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第21話 胸騒ぎ(ヒーロー視点)

「朝から小憎たらしい顔ですね」

「それ確実に八つ当たりが入ってるよね?」


(…ち)


昨日、あれから真っ直ぐと家に帰り頭を冷した。そこで元の自分に戻ったはずだったが…


「何かあったの?」

「何もございません」


翌朝出社しこの直属の上司、色ボケCEOの顔を見たら急に腹が立って来たのだ。


「黒崎くんはいいよね。職場でも会えるし」

「職場にプライベートは持ち込みません」

「黒崎くんが幸せそうで嬉しいよ」

「そんな顔しておりません」

「そう?」


(当たり前だ)


色ボケも大概にしろ、と私は今こそ声を大にして言いたい。

CEOが色ボケてるから私まで浸食されているのだ。


「戸塚さんも前より明るくなったように思うから、きっと黒崎くんの存在が大きいんだろうね」

「…ふてぶてしくなっただけです。私の関与はありません」

「そんなに照れなくても」

「どこの誰が照れていると言うのです」


本当にイライラしてきた。昨日から戸塚も、CEOも…

私が戸塚を思っている事を前提に話を進めている。


私を愛とか恋だとかに引っ張り込むな…!


ここは職場だ!皆仕事しろ!仕事しないなら来るな!



――コンコン


「CEO〜遊ぼ〜」


扉のノック音の後、職場に似つかわしく無い陽気な声が響いた。声の主は分かっている。


(ここの職場にまともな奴はおらんのか?)


――ガチャ


「ちーっす!」

「仕事して!」


(それはこちらの台詞だ)


「塚本部長、お疲れ様です」

「お、秘書室長ー。お疲れ様でーす」


現れたのは我社の営業部長。この二人は元営業部同士で先輩、後輩の中だったらしく立場が変わった今でもフランクに話す。


「直くんが真面目〜に仕事してて構ってくれないんすよー。つーか経営企画部恐くて近寄れなかったすけどねー」

「直くん!どんな感じだった?」

「姿勢良くパソコンと向き合ってました」

「写真ないの?」

「CEO〜ブラコンが過ぎますって〜」


(直くんはまともなようだ)


私のように仕事をしている人間の話を聞いて幾分心にゆとりが生まれる。


さて、私も自席に戻って仕事をしよう長居は無用だ。


「そうそう、さっき戸塚ちゃんに会って腹減ったーって言ったら煎餅(せんべい)くれたんすよ」


気安く呼ぶな…



……おい。


やはり今日の私はおかしい。なんなんだ今の感情は。


「顔広いなー。あ、ここにもお菓子の箱あるから部署の皆に配ってよ」

「いえーい!ラッキー!流石CEO!」

「他の部署のも頼んでいい?」

「…それでは、私はこれで。仕事に戻ります」


フランクに話す二人の間に割って入る。私はここに金を稼ぎに来ているだけだ。馴れ合いなど必要ない。


「あ、じゃあ俺も帰ろう〜。お菓子も貰ったし。他の部署のも預かりますよー、俺サンタクロース」

「ありがとう。助かるよ」


私が部屋を出ようとすると塚本部長もついてきた。


(やれやれ。これでCEOも仕事に集中出来るだろう)


「失礼致します」

「お邪魔しやした〜」


塚本部長と共にCEOの自室を後にし、秘書室までの廊下を歩く。


「そういや室長!戸塚ちゃんと付き合ってるって本当ですか?」

「…なぜそれを」

「いや実は本田ちゃんが聞いてたんすよ、さっき」

「…」


聞いた所によると総務部の本田さん…(あ、直くんと結婚したから三井さんか)が秘書室宛の備品を持って来るのに秘書室に入りづらいと塚本部長を誘い、一緒にこの重役フロアまでやってきたらしい。

そこで荷物を受け取った戸塚に三井さんが噂話の真相を確かめる為に直接本人に聞いた、と。


なんでこう女子というものは色恋沙汰が好きなんだ…。

何でも噂して、話を大きくし、あらぬ妄想まで繰り広げる。


だから私は愛とか恋だとかが嫌いなんだ。

誰も私に構わないで欲しい。干渉されるなんぞこの世の終わりだ。


「肝心の戸塚ちゃんも話濁すんすよー。どっちなんすかー?」


は?…なぜ戸塚が話を濁す?


利用されても良いと言ったのは戸塚で、

あんな要望書を図々しく出してきて、

告白までしてきた戸塚が


なぜ今になってこの関係をうやむやにする!?



「プライベートですので余計な検索は慎んで頂きたい」


私に見合い写真を持って来る相手にだけ伝えればいいだけのはずだ。


そして…そのまま…


「えー?怪しいっすねー」

「想像通りですよ」

「えっ!?」


歩いていた歩を止める。


悔しい。一体なんなんだ、この胸騒ぎは。


「想像通りです。皆に言うか言わないかはご自由に決めて下さい」



……なぜ私がこんな事を言わねばならんのだ。


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