最強魔術師とヘタレ主人公の愉快な日常
学園入学後にトラブルが乱雑かする話に
ルミア様と颯真様が巻き込まれるお話です。
それが過去編につながります
第二章 第一話 ルミアの大胆告白
「なぁ颯真さんよ。あの女の子とはどういう仲なんだ」
「そうそう砂煙でよく見えなかったんだけど、君を庇おうとしてくれて
いたんだよね」
「もしかして颯真君の彼女ってもしかしてあの子なのかしら」
「そうだよな。しかし羨ましいよな~颯真ところで、その子とは一体
どういう関係まさかもう結婚してるんじゃねぇんだろうな」
とそこで先生がみんなを落ち着かせ。どうにかこうにか場が収まるの
だった。僕はふぅーと息を吸い吐く。を繰り返しながら。どうにか精神
を落ち着かせる。な~にこういったイベントはモテ期だったあの頃と
変わりないじゃないかと思い込むながら、僕は周囲を見渡して、すぅー
と大きく息を吸うとその息を吐くと同時に。先生を手で制して、本当の
事実をカミングアウトしました。
「彼女との出会いはあの戦いの最中でした。そして僕と彼女はキスをして、
お互いに契約を結ぶ間柄となりました」
「それってもしかして」
「おい!一体どういうことなんだよ」
「まさかそんなこと私でもしないのに」
「まさか颯真あんた」
僕は訳も分からず周囲の声に耳を済ませながら、僕はその話を頭の中で
整理した。その結果こう僕は仮定することにした。彼女とのキスはつまり
は婚約。愛の告白を意味するものだと彼らは勘違いしているということに
彼らと同じように僕にも動揺の汗が顔中に流れる。その冷や汗を拭き取り
ながら俺は。どうすればこの生徒達を黙らせられるか思考を張り巡らせる。
だがどう答えていいのか迷いそれは無限ループに落ちた。その時だった。
ガタン!と大きな音がたって、その音の正体がルミアであることを知った。
そう彼女の体の状態はもう完全回復を遂げているのだった。
「ルミア!どうしてここに。というか体は大丈夫なのかよ」
「大丈夫だ。案ずるでない私はもう平気だ。それよりもこの状況は一体
なんなんだ」
「それがお前と俺が契約したことを俺がバラしてしまってそれで俺は
どうしていいか分からなくて、それで頭が混乱の渦になってって、
聞いてる?ルミアさん。へっなにこの状況」
するとそこには誰もが呆然と彼女を見ながら黙りこむ静けさが漂っていた。
僕の時と随分態度が違うような。それぐらい彼女の地位は高かったのか、
でも確かに彼女はDクラスのレベルいやそれ以上に強い。だからなのだろう
か彼女の魔法にかかれば生徒全員を一網打尽にするほどの能力を備えている。
そしてマナの補給も万全ときた。彼女を敵に回すのは大変危険極まりない。
ほぼ自殺行為に等しいと踏んだ。みんなの覚悟はもう固まっていた。そして
彼女の口から思わぬ一言が先生を含む生徒全員に浴びせられるのだった
「私はみんなに問いたい!恋愛は全てを含む人間に分け与えられるものでは
ないかと。つまりは平等であるとそう思わないか」
「異議なし。そうだクズでもオタクでも可愛い子なら誰とでもデートしたい
そう思っております」
「ならばだ。私と彼とて同じことであろう。それにもう私は心に決めていることが
ある。それはこのクズで鈍感で役立たずのヘタレ主人公である彼に婚約を申し込む
ことだ。それを君はわかってくれるかい」
「なにそのあっさりと僕を罵倒しておいて、その大胆なプロポーズはけど、嬉しいよ。
君がそんなに言うなら結婚でもなんでも。っておい!俺まさか今爆弾を引いたか、
って誰か返事してくれよ。おい頼む今のは冗談なんだよ。って聞いてる。聞いてる。
皆。ルミアもなんか返事を」
「そうかなら光栄だ。同士よ。我と契約すればまずはお互いのことを知るために
デートでもしよう。それからだ。ということで先生にバトンを渡そう」
「えっ?何これ僕の返答無視。何この孤立感。僕の意思すら関係なかったのかな。
でもまぁいい。これ以上周りの生徒から絡まれることはないだろうし。多分。
語弊を生んでしまったのかもしれないけれど、今日はまぁそれで良しとしよう」
それに彼女はただならぬほどのことを堂々とやってくれた。
僕はそれに付き合うしかなく。あっさりとそのプロポーズを受け取って
しまった。僕は馬鹿だ。いっそ神様でも呪いたいくらいだよ~糞くらえ。
でもそんな僕のフォローを彼女はなんなくやってのけた。それが彼女の
本心ではないことは確かなのだが、その彼女の行動は今のところ。謎が
多いばかりである。
第二章 第二話 オリエンテーションと見知らぬ少女との遭遇
その後教室で多くの人に励ましの言葉をもらった
僕は初めての教室で過ごすことになるので、
僕はその後担任の先生による個別オリエンテーションが行われた。
それはこの学園でのカリキュラムの話だとか、学園全体で最上級生の特別クラスが
Sクラスで、その下がAクラス。平均点80%以上の成績を収めたものが入る
ことを許される。そしてBクラス。は平均点50%に届くか届かないかで判断される
