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第5話 掌で踊らされてる?もしかして利用されてる?

室長の事が好きだと自覚して数日がたったある日――


「戸塚、少し良いか」

「は、はい!」


室長の事ばかり考えていたら、その本人に声をかけられた。


「お呼びでしょうか」

「今週末出張なんだが…」


室長は今週末、CEOと共に出張の予定だ。


「私が不在の間に書類をまとめて貰いたい」

「はい!」


室長から仕事を頼まれる事はある。だけど、室長自身の仕事のサポートは始めてだ。頼られている、信頼されている。そう思うと気持ちが高揚する。


室長が不在の間しっかりやりきって、室長の力になりたい!


「…いい返事だな。頼むぞ」

「はい!頑張ります!」


無表情を崩さず、口角だけ上げた室長の顔を間近で、しっかりと見る事が出来た。



近くなった距離が嬉しい。





✽✽✽


「真紀子、今日も残業?」

「うん、あと少しで切りがいいからそこまでやっておきたいんだ。由紀、先に帰ってて」


室長が出張に出て今日で4日目。明日、室長は戻ってくる。


「室長もこの仕事量を真紀子一人に押し付けるって酷くない?手伝うよ」

「大丈夫!ありがとう由紀」


一人でやり上げて、室長に認めてもらって、少しでも近づきたい。


―――カタカタカタカタ


一人になったフロアに私のパソコンの音だけが響いている。


「あら?戸塚さん、まだ残っていらしたの?」

「友田さん!お疲れ様です!」


社長秘書の友田さんから声をかけられた。


「友田さんも残業ですか?」

「うふふ。私は社長の会食の付き添いよ。先程終わってね、私だけ戻って来たの」


夜になると友田さんの妖艶さに拍車が掛かる。凄まじい色気になんだか変な気分になる。


「戸塚さんは?残業なんて珍しいわね」

「室長に頼まれた書類をまとめているんです」

「あぁ…黒崎くんの…」

「…はい」


ここで違和感を感じた。室長の事を〝くん〟呼びするのは我社ではCEOだけだ。それなのに…。


「…仲良いんですか?」

「え?」

「室長の事を、名前で呼ばれたので…」


少し前の事を思い出した。友田さんが好きな人ってもしかして…



イメージしたら悲しくなった。だってあまりにもお似合いだからだ。無機質な…クールな室長と妖艶な友田さんが。



絵画の様に、見えてしまった。


「ふふ。腐れ縁よ」

「腐れ縁?」

「ええ。ごめんなさいね、電車の時間があるから」

「あ、すみません足止めして…」

「戸塚さんもほどほどにね。お疲れ様」

「お疲れ様でした」


去っていく友田さんの後ろ姿を見つめる。

私には無い、女の色気。しゃなりしゃなりと歩くその姿が絵になる。無機質で、クールな、あの室長の彼女になれる人って、それこそ…友田さんのような人かもしれない。



〝腐れ縁よ〟


…もしかしたら…元恋人同士…だったり…して?


「………!仕事!!仕事するのよ、私!!」


想像するとあまりにもしっくりして、自分を見失いそうになった。今は何も考えず、室長に頼まれた仕事をしなければ!


今の私にはこれしかない。だから仕事を頑張ってもっと室長と接点を持ちたい!


明日…ようやく室長に会えるのだから――




✽✽✽


「室長!出張お疲れ様でした!こちら纏めた資料になります」


翌日午後6時過ぎ、定時を迎え人がまばらになった秘書室に室長が戻って来た。


「見ておく。早く帰りなさい」


意気揚々と頼まれていた資料を渡すと、変わらず無機質な返事。


「…室長は…また残業ですか?」


怒られるかと思いながらもおずおずと聞いてしまった。

CEOについて出張に行って、戻ってまだ仕事をするのだろうか?


「何が聞きたい?」


案の定無機質な、人を跳ね除ける声が返ってきた。


「いえ…お疲れでしょうから本日は帰った方が宜しいかと…」


いつもなら引き下がる、だけど気づいた気持ちを前に引き下がってはいられない。勇気を出して私は自分の意見を言う。


「…見くびられたものだな。まさか憐れみを受けるとは」

「…」


やっぱり恐い。抑揚の無い無機質な声が更に低くなった。


「…わ!わゎゎ私に!お手伝いできる事があったらおっしゃって下さい!」


かなりうわずってしまったが、なんとか声に出した。


「…。…分かった、そうする」


怒られるのを覚悟して身を縮めていたら、想定外の声色と言葉に拍子抜けする。あの、鬼の室長がなんと素直な…


「好意は有難く利用しないとな」

「………は?」

「職場に私情を挟むなと言いたい所だが、利用価値はある」

「…」


勝ち誇った様な室長の声に目が点になる。

一気に顔に熱が集中する。


……それって…


もしかして、私の気持ちバレてる!!!??



「…冗談だ。早く帰りなさい」


赤くなった私の顔を見てか、室長がいつもの無機質な声色に戻る。しかし私はそれどころではない。


「お、お疲れ様でした…」


カクカクとロボットのように体を動かして180度回転し、室長に背を向けて歩き出す。


(私ってそんなに分かりやすい!?書類まとめるのも信頼じゃなくて都合良く使われただけ…とか?)


〝冗談だ〟


室長が冗談言うのも聞いた事が無いし、勝ち誇ったような抑揚のある声も始めてだ…


分からない分からない分からない…


恥ずかしさで頭が真っ白になり、もう何もかもがごっちゃで…自分が保てない。背中にダラダラと冷や汗が流れ出しながら、なんとかその日は帰る事が出来た…

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