第9話 次回デートの為に理由を作りましょう♪
なんとか室長とのデートを続行させようと考えを巡らせている…
あ、そうだ!
「今度4人で飲み会しましょう!」
「…何?」
「私達とCEOと奥様で飲み会して、それとなく何が欲しいか探るんです!」
「却下」
「えっ!?なぜ!?」
「時間外までなぜ奴と顔を合わせねばならない」
「仲良いじゃないですか」
「戸塚の目は節穴か」
「えー?」
本当は仲良しのくせに。
「奴に肩入れするなと言ったろう」
「ですから、室長も一緒に4人で飲み会です!」
そして、ちょっとCEOカップルの様子を知りたい好奇心。
「そんな回りくどいことをして何になる。金券、それで全てが終わる」
それだと本当にデートが終わるから引き伸ばしてるのに!
「室長はCEOの奥様と会った事は?」
「ない」
「でしたら、どんな人か気になりません?」
爽やかなイケメンで性格も良く、地位も名誉も収入もある、まさに非の打ち所のないパーフェクトヒューマン。
それが我社の代表取締役CEOである。
そのCEOの奥様…
どんな人か私も知りたい!
「…そんな目をしても私は首を縦には振らん」
「どんな目です?」
「…」
「ずっと見つめてたんですか?」
ちょっと照れちゃう、なんちゃって!
「なんの為にここに来たのだ」
「デートです」
CEOの結婚祝いはデートの理由。
「私のダーリンはデート一つするのも理由が無いといけないようなので」
つーん、とした態度を取る。
「目的もなく彷徨って何になる」
「デートです。彷徨うって考える方が捻くれてます」
このドライな恋人を調教しなくては。
「ですから、4人で飲み会です。〝彼女〟からのリクエスト、応えてくれますよね?」
きっと優しいCEOは奥様にも優しいだろう。
そして室長も実際にその目で確かめて、もう少し私にデレて欲しい。
クールな室長も大好きだけど、甘々な日々を過ごしたいのも事実…
✽✽✽
「金曜日?」
「はい。4人で」
月曜日、私はCEOの自室に来て声をかける。
(本当はお誘いを室長にお願いしたけど、断れてしまった…グスン)
「…予定確認してみるね、返事は明日でもいいかな?」
「はい!」
「黒崎くんと上手くいってるようで安心したよ、あれから大丈夫だった?」
「あ」
そ、そうだった。CEOに八つ当たりしてそのままだった…。
「はい…おかげ様で」
思い出して恥ずかしくなる。冷静に考えると私ったらなんて事を。
しかもCEOの義妹まで無理やり合コンに引っ張り出す始末。
「…CEOと直くんはそっくりですよね」
ジェントルマン。
「ほんと?最高の褒め言葉だよ。ありがとう」
「そうですか?」
心底嬉しそうに微笑むCEO。
(弟と似てるって言われてそんなに嬉しいものかな?)
「経営企画部にでも行ったの?」
「いえ?…あ」
そうだった。普段なら接点無いのに。やばい…
「あ!で、では仕事に戻ります!」
「?うん。ご苦労様」
――パタン
「ふー」
CEOの自室の扉を閉めて一息。
危ない危ない。
…いや、正直に伝えてCEOにも謝るべきだよね。
義妹を合コンに連れ出し、実弟を寒空の中二時間も外で待たせ…。
色々あった時だからとはいえ、今考えると…申し訳無さでいっぱい。
…だけどまた、この重厚な扉をあけて入って謝る勇気は無い…
(CEO、色々とすみません…)
とりあえず心の中で謝罪し、仕事へと戻った。
✽✽
「何はともあれ良かったよー。色々ごめんね」
「由紀…」
ランチタイム。私は合コンからの流れを由紀に話した。
「室長に伝えてくれたんだよね。ありがとう」
「そりゃ責任感じるよ。私がゴリ押ししたからだし」
「そうだよねー」
「わー。そこ、肯定する?」
「へへへ。…絶対定時ダッシュの由紀が室長の帰りを待ってる時点で由紀の気持ちは伝わってるから」
「真紀子…」
「私と室長はラブラブだから由紀ももう気にしないで」
もう、私と由紀の間にわだかまりはない。私は微笑む。
「…室長はそう思って無いみたいよ」
「え?」
「私、雑用たんまり言い渡された」
「…」
室長は人に中々仕事を頼まない。…それは実務の件の場合で、なんの責任も無い雑用は結構人使いが荒かったりする…
「絶対、仕返しよ!」
「うん、そう思う…」
怒りをあらわにする由紀に否定はしない。
由紀には悪いけど、私は胸がポカポカする。
室長…やっぱりヤキモチを焼いてくれたんだよね…
「ちょっと!友が苦しんでるのに笑う!?」
「あ、ごめん。頑張って」
「はあー!?あ!真紀子も仕返ししてるでしょ!今!」
室長なりの精いっぱいの気持ちを目の当たりにして…
私の気持ちは最高潮!
「愛されてるなー、私」
へへへ、と顔が緩む。
「私は雑用が大変なのに〜」
「まー、頑張って。私を売ったバツだね!」
「う゛。…はーい」
珍しく由紀が引き下がる。
何はともあれ、合コン問題はようやく終結!
CEOが弟直くんと似ていると言われて嬉しい理由は他シリーズ小説にてご覧頂けると嬉しいです♡