そうだ。そしてCクラスは平均点30%か20%以上に届くことが条件。そして
Dクラスは平均点以下つまりは落第した生徒達。行き場を失った生徒がいるクラス
それがDクラスだった。その言葉を聞いた僕は勿論先生に反論した。Dクラス以上に
なるにはどうすればいいか。すると先生は年末にあるクラス対抗振り分け試験に
上位者になるものが、権利を獲得できるそう話したのだった。
ここでの授業はこういうものだった。まず基礎体力を訓練する授業や魔術の運動能力
を訓練する授業。あと様々な体術または剣術など魔術に関してもそうだが、その予備
知識を養う授業も行っているらしい。勿論それだけではない。普通の一般知識を
養うための授業もあるらしく、それら全てが平均点またはそれ以上の成績を収めない
とクラスから上位者への繰り上げ難しいらしい。
そしてこの学園での規則では。まず許可がないデュエルは勿論のこと。これはまた
社会では当たり前のことだが、生徒を暴行
または淫行行為をしたものに対しては厳罰に処されることになるらしい。
そしてこうして僕に優しく指導してくれた担任の先生だが、
名前は近藤睦月先生というらしい。しかも副担任の先生は不在でおらず。
この学園での女性教師は先生少ないという。そこにはほとんどが男性職員
という格差が生まれていた。無論それは今更どうでも良いことだが、
女性が社会の中でいきるために。女性職員を増やすべきではないかと思う。
何故ならば男性教師はみんな変態ばかりであろうからだ。
だが睦月先生はというと負けん気が強くセクハラを受けたとて倍返しに
するほどの運動能力を誇る。優しい反面。的確な指導。あとコミュ力もあり、
運動能力もかなり高い。だから何よりも女子生徒からは圧倒的な支持を
誇っているのだろう。
まぁそんな睦月先生との個別オリエンテーションも無事一次元目で終わり、
後を追うように二次元目の基礎体力。など様々な体のことを検査する。
テストが行われた。僕一人であるため。時間はかからないだろうなと思ったが、
余りにも厳正な審査が行われて、ブザーが鳴るたびに再検査。再検査の連発で
あったため。二次元目の一時間を費やしてしまうことになり、そのまま。
息をつく暇もなく。3次元目には体力テストが行われ。僕は体術テストでは
平均点という結果で、剣術テストでは平均点より少し低めの評価をされ。
そして最後に魔術に関してのテストは0点となった。それもそうだろう
そのためにルミアとの契約を結んだのだから。だが審査をする先生の目
は曇っていた。けれど魔術での実力がないことを理解していた僕は歯痒くも
もう一度再テストをお願いしますと、言うことすら出来なかった。
そしてその3次元目もついには終了する運びとなった。
そして最後は宿舎の案内や校舎の案内。学園内の様々な場所についての
説明もあり、初日全てオリエンテーションの全ての過程が終了した。
しかも4次元でその後僕は帰宅許可をもらい案内してもらった。
宿舎へと戻ろうとしたその時だった。見知らぬ声のするほうへと顔を向ける
とそこには見覚えのない微笑みを浮かべる少女の姿があるのだった。
第三章 謎の少女とルミアの過去
第一話 明かされし過去と呪い
その瞳はまるで、自分の全てを見透かされているような気がして、僕はただ
呆然としているだけで、ただ虚ろで怪しげに笑いを浮かべるその人形みたいな
少女に。目と心を奪われてしまっていた。
「おやどうしたのかえ。その顔は」
「君は一体。どうしてここに。この学園の生徒じゃないよな。」
「気を感じるのかえ。そう私はこの学園の生徒でも人間でもない。
いわば魔女の霊体そのもの。」
「じゃあ元々は生きていたってことなのに何故」
何故この学園へ。それに魔女の霊体ってことは。魔獣アーロンとも何か
関係があるのか、それとも彼女とも。しかしこの学園でも生徒でもないと
いうことは。元々この世界とは違う次元の違う世界から来たということ。
なのだろうか、よく分からないが、気になるので聞いてみることにした。
「君は何故この学園に。それとなぜ僕には君が見えるの」
「それはお前がルミアの契約者だからだ」
「じゃあルミアと深い因縁か何かあるってこと・・・」
「そうそれとここに来た理由も通じている」
これはつまりルミアとこの霊体とは何か特別な因縁があることを物語っている。
それにその深い真相には今僕の契約者である彼女の心の因果の悩みを解き明かす
ことでもあるのかもしれない。だがその奥底には深い闇があるのかもしれない。
けれど、僕はただその答えを知りたかった。彼女が僕に唯一言えない。秘密のいや
禁忌の扉を開いてみたかったのだ
「そう。私はルミア。いやお前の契約者ルミアの母親。ロザリエに火炙りの刑に
処され死んだ。に殺されたのだ。そして我はあの娘の監視を今も続けている」
「それはどうして、だってルミアは何も」
「ルミアは最後にその母親から強大な力を受け継いだ。そして二人目の最強の
魔術師が生まれた。それがルミア・スカーレット・バーンズ。お前の契約者だ
