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第9話 やはりCEOは最強協力者ですね!?

「し、し、し、CEOのお役に立てるか分かりませんが、精一杯頑張りますので、よ、よ、よ、宜しくお願い致します!!!」


CEOの自室に室長と共に入り、私は深々と90度頭を下げる。


緊張は最高潮、足はガクガク、声は裏返り、我ながら情けない。


「…黒崎くん、戸塚さん虐めてない?」

「聞き捨てなりませんね」


CEOが黒崎室長に問う。


「戸塚さん、そんなに緊張せずに頭を上げて」

「お、恐れ入ります…」


CEOの穏やかな声が聞こえ、おずおずと頭を上げる。


「夜だし、強制でもなんでも無いから黒崎くんの圧に断れなかったなら、無理しなくてもいいんだよ?」


目が合うとCEOは穏やかに微笑んで、包み込むように私に声をかけてくれた。


「い、いえ!私めがCEO直々に白羽の矢を立てて頂きました事、心より光栄に思っております!」


就職の面接さながら、直立不動に立ち意気込みを語る。


「…黒崎くん、なんて言ったの?」

「益々聞き捨てなりませんね。私は要件以外口にしませんよ」

「その要件以外が大事なコミュニケーションでしょ…」


いつもの室長に少しげんなりしたようなCEOに私も少し緊張感が薄れてきた。


「戸塚さん、好き嫌いある?食べ物」

「は…?いえ、特には…」

「そんなに緊張感のある仕事では無いから、心配しないで。逆に意気込みを空回りさせるだろうから、その時はごめんね」

「は、はい」


緊張感の薄れた私はよく理解出来ない話が続いている。


「でさ、黒崎くん。戸塚さんも初めてで何も分からないだろうから、その日は黒崎くんもサポートしてあげてね」


………ん?


「私の仕事を増やすおつもりですか?」

「そんなるかな?…あ、そうだ。その分の仕事、戸塚さん手伝ってあげてくれるかな?」


室長はスーッとCEOを見据える。そしてCEOはそれを全く気にせず私ににこやかに笑いかける。



……


これって…


もしかして…



「会食は僕と黒崎くんと戸塚さんの三人で行こう。そこで戸塚さんは今後の為に黒崎くんから色々と学んで貰って、そして黒崎くんの仕事をサポートしてくれる?」


CEOのにこやかな笑顔の奥に…全てが仕組まれている事を察した。


〝CEOも味方同然〟あの時の由紀の言葉を思い出した。

さすが、大企業と言われる我社のトップである…


(CEOは私と室長の接点を作って下さっているんだ…!)


千載一遇のチャンス。これはもう、流れに乗らないと…!



「はい!精一杯頑張りますので宜しくお願い致します!」




✽✽✽


「やっぱりCEOは格が違うわね〜」

「…デジャヴ?」


(数時間前にも聞いたような…)


CEOの自室を出て、給湯室に行くと由紀に捕まりまたしても洗いざらい話した。


「段取りと気遣いが紳士よね〜」

「本当にね」


CEOのおかげで室長と接点が取れた。しかも一日ぽっきりでは無く、今後も室長の仕事をサポートするという形に収まった。


これは、やはり…


「ね、由紀。これはやっぱりCEOは私の気持ちに気づいてるって事よね?」


私はCEOに直接は何一つ伝えていないのだが。


「言わずに感じ取ってくれる男がこの世にいたとは…やっぱりCEOはかっこいいわねー。大人!ジェントルマーン」

「…ね、由紀。私ってそんなに分かりやすい?もしかして室長にもバレてる?」

「私は言われるまで分からなかったわよ。室長にバレてるとどうなの?」

「恥ずかしい」

「出た!あのねー、意識してもらえるキッカケを作ったとは思えないの?」

「きっかけ?」

「〝自分の事を恐れている部下〟と〝自分の事を好きな部下〟さあ、自分ならどっちが嬉しい!?」

「…確かに」


第三者の目線に目から鱗が落ちる。


「好き好きオーラを出し過ぎるのもどうかと思うけど〝好意持ってます〟くらいなら誰も何とも思わない!」

「そう…?」


なんか由紀に釣られて、私の中の羞恥が少し薄れてきた。


よーし…頑張…


「ご苦労様。お話中にごめんね」

「し、CEO!?」


どうして給湯室に!?もしかして聞いてた!?


「戸塚さんが無理してないか気になってね。僕が一方的に仕事を頼んでしまったから」

「何をおっしゃいます」


申し訳無さそうに伺うCEOにこちらが恐縮してしまう。


「私の気持ちを汲んで、色々とお引き立て頂きありがとうございます」

「本当!CEOは女性の味方ですね〜」


深々と頭を下げた私に対して由紀は随分とフランクに返す。


「無理してないなら安心したよ。褒められるような事は何一つしてないけどありがとう、嬉しいよ。話していた所割り込んでごめんね。じゃあ僕はこれで」


穏やかな表情を崩さずCEOは給湯室を出て行った。


「やっぱりCEOは素敵ね!こーんなに気にかけてくれるなんて」

「うん…ね、由紀」

「ん?」

「私の気持ち、やっぱりCEOは分かってて動いているのかな?」

「あ!聞き忘れたね」


私が勝手に気づいてると勘違いしてる節もある。考えてみたらCEOはあくまで仕事の話しかしていないのだから。



CEOは負債を抱えた我社をV字回復させた手腕の持ち主。

感も動きも計り知れない人と噂だっている人だ。


だからといって人の恋路のお膳立てをわざわざしてくれるような人なのだろうか…?

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