表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者殺しのミミック  作者: 練度
18/30

16 ギルマス達の憂鬱(前編) ☆セレネ視点

かつて水の都トレリカにて「水姫」として名を馳せた冒険者がいた。

巧みに水魔法を扱い、味方の支援を一手に担い、時には華麗にモンスターの集団を捌く。

彼女は当時の街の冒険者のみならず街人からも好かれていた。


しかし、とある日彼女は受けた依頼先で《セラフィノ》という魔竜と出くわす。

当時《塔級》の冒険者だった彼女とそのパーティはAランクモンスターであったその魔竜に手も足も出ず、彼女以外の冒険者は全員死んだか大きな外傷を受けた。

だが魔竜の気まぐれか、彼女だけは無傷で生かされた。


【ザナニマ】というスキルをかけられて。




彼女は目を覚ますと体が萎んで、子供になってしまっていた。


魔力は据え置きだったが、今まで振っていた杖も、身につけていたローブも、気になっていた先輩の冒険者も、全て身の丈に合わないものになってしまった。



それが、ちょうど20年前の出来事。

現在彼女はトレリカの冒険者ギルドのギルドマスターを務めている。


そんなセレネは今トレリカを離れ雪の中馬車に揺られている。

隣町、「アルバーナ」へと向かう最中だった。



勇者殺しの第一容疑者が捕獲されたという情報を聞き、そのモンスターと、勇者のことを話し合うためアルバーナのギルドマスターと会合をする手筈となっている。


馬車の中から外の雪景色を見る。

確か、あの依頼を受けて子供の体になったもの、雪が止んだ直後の、こういう天気だった。




アルバーナのギルドマスター、彼の名はグルギョイ。

歪な発音だが、彼の故郷だと一般的な名前らしい。

20年以上前、何度か依頼を共にこなしたことがあり、ギルドで顔を見みかければ声をかけ、互いに一言二言話して目的が合えば一緒に依頼に行くような関係だった。

常にパーティを組んでいたわけではないが、パーティメンバーの次によく一緒に戦った覚えがある。


恰幅のいい男で、あまり格好がいい顔ではなかったが、やさしい笑顔で味方への攻撃を前線で受け止めていたタンカーだった。


セラフィノ討伐に向かった際も、彼はいた。

生き残ったのは私と彼だけだった。

彼はセラフィノに片腕を食いちぎられ、冒険者生命をたたれてしまったのだ。


私たちはそれから別々のギルドの元冒険者としてギルドの職員になりお互いギルドマスターとまで上りつめた。

私の知り合いの中では最も長い付き合いのある人物だ。


そんな彼とこれからとても、とても憂鬱な話が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