そしてあいつは不老不死だ。だから若く生きながらえている」
「ルミアは歳を・・・・」
「そこまでだ。ローレンス。お前が監視することは我とて見過ごしていたわけでは
ない。ただお前の存在が我とて不可思議で判断しようがないのだ。それに何を企ん
でおるローレンス。また死霊復活祭でもあげるつもりか、この死霊使い。ネクロ
マンサーが!」
「何を根拠にそんなことを言う。小娘。お前の母は何千。いや何十万の人々を火炙り
にしたんだぞ。その断罪は高くつくぞ!だから私は死ぬ間際お前の母親に禁術の呪い
をかけた。そしてお前の母は無様に生き血を晒し死んだ。
大勢の死人の血潮を浴びながらな」
「その恨み今でも忘れてはいまい。だがお前は残念ながら私の手では殺せない。
だがお前が何か仕掛ければ。こちらも動く。」
「いいのかい態勢を保つのに精一杯だが、これ以上私に近づけばお前の命は」
「ぐはっぼへっぐわぁああああ。くそこれは悪魔の呪いか。呪いなのか」
「ルミア。しっかりしろ。ルミア。おい!」
まただ。だけどどうしてローレンスとかいう死霊は手を出せないはず。いやそうか
これは呪いなんだ。だとしたら一旦解呪する必要がある。
この学園の専門医とったらあの医務室の先生だが、しかしその医務室まで行くのには
どうすれば。そうだ確か瞬間転移装置。ワープゲートがこのほど近い庭にそこなら。
僕は思考を巡らせながら。その庭まで瀕死の重傷を負った。か弱い美少女を抱き抱えながら。
庭園へとたどり着くのだった。
するとそこには青白く光る。瞬間転移装置が待ち構えていた。起動もされていて、
マナの活動性が活発になっている。今ならこの装置は使える。ただこの装置はマナ
の限界値を迎えると使えない仕組みになっている。
だとしても今は満タンにマナも消費されていない。状態にあり、現在稼働中だ。
おそらくこの庭園そのもののマナダイトには特殊な何かが施されているからか、
それともマナを浪費しないのはここに人が大勢集まることも少ないからだろうと、
僕は勝手に推測した。
まぁそんなことは今となっては関係ない。この装置が使えるなら今がチャンスだ。そう
信じて僕は転移装置を起動させる。すると眩いほどの青白き光が二人を包み込み。その
まま。眼前が見えなくなり白い光に包まれ。あっという間に医務室の前へと誘導さえた。
そこには偶然なのだろうか。たまたま医務室の先生とばったりと遭遇した。
「先生ルミアをこの子の手当をお願いします。瀕死の重体なんです
助けてあげてください!」
「これはまさか呪い。いけないこのままだと。この子死んじゃうわ。
早く輸血と解呪魔法とあと精神回復魔法の全てを注ぎ込まないと、
今すぐ緊急手当をとるわ。誰かこの子を緊急治療室へ」
第ニ話 故郷の夢。ルミアとの約束
あれから1。2時間は経過しただろうか、その後も治療は再開して、
なんとか意識を取り戻し。呪いの解呪や精神も正常値に安定したものの。
呪いの副作用なのか、未だ昏睡状態を維持したままの状態が続いた。
早く目覚めて欲しい。僕はその一心だった。けれどあの時の俺は無力で
誰かを頼ることしかできなかった。魔法が使えない僕にとってそれは
デメリットでしかない。
その時僕は初めて僕じゃ彼女を庇うことも助けてあげることすら不可能
なんだと思い知った。そして顔には大粒の涙が流れていた。そして僕は
呆然と座り込み。ベッドから起きようとはしないルミアの横で僕は祈るように。
僕はまた眠りについた。か細い彼女の手を取りながら・・・・
「起きろ。待ってルミアここは一体」
「ここが私の故郷だ。ここが異界だ。現実世界の狭間にあるもう一つの世界。私は
この国マールシアという国で育った。そして私の家はこのマールシアでもっとも
田舎のアイヌという村にある薪小屋で捨てられていたところを。拾われ養子として
アイヌの村から遠く離れた。イグニアという町で魔法使いの養子として厳しく
育てられた」
「ここが君の・・・・生まれ故郷・・・」
「そうここが私の母との出会いの始まりだ。さぁ目覚めよ。もう朝だぞ」
あれ僕はいつの間に眠りについてしまったんだ。しかも途中で夢から覚めてしまうとは
もっと見ていたかったのにな。それと今ルミアに起こされた気がしたんだが・・・
気のせいかまた眠ってしまおう。とまた虚ろに目を閉じようとしたその時。彼女は
目を覚まし。いつもどおりの元気な姿で僕にこう言った。
「おい起きろ。このガキ」
「へっはっ?あれここは」
「何寝ぼけている。それとどこを触っておる」
「ルミア。ルミアなのか?良かった無事だ。無事なんだな」
僕はルミアのいつもどおりの顔を見れて嬉しさのあまり、無防備であった
彼女に抱きついた。それを彼女は嫌がる素振りを見せず。唖然とした
表情でむしろ照れくさそうに僕の方を見ていた。
「もういいか。いい加減。苦しいのだが」
「あぁごめん。つい」
「それと昨日のこと覚えているか、さっきも夢でうなされているようだったが」
「あぁそのこと。うん君の故郷の夢を見てたんだ。勿論昨日のこともはっきり
覚えている」
