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第13話 まだ、告白は出来ません。しかし私の望みは伝えたい!

「室長!折角ですし、食事して帰りませんか!?」


駅までの道中を共に出来るようになった。このチャンスを逃してはならない。


「何を企んでいる」

「えっ!?何も企んでいません!」


昨日のように室長の少し後ろをついていく。そして室長も昨日のように少し歩幅を狭めてくれている。


「その…あ!またCEOの会食にお付き合いした際の作法を知りたいんです!」


このままだと本当に駅までの道中になってしまうことを恐れた私はなんとか理由をつける。


「教えて下さい、室長!」

「…分かった」


熱意が伝わったのか半ばため息混じりの小さな声でぼそっと室長が応える。


「ついてこい」

「はい!」


室長が進路を変える。食事の誘いは成功した模様。

私の気持ちは最高潮に高まっている。



✽✽✽


「わわわわ〜」


そして室長についていくと高そうな料亭に辿り着いた。

中も個室で萎縮してしまう様な高級感が漂っている。


「す、凄い所ですね」

「ここはCEOが会食でよく使う所だからな」

「な、なるほど〜」


完全に緊張してしまった私を余所に室長は座布団の上に座る。私も慌てて腰を下ろす。


「場慣れしとけ。CEOの格が下がる」

「はい!」


料理を注文し、暫し待つ。


「いつどこに行くかも分からん、ここは掘りごたつだが正座も慣れておいた方がいい」

「はい!」


室長は本当に私に手解きをして下さっている。


(ただ…室長ともう少し一緒に居たかっただけってバレたら…?)


恐っ!


私はしっかりと背筋を伸ばして室長から話を伺う。




「あの〜」

「なんだ」


料理も運ばれてきて、お互い食べ始めた。手解きは小休止、私は打ち解けたくて恐る恐る声をかける。


「えっと…」


声をかけたのはいいがその先を考えていなかった。会話に詰まり、途方に暮れる。


「…戸塚」

「!はい」


何を話そうか考えていると、室長から声をかけてくれた。


「…CEOにあまり肩入れするな」

「え…?」

「あの人は善人面しているだけで、裏では物凄く合理的でシビアな人間だ」


無機質な声。いつもの室長。

私の目を見ず、目の前の食事を美しく食べながら、サラッと聞き流してしまうほど自然に恐ろしい事を言った。


「なぜそれを私に?」

「信用しきっているようだったから忠告しておく」


室長の意図が分からない…。

どうして急にこんな話をしたの?室長は私に何を伝えたいの?


分からない


「…それを私に教えて頂いても、逆にこれからどうCEOと接したら良いか、分からなくなります」

「深入りするなと言っているだけだ」

「深入りするほど…特に接点もございません」

「それならいい」


どうして室長がそう思い、それを口にしたのかを聞きたかったのに…話を切られてしまった。


「CEOは秘書課の中でも優しいと人気で…そんなシビアな感じを見たこともなく…」


なぜか言い訳をするようにボソボソと口にしてしまった。


確かに私はCEOの事をあまり知らない。きっと一番近くにいて知っているのは室長だ。第一秘書なのだから。


「20代で会社のトップに立ち、マイナスを立て直した手腕は並大抵ではない。それは…」


室長がようやく私の目を見る。…その目は鋭かった。

息を詰めた私を見て、それ以上室長は話を続けない。


「…分かったなら、仕事場だけのライトな付き合い方をするんだな」


それは室長のポリシーなのでは…?これは助言なの?


「私は!」


つい、勢い良く声を出してしまった。だけど止められない。


「CEOの事を詳しくは知りませんので、今の室長の言葉は助言としてありがたく胸にしまっておこうと思います!」

「…」

「しかしながらライトな付き合い方というのは!それは…室長に対しても同じでしょうか…?」


なぜか話しながら訳もなく悲しくなって、語尾が恐る恐るといった感じになってしまった。


CEOの事を思って言っているんじゃない。人を寄せ付けない室長が安易に私を牽制しているように感じてしまったからだ。


「そうだ」

「…」

「…戸塚は私に何を望んでいるんだ」

「え…」


鋭い室長の視線と声が私の胸に刺さる。


「ここ最近随分と私に付きまとっているように思えたものだからな」


視線を落とし私の目を見ずにぼそっと呟かれた。


その声は…うんざりしているような、迷惑しているような…


そんな声だ。


(どうしよう…)


なんと返事をするべきか。

付きまとっていない、何も望んでいない。室長の勘違いだ。



そう答えるのは簡単。…それだと自分を守れるから。



だけど、それをしようという気にはならなかった。それは室長が私の目を見ていないから。


少し仲良くなれたと思った。近づけたと思った。


そう思ったのに…。


目の前に広がる室長の人を寄せ付けない雰囲気がいつもより色濃くなっているように感じた。


「…室長の事をもう少し知りたいです。」


独白のように私も下を向いて呟いた。


〝何を望んでいるんだ〟

好きだとか彼氏になって欲しいとか、そこまではまだ声を大にして言えない。


私の望み、それだけをシンプルに考えたら自然にそう答えていた。


〝冗談だ〟そうぶっきらぼうに言いながら笑ってくれた室長とこのまま元に戻りたくない。


出来るならもう少し。


それが、私の望み


どうか伝わって欲しい…

CEOの本性(笑)は、シリーズ小説

〝一生に一度の素敵な恋をキミと〟にて(*^^*)

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