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花繚(かりょう)の動乱  作者: 橋本ちかげ
第1章 幼蕾淡くほころぶ
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かりょーのどうなん?①お市と信長

 さて、本編の主人公『市』のことですが、真名(まな)は『秀子』と言うそうです。ウィキなどをご覧の方はご存じかと思いますが、これは『好古類纂』と言う明治時代に作られた織田家の家譜に収録されているものです。


 この時点で取材した織田家の家伝が『秀子』があったのなら、生まれた頃、親がつけた彼女の本当の名は、『秀子』と言うのが正しいようです。


 つまり『お市』と言う名前は、幼い頃からの愛称なのです。美濃から来た信長の正室が『濃姫』と称されるように、とかく当時の女性は、本当の名前以外で呼ばれました。


 本当の名前である真名を隠すのは、京都以来の公家の風習です。真名を知られると、呪いをかけられるので仮の名前をつけて隠す、と言うのが、当時のセレブでは当たり前の習慣であったと言うことですね。


 お市と信長のお父さん、織田信秀は、京風のセレブ文化をよく知っていました。

 なので子供にはエリートコースを歩んでほしく、そのように名付けたのでしょう。

 今ではあまり意識されませんが『子』と名の付く女性は、明治時代くらいまでは、位の高い女性に限られました。


(つまり『トイレの花子さん』などは、信長の時代からするとかなり家格が高い女性につけられる名前なのです)


『市』と言う愛称はもっと、信長のプライベートな感覚から出たものかも知れません。


 信長と市は十三歳差の兄妹ですが、その関係はやっぱり、ちょっと他にみないくらい特殊です。ちなみに信長にはぴったり十二人ずつ男女の兄妹がいるのですが、みなそれほど近しい記録は残っていません。


 戦死したり、よそへ嫁いでそれ以上のことは分からなかったり、いわゆる信長の野望のために犠牲になったのだろうな、と言う程度のことしか分からないのです。


 市と言う愛称が残り、かつ信長との個人的なつながりを示すエピソードが残されている彼女は、本当に『特別な妹』であったと考えていいと思います。


 例えばこのあと、市は浅井長政のもとへ嫁ぎますが、出戻った彼女を信長は裏方を任せていた弟の信包(のぶかね)に後見を任せたまま、二度と他家へ出すことはありませんでした。


 ちなみにお市の異母妹でお犬の方と言う姫がいましたが、彼女は二度の政略結婚をさせられ若くして病没しています。


 対してこの市は、浅井家滅亡から九年、本能寺の変に至るまで信長の手元で暮らしていたと思われます。


 信長はのちに名を成す亡き長政との三人の娘、茶々、お初、お江の養育を、市自らの手でさせたかったからでは、と考えると、様々な想像が思い浮かびます。


 苛烈な人、と言う印象の強い信長ですが、市とは本当に今日、わたしたちが思い浮かべるお兄さんと年の離れた妹の関係だったのではないでしょうか。







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