10 魂のリンク
前回のステータスの掲示に誤りがありました。
【デス】のスキルレベル、正しくはLv3です。
夢を見た。
巨大な図書館、あらゆる世界の知識が集められたいわばアカシックレコード。
その中をふよふよ移動している。
一つの本に、それが黄金の輝きを放つかのように惹かれる。
その本を開き、中を見る。
中には、ありとあらゆる魔物の知識が書かれていた。
ドラゴンやワイバーン、アルミラージや、カーバンクルまで。
そして当然ミミックも。
本を閉じて題名を見ようとした。
…そして、夢から覚める。
===============
「ピィ!」
カーバンクルの声で目が覚める。
なんか変な夢見てた気がするな、なんだったか。
蓋を開けてカーバンクルを探す。
目の前でカーバンクルが跳ねてる。
っていうか、お前いつも箱の中で寝てんのにどうやって出てんだ。
確認したいがいつもカーバンクルが先に起きるから知りようがない。
「ピィー!」
カーバンクルがぴょんぴょん跳ねる。
どうした、何がしたいんだお前。
くるくると箱の周りを回ってる。
何がしたいのかわからないが、取りあえす雪洞から出る。
かなり朝方のようだ、まだ周囲が少し暗い。
「ピィピィ!」
カーバンクルがくるくると箱の周りを走る。
なにか訴えてるだろうか。
それか、犬っぽいし散歩にでも出たほうがいいのか。
カーバンクルが少し先に向かってこちらに向かって鳴く。
わかったよ、俺も行くよ。
カーバンクルに連れられ森の中を散策する。
犬とか飼ったことはないが、散歩とかこういうものなのだろうか。だとしたら悔しい。こんなかわいい生物を前世で飼ってなかったなんて。
カーバンクルは生物としてすごい犬っぽい。兎のような耳と額にルビーはあれど仕種はほぼ犬だ。
いやまあ、飼ってなかったからあんま正確わからんけど。
森はやはりほとんどが針葉樹らしい。雪は被ってるが葉は生きてる。
針葉樹ってなんで寒さに強いんだっけ…広葉樹が内部で直接水分を運ぶのと違って確か個々細胞が水分が運ぶから凍らないんだっけか。
しばらく進むと、だんだんと森の木々が少なく、小さくなっていき、いずれ完全な平原に出た。
不思議に思っていると、少し先の段差下に海辺があった。なるほど、潮風であれ以上生え広がらないのか。
カーバンクルが海に入りたそうな顔をしていたがなんとか制する。今入っても冷たいし塩で毛がベトベトになる。
いつか、な?
「ピィ…」
森の中へ引き返す。
戻っている最中、カーバンクルが突如道を変える。
「ピィ!ピィ!」
ついてきてとでも喋り出しそうな感じだ。
ついていくと、木の実…っていうかベリーの群生地についた。
ここであのベリーを集めてたのか。
舌を伸ばして一粒摘み、中身の口に運ぶ。
甘!
この世界でちゃんとした味覚を感じたかもしれん。人間の味についてはノーコメント。
カーバンクルも手を伸ばしてプチプチとベリーを集めている。
集めては…俺の箱の中に入れてきた。
俺はベリーを運ぶための箱じゃないが。剣などは雪洞に置いてきたから切れはしないが。
さも当然といった表情でベリーを運んでくるカーバンクル。
お前こうやって使うために俺についてきてるわけじゃないよな?
しばらく摘み、箱がベリーで埋まってきた。
今中身を寄せて、ベリーを溜めるための窪みを作っている。
カーバンクルは満足げに箱の中のベリーを眺めてる。十分らしい。
じゃあ、帰るか。
四角いスタンプのような跡をたどり、雪洞に帰る。
中に入るとカーバンクルが穴を掘り出し、そこを指し示す。
言われ…てはないが、指示の通りにそこにベリーを流し込む。
ある程度の貯蔵はできた。
カーバンクル、お前一晩で全部食べるなよ?