「じゃあ無駄な詮索はしないが、我の過去について誰にも喋るなよ。
じゃなきゃお前との契約は破棄する」
「私のトラウマの全てがそこにある。そして私は強くなるために必死に
足掻いた。そして最強の魔術師になっていつか復讐する。とまで言っていた。
けれどそれは私の過去の一旦に過ぎない。いいかすぐに忘れろとは言わない。
だがこのことには今後一切触れないでくれ。それからありがとな。助けてくれて」
「いや僕は別に君を治したわけでもないし」
「でもお前は私を担ぎ上げ。ここまで連れてきてくれた。感謝する。
そして休暇がもらえたら久しぶりに故郷に戻るとするかな。その時はお前も
来い。素晴らしい景色が見えるだろうしな」
こうして僕はルミアともう一度友情を分かち合うのだった。
けれどルミアには一体何故。そこまでして過去にこだわるのだろうか。
きっとそこには触れられたくない。でもそうだよな。
そういうことって人間誰しも抱くものだよな。でもなんだろうこの気持ち。
一層彼女のことを知りたくなったし。それに守りたくなった。
彼女が一人で過去のトラウマを背負ってるなら。僕もその少しを分けてもらいたい。
そして支えになりたい。もう足で纏いにはならない。そう決意したから・・・・
第四章 夏のバカンスにルミアの故郷へ
第一話 成長できない自分
今の僕に出来ることそれはただ鍛錬を積み重ねることだけ、あとは勉学に励むことだ。
だが今の自我流の剣術では到底強敵と戦おうにも勝算があるわけでもない。
だから研鑽に研鑽を重ねて、自我を超越する力を得なければならない。だがその行く手
を阻むように僕は堕落していた。
落ちこぼれである僕は。周りに振り回されることを否定もしつづけようとはしない。
ただ相手に弱みをつけ込まれるだけは怖い。だから。努力しようとした。
けれど届かないまだ。その剣の矛先すら相手にかすりもせず。ただ躱されつづけ。
ひたすら防御するか躱すか。間合いのとるのが下手くそで、隙を突かれ
続け。精神的にも追い詰められ。僕の勝機すら敗北の灯火へと変わり、
最後には虚を突かれるように僕は無残にも床に体を叩きつけ。
そのまま天井を見上げる。
そこに映っていたものは勝利の雄叫びの声ではなく。
僕を上から見下す。嫌悪の目だった。
僕はその威圧感に心を蝕まれようとしていた。
次第にそれは僕の精神を不安定なものへと変えていき。僕は
敗北に敗北を重ねていき。努力しようとすら思えなくなって、先すら見えなくなって、
頭脳の成績すら上がらなくなり、勉学に励みさせせず。いつの日か授業すらサボる日々
が続いた。けれどいつの日か僕の担任が話していた。
努力すらも無駄にするなと。そうだどれだけ心を挫かれることがあっても
ひたすら努力する器量すら持ち合わせていないのならそいつは馬鹿だ。
それがこの僕だ。分かってた技量の差すらあるって。僕には魔術は使えない。
才能なんてもとからなかった。なのに剣術を磨きさえすればどうにかなると思って
足掻こうとした。
けれど僕には僕には磨くために必要な知識すらなければ。何かを掴むこと
すら出来ないまま。時間が過ぎていくだけ。もう帰りたいもとの場所にあの懐かしき。
故郷へけれど今更帰れない。僕はどうすれば・・・どうしたら・・・・
「どうやらもうスランプのようだな」
「そうだよ。これじゃただの意気地なしさ。笑いたければ笑えばいいさ。
どうせ僕は平々凡々に生きてきた無能な男さ。今更強くなろうなんて
烏滸がましいにも程があるって自覚してる」
「ならどうする今更退学届けを学園に出すか。自主退学なら今なら間に合うぞ
だがもう二度とここには戻れないがな」
そうだ今更この学園をやめたからって、もうここには僕の居場所はないんだ。
でもどうしたら。この落ちこぼれの自分を変えられる。成長させられるそんな
まるで魔法のようなことが、僕なんかにできるわけない。
努力だって、結局は無駄じゃないか。誰も評価すらしてくれないし。
ただ時間を費やすだけだったら僕は・・・もう
「努力は無駄か。例え才能なんてなくても。努力しようと足掻くことは。カッコ悪い
ことか、私はそうは思わないなぜなら私は昔。お前みたいなクズのどん底にいた。
落ちこぼれの魔法少女だったからさ」
「そんなルミアは才能があって」
「才能なんてなかった。養子娘だった私はずっと母親に憧れを抱いていた。けれど、
私は母親に並ぶ力なんてもの持ち合わせていなかったし。最初は虐められるのは
日常茶飯事だった。けれどそれを母はいつも庇ってくれたというか。慰めてくれた」
「そんな頃があったんだね。ルミアも」
知らなかった驚愕の事実がそこにはあった。あれだけのマナの質量を誇っていて、
格上であるがゆえに誰もが優等生だと思っているはずのルミアでさえも最初は
落ちこぼれであっただなんて考えられない。
けど最初から全て上手く出来る人間なんて、よっぽどの才覚があるのか、
天性の才能みたいなものを生まれ持っているのだろうか、だけどルミアは
本当にすごい人物だと今になって感心する。
