数見かけた。
黒曜石のような体のゴーレム、黒い毛並みの赤目兎。
黒い鱗を持った大型のトカゲ。
どうもこうも黒ずくめのモンスターばっかりだ。
見た目からして最初に挑むダンジョンのモンスターって感じはしない、なんで勇者たちはこんなところに挑んだのだろうか。
自分のたちの実力を見誤って、というのが一番ありえるパターンだろうか。
この世界の事情に疎いからあまり確証はないが。
このダンジョンで一度だけほかの冒険者を見かけた。
そのパーティは前衛後衛しっかり分かれていて、罠や隠し扉を警戒しながら慎重に進んでるのが見てとれた。
少なくとも宝箱があったらすぐに開けに行くことはしないだろう。
あれだ、しっかりイ◯パスを使ってから宝箱開けるタイプだ。
不意打ちできたとしてもおそらく勝てない、そもそもそのパーティが勇者一行より人数が一人多いってのもあるし、付けてる装備がまるで違った。
勇者は勇者のコスプレ衣装みたいなのしか着てなかったが、あの冒険者たちは前衛の軽装なやつでも革鎧と鎖帷子を混ぜて動きやすくしていた。
思えば思うほど、ここは勇者パーティには早かったのではないだろうか。
そんなことを考えながら通路を進んでいると、道脇に置かれた宝箱が目に入った。
もしかしてと思い、警戒しながらも近づき、舌先でツンとつつく。
何も起きない。
今まで複数個宝箱を見てきたが、全て普通の宝箱だ。
ああ同族よ…同族のミミックはおらんかえ…
このダンジョンでミミックは俺だけなのだろうか?
罠には事前に存在を周知させて、そこに意識を割かせるという使い方があるが、戦闘の場でもないしミミックの場合は罠の主目的での運用の方が効果的だと思う。
確かにダンジョン内にいるミミックの数は少なければ少ないほど、本命への警戒心は薄れ、罠にかかる確率は下がるが効果的になる。
それを踏まえるとダンジョンにミミックが一匹しかいないのは十分納得できる。
ただ同族がいないのは少し寂しい気がする。
いや、ただ仮にほかのミミックに出会えたとしても会話はおろか意思疎通ができるのかちょっと怪しいところではある。
ゲームでよく見るミミック系のモンスターの知能が高いようには思えない。
宝箱に擬態して獲物を罠にかけることからある程度はありそうだが、地球の自然界にそれくらいする動物とか結構いる。
その動物たちが人間と話せるか?流石に無理だ。
それにミミックが話せる知能を持ってたとしてもこの口は言葉を発するのに不向きすぎる。
何回か言葉を発そうと試してみたが、全力で頑張って超かすり声になる感じだ。
とても聞き取れるものではない。
ただこの世界の人の言葉が俺でも理解できるのは勇者たちで証明されてる。
どういうわけか彼らは日本語で話していた。
なので筆談ならなんとか行けるのではないか。
ミミックの舌でもペンを持たせればちゃんと書ける自信がある。
まぁ、一番の問題はやっぱり誰もミミックと会話なんかしようと思わんよな…
ミミックなんて冒険者にとって天敵だ。
おそらく前世の俺もザ◯キやザ◯キーマに苦汁を飲まされたことだろう。
宝箱と向き合ってそんなことを考える。
側から見たら宝箱が二つ並んでる変な光景だろう。
この世界でミミックはどういう存在なのだろう。
ダンジョンにいる他のモンスターは動物みたいな存在なのか?
ダンジョンの中に独特の生態系が築かれているのか。いや、それだと生態系の底辺がどこから出現してるのかがわからない。
やはりこういう世界でよくあるダンジョンから直接沸いてるのだろうか。
最奥にコア見たいのがあって、その力で生まれてるとか。
モンスターの中にはゴーレムもいたから、そっちの方がしっくりくる気がする。
ただ、俺はどうなんだろう。
ダンジョンから生まれたとしたら、そこに前世の知識を持つ俺の意識がなぜ取り込まれてしまったのか。
前世の記憶がないせいで俺が死んだのかすらちょっと怪しくなってきた
どうしよう、俺作られた人格とかだったら…
他に転生者とかいれば、意見交換とかできるのだが、少なくともこんなどこにあるかもわからないダンジョンでは出会えないよな。
いるかどうかもわからないし。
うわ、どうしよう、あの勇者転生者とかだったら…
急に不安になってきた。流石にそんなことではなかったと信じたい。
考えを振り払うように、ダンジョンの探索を再開した。
なんかたくさんいいねしてくれた人がいたみたいです、ありがとうございました…!!