一瞬カーバンクルの体がギクッと止まった気がした。
ベリーを集めているときにいつのまにか昼になっていたらしい。
午後どうしようか、レベル上げのための狩場を探したいが散歩中魔物は一匹も見なかった。
冬だから冬眠してるのだろうか、そもそも魔物は冬眠するのか?魔物と動物の違いってなんなんだろう。
ってか、動物と呼べる存在と出くわしていない。もしかして動物がいない世界線?
見たわけでもないのに俺がここまで動物と魔物の区別を確信しているかっていうと、【魔物の英雄】、この称号だ。
魔物と明記されてるから、俺も魔物って言葉を使ってる。
うーん、いると思うんだけどなぁ。動物。
けど例えば、大体RPGで狼型のモンスターが出てくる。
この世界で狼が出るとしたら、動物としてか、魔物としてなのか。
…多分両方?
動物の「狼」、それと魔物の「なんちゃらウルフ」みたいのがいそうだ。
…うーん、考察しても結局ちゃんと動物を見てみないとな。
「ピィ」
カーバンクルを見る。
どうしたお前、動き足りないか?
タタっと外に出て、こちらに再度鳴いてくる。そのようだ。
俺も外に出る。
いうてこれ以上…あそうだ。
【ルーン魔法】で枝を撃ち落とし、舌で受け止める。
…
ポーイと遠くに放る。
…
「ピィ?」
カーバンクルが何して欲しいの?って表情で見てる。
失敗だったか…棒を拾ってくるのって犬の本能とかじゃないのか、ちゃんと調教されてる犬じゃないと…
って思ったら。
カーバンクルが即座に走り出し、棒を咥えた。
おぉ!やっぱ拾ってくるのか!
拾ってきた棒を俺の前に置いた。かわええ。
ケモナー化しそう。
その後しばらく棒を投げては広ってを繰り返し、いろんなことをしてカーバンクルと遊び倒した。
楽しかった…けど、俺もカーバンクルもクタクタだ。
雪洞に入り、カーバンクルが箱に入ってきて丸まるや否や、すぐにすやすやと眠り始めた。
それを確認した俺も、すぐに目を閉じて眠りについた。
===============
次の朝、俺はステータスのアナウンスで起きることになる。
《カーバンクルとの間に【魂のリンク】が構築されました》
ん…
ん?
何、魂リンク?
【魂のリンク】
《魂が繋がった者同士の間に構築される繋がり》
《真に信頼したもの同士でなければ発現しない》
《繋がれた者同士は、近くの相手を感じることができ、互いのステータスを確認することができる》
これは…
上で眠ってたカーバンクルが目を覚ました。
「ピィ!ピィ!」
と俺に向かって鳴いている。
マジか、こんな…スキル?スキルなのかこれは?
てかカーバンクルのステータスが見れるだって…?見てみるか…
『種族:カーバングル
状態:なし
-[スタッツ/Lv:4]-
HP:37 MP:68
攻撃:12 敏捷:29 頑丈:7 魔力:31
-[スキル]-1
〈通常スキル〉
【気配探知:Lv5】【危険感知:Lv7】
【脱兎:Lv7】
【嗅覚強化:Lv4】
〈特技スキル〉
【レッサーヒール:Lv4】
〈特性スキル〉
【第三の目:Lv—】【深緋のルビー:Lv3】【魂のリンク:Lv—】
-[称号]-
【幸運の証:Lv--】【Fランクモンスター:Lv--】』
色々あるな…お前。
「ピィ!」
カーバンクルが急かすように鳴く。
なんだ、なんか見てほしいのがあるのか…?
じゃあ特性とか…
【第三の目】
《特徴的な感覚器官、または極度の集中状態から発動されるスキル》
《相手の思考、感情を読むことができる》
…………………………………………。
え、お前心読めんの?
カーバンクルが自慢げに首を縦に振った。