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第14話 愛とか恋だとか(ヒーロー視点です)

黒崎保、職業はCEO付第一秘書兼秘書室室長である。

私は無駄が嫌いだ。だから単刀直入に言う。


この世で一番無駄な物、それは愛とか恋だとかそんな類のものだ。


第一に生産性が全く感じられない。

腹の足しにも為らなければ、金にもならない。


なぜ世の人間はそれなのにこぞって恋愛が好きなんだ?


今こそ私は声を大にして言いたい。


「他人に浸食されるなんぞこの世の終わりだ」


一人で誰にも干渉を受けずに自由に生きる、これこそがこの世の醍醐味であろう。


「ん?黒崎くん何か言った?」

「…いいえ」


声を大にして言いたいと思ってはいたが、本当に声に出していたとは…。私とした事がとんだ失態だ。


それもこれも…


「これ、お土産に買って帰ろう」

「…」


同類と思っていた仕事の鬼、我が直属の上司、我社の最高経営責任者が色ボケに走ったからだ。


「直くんの所と貴ちゃんにも買ったし、大丈夫だよね…」


今はCEOとの出張の最終日。そこでCEOはこぞってお土産を買い占める。それはいい、見慣れた光景だ。このおせっかいは日夜他人にあげるプレゼントを買い配っている。

がめつい重役に比べればそれは全然構わない。


「後は…」


CEOが呟く。私はこの後を瞬時に察知する…秘書の鏡である。


(出た、色ボケ)


CEOを取り巻く空気が途端に柔らかくなる。色ボケが発動した証拠だ。


これまでどんなに言い寄られても、気付いていないように装いすっとぼけ、更にお見合いをふんわりと断り続けたこの男が…


…この度、まさかの婚約を果たした。


(あり得ない、信じられない。我社の…いや、この世の終わりレベルだ!)


…しまった、我を忘れかけた。


しかし、ここまでは想定のしようもまだあった。

あの仕事の鬼は政略結婚や何やらは仕事の為にしたかもしれない。よっぽど利益が出るなど合理的に判断したら、だ。

それなら私も納得のしようがある。


しかし、しかしだ。


「この前、好きな味を聞いたんだよね」

「…締まりのない顔ですね」

「緩んでても全然気にならないよ」

「…」


これだ。今ここ花畑〜状態。私はこの雰囲気に耐えきれない。


あの仕事になるとシビアで独自の経営ビジョンを鋭い目つきで動かしていた男は何処に行った?


惚れた女に(うつつ)を抜かす、今の奴はまさしくこれだ。


まさか、あの経営戦略を打ち出してやり遂げた男と同一人物とはとても思えない。


「黒崎くんはもういいの?」

「ええ」

「戸塚さんに買った?」

「…は?なぜ戸塚がピンポイントに」

「なんか仕事頼んだって言ってたじゃん」


(たかがそれくらいで、なぜ個人的に買わねばならない)


…言いたい事は我慢しよう。これ以上会話が続くと面倒だ。

このプレゼントおじさんはこういう男だ。


「手伝ってもらったお礼だよ。…これコンプライアンスに引っかかる?」

「特別扱いかどうかが争点でしょう…。この場合、バレなければと言ったところでしょうね」

「じゃあお礼してもいいよね。俺が買おうか」

「何故そこにCEOが…」

「忙しい黒崎くんを助けてくれたお礼だよ」

「助かったかどうかは仕上がりを見なければ分かりません。部署全体のは買ったのでもう充分でしょう」


戸塚か…。可もなく不可もない、それが戸塚への評価だ。


「…帰ったら仕事頑張ろう」

「そうですか」


婚約者殿から何か言われたのだろう。会社の利益の為に仕事の鬼だった男はどこに行った…。


私はこんな風にはなりたくない。益々恋愛に嫌悪感が湧いた。



✽✽✽


出張先から戻って数日、CEOが会食に戸塚を連れていきたいと言い出した。

戸塚にも話したところ、了承を得た。そして今しがたCEOの自室から戸塚が戻り、CEOの自室に私とCEOの二人きりとなった所で私は気になっていた事を伺う。


「何を企んでいるんですか?」

「え?なんの事?」


…最近、CEOはやたらと戸塚を話題に出す。


「戸塚を抜擢した事についてです」

「戸塚さんのポテンシャルが高いから、どうかな〜と思ってね」

「他にも社員はいます、CEOは男性と組む方がやりやすいのでは?」

「黒崎くんの下につく人がいないから」


怪しい。絶対何か企んでいる。

表情に出さない辺り、良からぬことに違いない。




会食以降、戸塚は私にやたらと懐いて来るようになった。

職場の人間は職場だけにしてくれ。俺はプライベートを浸食されるのが世の中で一番嫌いなんだ。


(CEOとグルになって何か企んでいるのか…)


いや、それは無いな。戸塚がそんな事を出来る筈もない。

そうだったとしてもそれに気づかないほど私は落ちぶれてはいない。


取り敢えず、牽制はしておくか…



「…CEOにあまり肩入れするな」


戸塚が何を企み私に付きまとうようになったのか。CEOの命令かはしっかりと判断させて貰おう。


「ライトな付き合い方というのは!それは…室長に対しても同じでしょうか…?」


会話をしながら探った所、取り敢えず企みはない事は分かった。


(やはり戸塚にそんな能力は無かったな)


しかし…なぜここで私が登場する?

戸塚は何が言いたいんだ。何を望んでいるんだ…


「…室長の事をもう少し知りたいです。」


…。


あー、なるほど。分かった。そういうことか。


ここ最近の戸塚の不可解な行動をようやく私は理解した。

鬼に鬼と言われるCEO(笑)

「プレゼントおじさん〜」の件は『一生に一度の素敵な恋をキミと』の『第二章 第8話 一分一秒でも早く会って抱きしめたい』にも出てきています(*^^*)


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