彼女は自分から堕落のどん底から立ち上がったのだ。
誰もが彼女を軽蔑しただろうし。差別したものもいただろう。
だけど彼女は自ら這い上がろうと努力した。
じゃあ僕に足りたいものって一体なんなんだ。相手の力量や技量に
圧倒されるがあまりに僕は隙を突かれてしまう。そしたらもう床に
倒れこみ立ち竦むしかない。そんな僕に足りないものってなんだろう。
「努力したかって這い上がれないものもいる。それは才能とかじゃなく
どれだけ覚えたかにある」
「どれだけ覚えたか」
「私は努力すら惜しまない日々があった。けど何も変われない自分もいた。
だから私は何が何でも強い力を欲しいと思った。だから覚えられることは
なんでも覚えた。お前はどうだ?」
どう答えていいのか、その瞬間から分からなくなり、僕は口を開けたまま呆然
としていた。確かに何度も挑もうという姿勢はあった。けれど覚えようとかそう
言った意識は完全に抜けていたのかもしれない。学習能力がない僕はただ単に
ワンパターンの攻撃と防御で隙を見せていたのかもしれない。だから努力という
かそういう僕の積み重ねは無意味なのかもしれない。
「僕どうすれば・・・・」
「とりあえず後2週間誠意を見せて頑張ってみろ。そしたら見えてくるものもある
なにか掴めるかもしれない」
「そうだね」
「それにもうあと一週間したら夏休みだ。私に提案があるのだが
私のバカンスに付き合ってくれるか?」
「それってデートの誘い」
「なわけあるか、お前の修練に付き合ってやるということだ。だからあと
2週間だけ頑張れ。待っておるから」
それから幾度も僕は剣術の修練に余念がなかった。相手の情報を読み取ること
相手から得られる情報は多い。けれど相手にも隙があるそれを見極めるのに
時間がかかった。だから勉学にも余念がなかった。相手のデータベースには
のっていない技法を応用し。相手の隙を見て攻撃。どうにか一打相手にダメージ
を与えられるように成長していった。
周りからは歓声の励ましの声もあって、友達も増えていった。けれどなんだろう
僕はなんだかもどかしさを感じていた。僕はただ当たり前のことをやったまでで
あってまだ強くなれていない。もっとなにかあるはずだと一人で何でも抱え込んで
いた。だから仲間からは素っ気ないなどと思われていた。孤独に陥るのは仕方ない
こと別に仲間意識なんて必要ない。僕はそう思い込むようになっていった。
それからあっという間に2週間は過ぎて僕は晴れて夏休みを迎えることになった。
夏休みでは外出許可が降りて、勿論授業なども一切なくプライベートな時間を
有意義に過ごせるように時間がもうけられており、一夏の8月から9月までの
一ヶ月間を自由に過ごすことが出来る。学園の計らいだ。
夏休み恋人または友人同士でバカンスに出るというものも多い。
所謂リア充というやつらだ。僕は仲間同士で戯れることを拒否し。
学園を出るなりルミアを探し回った。けれど学園の外には姿がない
そこで一旦学園へと戻り屋上を見上げるとそこには手で僕に合図する
ルミアの姿があった。
第2話 ルミアの故郷での生活と過去での出来事
「遅いいつまで待たせる気だ」
「だっててっきり外出して外で待ってるかと思って」
「そんなわけあるか、私は故郷へ行くと言ったが、故郷は異界へ通じる
転移門。所謂ゲートを通らないといけない場所だ」
「それじゃあ」
「安易に他の人と接触行動を取れば私達を付け狙う輩もいるだろうし。
それに異界へ行くのは学園の規則違反になりかねない」
そうかだから校門の外へと出れば。ルミアを付け狙う悪い組織だったグループを
異界に招いてしまうこともあるのか、それに学園内の先生に見つかりもしたら
ということは学園の屋上はもっとも監視が行き届きやすいところなんじゃ
「監視の目を掻い潜るにもここは早く見つけられる場所なんじゃ」
「なに先生達は私達の存在を把握できない。何故ならば我の魔法でお前と私の姿を
消したからだ」
「一体全体どういうこと」
「つまり私と君は今透明人間ということだよ。だから監視カメラには
多分誰も映っていない。」
「声はどうなんだよ」
「大丈夫だ。多分ノイズで何も聞こえんよ。私達はいないそういう暗示が
この魔術には施されている。」
ただ普通大掛かりな魔術を用いるには魔法陣というものと触媒となるもの
血とか必要になったりするものだが、屋上の地面にはその痕跡すら残って
いないとすると、どうやって魔法を発動させたんだ。そもそも本当に監視の
目を誤魔化せるものなのだろうか、ここは魔術の学園でもあるというのに。
「本当に大丈夫なの?」
「案ずるな。私を誰だと思っている。この我の手にかかれば造作もないことだ。
それに私は魔法陣を描かずとも。魔術刻印で魔術を扱うことが出来る」
「魔術刻印?なんだ。それ聞いたことも見たこともないぞ」
「お前の肩にタトゥーの文様があるはずだ」
僕の肩にそれってシャワーをよく浴びた時によく見ていたあれか、でも
あんな黒い模様のやつがタトゥーなのか、僕は別に気にしていなかったけど
