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第二話

 ナコ王国直轄領ヴァリアレーヌ地方サミフ、貴族院立魔士上級学校



「出席を取る。諸君は自分の席に戻りたまえ」


 重々しい教師の一言で、生徒達は自分の席へ、のろのろと戻っていった。


 教室は大きく、生徒が座る場所が段々と高くなっており、半円状になっている。教師を見下ろし、囲むような配置になっている。


 ファルシーナも階段を登り、自分の席へ戻った。


 この学校の教師であることを示す重厚なローブに身を包んだ男は、教卓の上に用意されていた出席簿にチェックを入れてゆく。


 そこに並んでいる名前は、ファルシーナと同じく、全てを読み上げるには時間がかかるくらいの長い名前ばかりだった。


 長い名前を持つのは、領地や爵位、その仕える国の名前、先祖の名前、自分の名前などなどがてんこ盛りなのだが、それが許されているのは、魔法を使える貴族のみである。


 ここにいる生徒は全て貴族で魔士だ。なので点呼の時間が長い。


 しばらく教師がそうしている間、貴族のお坊ちゃんお嬢ちゃんである生徒達は雑談を続けている。


 注意しても構わないのだが、教師より位の高い貴族も混じっている。

 

 そのため、後々の問題を避けるために少々のことでは何も言われない。


 反面、ファルシーナは仲のいい友達の席が遠いため、自分の席で静かにしている。

 黙っているだけで優等生だ。


 正直やることがないのが本音なのだが。


 前に目を向けると、恋人同士なのだろうか、これでもかというくらい引っ付いている男女がいて、ファルシーナはフンと鼻息荒く顔をそらす。


 そらした視線の先にいたのは、性格が悪いと有名な男子達がいた。親が貴族の中でもなかなかの地位にいるとかで、怖いものなしの連中だ。


 今までも悪さをしていて、そのことが発覚する前に揉み消しているという噂が立っている。教師たちも腫れ物を触るような接し方をするしかない。


「おいおい。また来てねぇよ。あの平民まがいの泣き虫カジカ」


「ほんとうだ。なんでこねぇんだろうな、遊んでやろうってのになぁ」


「試験の日には来るさ。それまで遊んでやる内容でも考えてやっておこうぜ」


 下卑た笑いが一角で巻き起こっている。


 気分が悪くなったファルシーナはまたもフンとやった後、顔を正面に戻した。


 しかし、そこには依然、バカップルが鎮座しており、ファルシーナの気分は一層、沈んでゆく。


 下を向いた彼女はポツリともらした。


「なにやってるのよ。カジカ……」


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