第4話 話し合い?冷戦?(ヒーロー視点です)
「戸塚から何を言われたんです?」
戸塚がしばらく席を外していたかと思ったら、CEOの自室の方から戻って来た。
特に今、CEOと戸塚は接点など無いはず。
そして先程まで明らかに充満させていた怒りのオーラが消えていた。
(これは何か…CEOとの間で話し合いが行われたはずだ)
私はCEOの自室に入り、問いただす。
「それは守秘義務だよ。ここで話したことは基本的に俺は口を割らないから」
「…」
「気になるなら直接戸塚さんに聞いてよ。付き合っているんだし」
そういうCEOはいつもの柔和な表の顔つきでは無く、若干無機質さを伺える。
「…口うるさく言われて彼女の称号を与えたとかじゃないんだろ?黒崎くんは職場の女性ならそんな縺れそうな事はしないだろうしね。」
「…よく覚えてますね」
「記憶力はいい方だと思うよ」
「忘れっぽいのでは無かったのですか」
「自分の事は忘れるね」
「面倒くさい人ですね」
「花をプレゼントしたら?」
「私をおちょくるのもいい加減にして下さい」
過去の話をクドクドクドクド…
「黒崎くんは人に誤解を与えやすいから…お節介だよ」
そう言って微笑むCEOに…何ともやり返したい気持ちが浮上する。
「…過去の話で思い出しましたけど、直くんが入社した時のCEOは…見ものでしたねぇ」
やや嫌味ったらしい言い方をする。
「入社式が終わってウロウロと自室をケータイ片手に徘徊し…」
「直くんが働いてる写真が欲しかったんだよ。両親に見せたくて」
「営業部からスタートと知ると下のフロアに行こうとし…」
「塚本くんの所ならいいかなって思ったんだけど、黒崎くんに怒られてしまったね」
「あまりにも仕事が手につかないご様子に私が折れ、直くんの周りを私が偵察に行った事がありましたねぇ」
「その節はありがとう。心配だったんだよ。直くんお友達出来たかなとか、忘れ物してないかなとか」
…この男は過去の話を蒸し返されたとしてもビクともしない。私と同じ羞恥を与えてやろうと思ったが大誤算だ。
「初めての小学校みたいな言い方ですよ」
「あ、気持ちはそんな感じかも!懐かしいね」
そう言って心底嬉しそうに微笑むCEOに余計に腹が立ってきた。
「かわいいものはかわいいんだよ。隠した所でどうしようも無いだろ。だから黒崎くんも素直に戸塚さんと接したら?周りくどく俺に聞かないでさ」
…いかん、情けないが今回は奴に完敗だ。
私とした事が…。
「黒崎くんがわざわざ訪ねてくるくらいだから、何か後ろめたい気持ちがあるんだろ。後悔したって遅い事もあるから、後悔しない選択をしてね」
だから嫌いなんだ。愛とか恋だとか。
「黒崎くんは最高最善の答えを導き出せる男だろ?」
この老成したお節介おじさんに諭されるなど、この世の終わりだ。
✽✽✽
「室長…何か仰りたい事はありますか…?」
CEOの自室を後にして、私は自席に戻った。すると、明らかに何か言いたげな、ぶすっとした戸塚に声をかけられた。
…これは確実に仕事では無い。
「仕事はどうした」
「…」
…剥れっ面。私にどうしろと言うんだ。
本当に、女は肝心な事を言わない。〝気づいて〜〟と遠回りをする。
…だから女は嫌いなんだ。そのヒステリーをなんとかしろ。
「仕事の要件では無いのなら、席に戻りなさい」
私はパソコンに視線を戻し、いつも通り伝える。
「プライベートを持ち込むんじゃない」
冷静に話し合おうという気も失せた。私は恋愛などというものには向かない。
「…承知致しました。本日昼までが期限の案件になりますので、先方との協議によっては出席の運びになる事ご了承下さい」
寒々しいまでの冷えきった声と共に戸塚が去っていった。
ビジネスシーンのように言ってはいたが、伝えられたのは昨日の合コンの話だ。
期限が本日昼まで、か…。発端は木崎だな。
戸塚は押しに弱い。木崎を論破するのは戸塚では無理という事か。
となれば、参加の線が濃厚だな。
…私にどうしろと言うのだ。
戸塚のスケジュールに私が介入してどうする!?
誘われたのは戸塚。それを行く行かない決めるのも戸塚だ。
〝行くなと一言言えないんですか?〟
…私にそれを言わせて戸塚はどうしたいというのだ。
同僚の木崎にすら丸め込まれるようではこれから先が思いやられる。
私と付き合っていたいなら、私に聞くまでもなく断るべきだ。断りきらずに、更に腹立たしい流れになる前に。
先程のCEOの言い方だと話し合うという時点で私が下手に出るようではないか。
そのような事、私に出来るか!
『彼女の称号〜』の件は『一生に一度の素敵な恋をキミと』の『第一章 第4話 デジャヴ?人の恋愛観、結婚観を聞いてみる』にて(*^^*)
『花をプレゼント〜』の件は同じく同上小説内の『第一章 第28話 プレゼント作戦。のはずが…』にて\(^o^)/
直くん入社時のエピソードは『直くんとももちゃん、初恋の行方。』の『第三章 八つ当たり』にて直属の部下黒崎くんが直くんを見に行った結果が綴られています。
こちらも是非に♡