今時の魔術刻印ってお洒落なんだな。でもよくバレなかったな。バレたら
大変なことになっていたぞ。いや待てよ。身体検査の時にそういえばこの模様も
見られていたはずだ。なのに身体検査で引っかからなかったということはただの
タトゥーであり魔術刻印だと見抜けなかったということなのか。でもどうしてだ。
なぜ魔術刻印であることを・・・・
「ほっ何そんなに私の目をジロジロと見て。種を教えてくれと拝みそうな
顔だな」
「だってこんなに目立つタトゥーが入ってたら普通目立つでしょ。なのに
どうして魔術刻印であることが知られていないのか分からないんだよ」
「それは簡単なことだ。言っただろう細工をしてあると、その魔術刻印には
普通の人ならただのタトゥーにしか見えないけれど、私にはその文様に
邪悪なオーラが漂っているように見える」
「魔術刻印とは本来契約者のみがそれを明らかにみることが出来る。但し契約者
以外であれば、それを見抜くことが出来るのは稀代の魔女くらいな。ものだろう
私と同じくな」
「そっかルミアは魔女の血族の血を継いでるのか」
「そうだ。聖堂の魔女殺しの罪で殺された。育ての母の血を私ね。
引き継いだの」
「それじゃあ。君は本当にすごい人なんだね。」
「私はすごくなんかないんだよ。まぁいいとにかく行こうではないか。
その時に過去話することにしよう。心ゆくまでな」
「あぁ行こうよく分からないけど、その異世界へ」
「ではゲートを展開する儀式を執り行う。目を瞑って私と手をつないで
いろ」
「おう。ぐわっ眩しいなんだこの光は」
こうして僕とルミアはこの世界とは別離した。異世界へと誘われるのだった。
そしてそこにはまだ見たことのない美しい光景と長閑な田舎の風景が垣間見る
ことが出来たのだった。
最初見た瞬間本当にこんなアニメに出てきそうな風景ってあったんだと思った。
それは幼い頃から憧れていたものそのものだった。そしてあるとき夢に出てきた
あの風景とも同化していて、僕は益々高揚して胸が高まる思いだった。
まるで御伽噺の世界そこには見たことのない動物やらが沢山生息していて、見たこと
ない人種の人たちも沢山いた。あれは亜人というのだろうか、ルミアの村の集落には
人間とは異なる亜人という者達も数多くいて、街中を見物するように練り歩いている。
僕は違う人種に混じりながらも。新鮮な空気を吸うように見たことのない光景を目の
当たりにしながら困惑の表情を浮かべながらもルミアが住んでいるという屋敷を訪れる
のだった。
「ルミアお嬢様お久しぶりでございます。お元気でなりよりです。
そちらの方は」
「やぁアルフレッド久しぶり。元気にしてたか。こちらは私の友達だ
まぁ仲良くしてやってくれ」
「そうですか、このたびはルミアと友達になって下さり、光栄です。
なにせこの子は昔独りぼっちで友達がいなかったもので、これからも
どうか末永く友達でいてください」
「いえ僕もルミアには助けてもらってるし。一緒にいてすごく楽しいですよ」
「そうですか。ならなによりです」
ルミアのこの屋敷は豪邸で豪奢な佇まいが感じられるほど優雅で綺麗なものだった。
それは内装も同じであり。大きなシャンデリアとともにアンティークな置物が沢山
ところどころに並べられていた。整理整頓もそれからフリーリングの床や階段もドアも
窓も内装自体綺麗にコーティングされていた。アルフレッドとそのメイドである人が
綺麗にしておいてくれたのだろうか。感無量である。
とその時だった。僕達がアルフレッドの案内で色々と家の中で
話込んでいた最中。玄関から顔を出して、大声で話しかけてくる
白い髪をしたポニーテール少女の姿がそこにはあった。
「ルミアお姉ちゃん!ねぇルミアお姉ちゃんだよね。元気。元気にしてた」
「コレット。コレットなの?久しぶり。元気にしてた。変わりないかしら
学校で苛められたりとかしてない?」
「うん大丈夫それより大丈夫お姉ちゃん。日本で悪い人に誑かされ
卑猥なことなんかされてない?」
「大丈夫よ。コレットさぁこっちに来なさい。やだねぇこの人はこの人誰なの
怪しい人。大丈夫お姉ちゃん」
「大丈夫よ。それに安心して、その人私の友達だから」
「お友達なのなら良かった。それにしてもなんで男なの?もしかしてルミア
お姉ちゃんの彼氏?」
「そんなわけないでしょ?もう」
しかしまぁ姉妹揃って仲も良いし。可愛いし綺麗だし。なんだろう僕が仲間に
入れてもらえないのが少し残念な気がする。それにしても本当に仲がいいんだ
と思う。僕は弟と仲が悪くてこんなに会話が弾んだこともなかったし。どうでも
いいことでいつも喧嘩ばっかりしていて、いつしか話すらしなくなっていた。
でもルミアとその妹を見ているとこれが普通の姉妹なんだと改めて実感する。
それがなんとも愛おしくて微笑ましくも思うのだった。
「どうかされましたか」
そんな僕を影から見守り声をかけるアルフレッドがそこにはいた。
僕は俯きながらも二人の様子を伺いながら。疑問に思っていたことを
密やかに小声で呟いてしまうのだった。
