第11話 始まった飲み会①
「「「カンパーイ!」」」
何故か塚本部長主導で始まった飲み会。私はビールを一口…
「はー幸せ〜」
この一杯の為に生きている!
「室長、次は熱燗にしますか?」
8人となればもう皆自由気ままだ。私も早く二杯目のビールが飲みたい。
「で、で!奥さんはCEOをどうやって捕まえたんすか?」
「塚本くん、絡まない。喋るの禁止」
「照れちゃってこのこの〜」
結局CEOは目の前に置かれたビールを飲んでいる。いつもワインやシャンパンのCEOしか知らない私は新鮮な気持ちだ。
「戸塚」
「はい!」
最愛のダーリンに呼ばれると私はいつも威勢良く返事をする。
「この集まりの主旨はなんだ」
「えーっと…」
そうだよね、4人が何故か8人に…。
そもそもCEO夫妻に会おうと思ったのは…
「あ」
忘れてた!メインは結婚祝い!
「はい塚本くん」
コース料理のサラダをCEOが取り分けてくれている。
「お母さん俺大根少なめにして!」
「出されたものは感謝して頂きなさい」
何故か塚本部長とCEOとの間でコントが繰り広げられている…。
それからCEOはそれぞれ注ぎ分けてくれた。
後はCEOと奥様の分…
「はい、結仁さん」
「あ、ありがとう…」
CEOが直くんにお皿を渡している空きに奥様がCEOの分を取り分けていた。
………何この空気!
奥様の穏やかな微笑み、内助の功って感じ!そしてCEOの見たことのない照れたような笑顔!!
すっごい、、良い物見れた!これはドラマ!?
「CEO、色ボケてますよ」
鼻血出そうと思っていたら、室長の無機質な声。一気に現実に戻った。
「黒崎くんも戸塚さんが隣にいるんだから無理しなくて色ボケていいよ」
ふーん、とした斜め上からのCEOに無表情の室長。
そして私は室長の色ボケを待ってキラキラした視線を向ける。
「…室長、まだですか?」
色ボケは。待ってるのに。
「あー、もう!甘い甘い!俺らも仲間に入れて下さいよ!な、高田!」
痺れを切らしたように塚本部長が叫ぶ。(甘い雰囲気だった?)
ももちゃん達はというと、、
「直くん!これ美味しいよ!」
「うん」
「直くん!私ジュース飲んでいい?」
「…うん」
「ハッ!今それ以上糖分取るなって言った!?」
「…言ってない」
ここはここで二人の世界だなー。
「懐かしいっすよねー、CEOが最後の営業部のとき!」
塚本部長が話し出す。
私が入社する前CEOは営業部の社員だったそう。その時の話かな?
「送別会で高田がわんわん泣いてさー」
「塚本部長!」
「〝三井先輩がいないと嫌だ〜〟って!泣き上戸!」
「あぁ〜!それをここで蒸し返さないで下さい!」
「なんと!高田さんにそんな過去が!」
「…百子」
過去をベラベラと話す塚本部長に真っ赤になる高田さん。
突っ込むももちゃんとたしなめる直くん。
「だから今日もCEOが参加って知ると行くって聞かなくてさー」
塚本部長はもう酔ってるのか、高田さんはますます縮まってしまった。
…なんか高田さん可哀想。こっちは面白いけど。
「ありがとう、高田くんは優しいね」
CEOが間に入る。
「職場で高田くんみたいな、こんなに素晴らしい後輩に恵まれるとは思って無かったよ。」
「…CEO」
「フロアは変わってしまったけど、たまには顔を出しに来てよ」
穏やかに微笑むCEOに縮まっていた高田さんがおずおずと顔を上げる。CEOはフォローの達人。きっと高田さんも嬉しい事だろう。
「…奥様、すみません。何故かこんな感じになってしまって」
私はというと、ここで奥様に謝罪。4人が何故か8人に変わり、職場の話ばかり。…これは居心地悪いだろうなぁ。
「いえ…楽しんでおりますので」
奥様は気を遣ってか、穏やかに微笑んでくれた。
「私が知らない…職場での主人を聞くことが出来て、嬉しいです」
CEOに良く似た、穏やかな笑顔。
…なんだか、きゅん。
「こんなにガヤガヤすると思って無かったんで…」
「楽しそうな職場ですね」
「はい!CEOには良く相談…と言うより愚痴を聞いて頂いたり…」
私の隣にいるダーリンの、愚痴…。
(あ!やばい室長に勘繰られたら!)
「し、室長はCEOと一番長い時間を過ごしているので!」
(何故か良くわからない続きになってしまった!)
私は慌てて室長の腕を取る。
「し、室長!せっかく奥様がいらっしゃるんです。何かCEOの話とか…」
「ない」
「ある!あります!職場のCEOのお話を是非に!」
慌てる私を尻目に室長はいつもの無機質具合。
「いつも主人からお話は伺っております。お会い出来て光栄でございます。」
奥様が室長に挨拶をする。
「黒崎くん変な事言わないでね」
「CEOこそ私の事をなんと伝えているのですか」
塚本部長達と話していたCEOが間に入る。
「言うなら何かいい所にしてよ」
「いい所などございません」
「…ある!あります!ね、高田さん!」
CEOの奥様の前で堂々とCEOにはいい所が無いと言う恐ろしい室長。私は慌ててCEOを慕っているらしい高田さんに話を振る。
「え、は、はい!CEOには入社してからずっと仕事を教えて下さったり…」
「高田ー。教育係は俺だったんだぞー?」
「塚本くんの指示があまりにアバウトだったからね」
「ワハハ。お母さんは心配性だなー」
「高田さんにそんな過去があったとは!」
「本田さんは黙ってて」
「なんと!私にだけつっけんどんではないですか!?」
またCEOはあちらの4人組(直くんほとんど喋ってないけど!)の話に引っ張られて行った…
飲み会の話は【直くんとももちゃん、初恋の行方。】の【第三章 歓迎会①〜】にも伏線ありです。
こちらも宜しくお願い致します(*^^*)