「いやさルミアってあんな顔出来るんだなって思っただけ」
「それはまぁ姉妹ですから」
「僕が今まで見てきたのはそれとは別だった。というか何か一人で全部を
抱え込んでいて、仲良しの友達を連れ歩いてる様子もなく。一人で孤独
なのかなと思ってたから」
「それは考えすぎなんかもしれませんな。彼女はただ貴方のことばかり考えて
いたんじゃないですか、彼女はあぁ見えてお節介なところがありますから」
「そういうものなんでしょうか」
僕が頭で考えていたこととはかけ離れていることだ。
だが今までの行動は確かに不可解な点が多すぎる。彼女が何故に僕のために
そこまでする必要性があるのか、それは今現在のところ僕の中では分かって
いない。
だから僕も彼女の素性について知る必要がある。けれど彼女の心の中を知る
ということは陰惨な過去とか彼女が抱えている悩みを背負うということでも
ある。僕が彼女に寄り添うことで出来ることはそれくらいしかない。
アルフレッドは僕にルミアと友達になってくれてありがとうと感謝していた。
けれど僕はルミアに支えてもらっていて、それが彼女自身の負担になっている
のかと思えば気が重くなり、やはり彼女との心の距離は遠くて、手に届かない
距離にあるんだと実感する。
「実のところコレットはルミアの本当の妹ではありません。お互い血の繋がりが
ないんですよ」
「そうなんですか?」
「はいコレットは村の農村付近で発見されました。当時村の食料不足による飢饉が
蔓延しつつあって、彼女もその被害者であり、餓死寸前のところをルミアが見つけ
引き取ることにしたのです」
ルミアは母を亡くした後。屋敷のオーナーでもあるアルフレッドに引き取られ。
田舎町から都会にある魔術学校に通いつめ。めきめきと実力をつけて、最上級
ランクである称号を手に入れ。卒業試験を終えて、また田舎町にある屋敷に
戻ることとなる矢先。村の様子を見に行くとそこに倒れ込み餓死寸前で気絶して
いた幼い少女の姿があり、すぐさま治癒魔法をかけ。どうにか意識を取り戻し。
一旦引き取ることにして、屋敷でご飯を食べさせたりするとどうにか元気を取り
戻し。今度は親を探しにまた村へと戻った。村は燃え尽き一面が焼け野原となり、
生存者はいなかった。死んだ母の亡骸。少女の顔は涙で溢れかえっていた。
「どうして・・・どうして・・・お母さん・・・お母さん・・・」
少女は涙を流しながらそう言っていた。見かねたルミアは彼女を抱きしめ。
一緒に涙を流した。そしてこういった。
「お前の母親はもういない。私の母も死んだ。けどもう泣かなくていい。
生きてるだけで良かったんだ。ただ生きているだけで」
「でももうお母さんは」
「もういないんだ。死んだ人を生き返らせる魔法はない。だけど私がお前の
母親の代わりになることなら出来るのかな」
「私の母親の代わり。お姉ちゃんが」
「そうだからもう泣くな。そしてもっと強くなれ深い悲しみさえも
乗り越えられるように・・・・」
アルフレッドから聞かされた話によると。コレットの母親はいたのだけれど、
母は娘を愛してはいなかった。だから育児放棄していたのだ。農村が食料不足
に陥ったのは。食物の栄養不足により育たなくなってしまったからだ。
困りに困った村人達は結束して自らの命も引き換えに村全体に火をつけて、
死んでいった。
ルミアは死んだ人間を生き返らせる魔法などないといった。それは本当で、
死んだ事実を無くすことはできない。不可能なのだ。だから少女に今はただ
現実を受け止めて、もっと強くなれ。助けになるからと少女の母親の代わりに
なることを決めたのだった。
それからコレットはルミアのことをお姉ちゃんと呼ぶようになり。お互いに
愛し合って、楽しい日々を過ごすようになり。コレットも魔術学校に通う
ようになり、いつかお姉ちゃんを守れるくらい強くなりたいと思うようになり、
いつしかルミアが目標になっていた。
その事実を僕は全くもってしらない。ルミアとコレットがどういう関係性で
結ばれているのかも。どういう生き方をしてきたのかも。けれどお互いを
思いやれることって大切なことなのかもしれない。人から愛されるって本当に
その人にとって希望になれることかもしれない。僕はその話を聞いてそう思う
のだった。
「そういう関係だったんですね。ごめんなさいただ仲がいい姉妹なのかと
思ってしまって」
「人生にはいくつもの分岐点があり、彼女はその一つを全うしただけだよ。
ルミアは彼女コレットの希望になったのだから」
「でもそれを背負うのって相当な覚悟が必要になるんじゃないんですか?」
「そんなに深く考えるな。青年。二人は今幸せなんだよ。
だから君も楽しみたまえ」
「そうですよね」
深く考えるな。今はここでの生活を楽しまなきゃ。折角の夏休みなんだし。
それに異世界に来ることなんて滅多にないかもしれない。
それにしてもさっきからルミアとコレットの姿がない。一体どこにいったんだ。
まぁ心配しなくてもいいのだけど、なんか俺だけ独りぼっちでいるのも
嫌だし探しに行くか?
「あぁコレットとルミアなら魔獣狩りに出かけたぞ。食材調達にな!
美味いレアモンスターを狩りに」
「それって禍々しいほどにやばいやつなんじゃないんですか」
「大丈夫だ。見かけはアレだが・・・・美味しいぞ」
「それマジやばいやつじゃないですか!」
急いで追わないと大変なことになりそうだ。全く俺はどうして運がついてないんだ。
魔獣狩りしなくても食材ぐらい調達できるんじゃ。というか食べる前にサバイバル
ってなんだ。弱肉強食の世界かよ。とまぁ人間には勝てないはずだが、相手は魔獣
だぞ魔獣。危険度高すぎるだろ。それに女の子二人で立ち向かえるものなのか。
ルミアはともかくとしてコレットは。いかんいかん変な妄想をするな。余計。
心配になるだろう。ともかくそんなにまだ離れていないはずだ。魔獣を狩りにいった
ということは近くに森林がある森の中か。そこなら魔獣がわんさか。生息していそう
だがともかく聞き込みだ。見かけた人何人かいるだろうし。
「ってあれなんで庭の庭園でサバイバルしてんだよ。しかも二人共かなりやりて」
「颯真そこにいては魔獣の餌になるだけだ。下がっていろ」
「いやそっちこそ危ないんじゃ」
相手は小振りな灰色狼にとサイにそして赤い鳥。あれはフェニックスなのか。
それにしても。そんな相手によく挑めるよな。というか相手の数多すぎるだろ。
どうやってこんなに魔獣がここには溢れているんだ。
「近隣住民から避難警報が発令した。魔獣による被害が多くなっているらしくてな」
「それでここまで襲ってきたっていうのか」
「あぁ魔獣はとくにマナの質量が多い人間を好む何故ならば。魔獣のツノにはマナダイト
結晶というもので機能しているからだ」
「それにしてもこの数お前達じゃ倒しきれないんじゃないか」
「まぁそう言うな。私とコレットの力はこんなものではない。そろそろ終とするか。
コレット契約だ。私の手を握れ」
ルミアとコレットの契約儀式が発動される。発動条件はお互いに目をつむって。
キスを交わすことにより効力を発揮する。だが俺と契約したばかりだというのに
一人を限定として契約するものではなかったのか。だが限度というものがあるの
だろう。もしかして一時的な契約なのかこれは
「颯真お前にも見せただろうあの秘技を使う」
「フェイヤーエクスプロージョン・エンドフェニックス」
「はぁああああああ!」
「フルバースト!」
すると数多くの魔獣はあっという間に火の海に投げ出されるかのように。
丸焦げとなり。ただ肉体だけが仰け反り状態でもう意識すら完全に失って
いた。しかし何だ。この数の多さは。異界にも魔獣って住み着いているの
かよ。それにしても契約魔法ってあんなに簡単に扱えるものなのか。
お互いにシンクロしていなければ効力を発揮できない。そういうもの
なのだろうか。
「あぁさっきの契約魔法に関してだが、私とコレットは元々契約の儀式を
終えている。この刻印をみろ」
「じゃあ一時的な契約魔法ではないということなんだよな」
「あぁ私とコレットはもうコレという仲だからな」
「ちょっとお姉さまこの訳もわからぬ男にその・・・私とのxxな関係を
教えていいのですか」
xx言うなよ。一体どんな関係なんだよ。というかルミアってもしかして
あれか所謂シスコンってやつなのか?いやだとしても契約なんてありなの
かよ。俺だけの特権なのかと思っていたのに・・・・まぁそれは良いとして
姉と妹の関係性だ。きっと色々と事情があるのだろう。
「ルミアその契約魔法の効力とかって魔獣には有力なのか」
「あぁ魔獣には効果が倍増する。ただお互いに意識が覚醒状態であるのが、
もっとも効力を発揮することが出来る。」
「じゃあそれを扱えるかどうかで」
「勝敗を決する。お前も私の契約者なのだから覚えておくといい」
「分かったよ。それにしてもあんなに連携が取れているにはびっくりだ。
まるで本物の姉妹みたいだった」
しかしこの魔獣をどうやって調理するんだ。このままだときっと毒だろう。
それにこんなに丸焼きにして。全部食べられるものなのか。だがこれで、
近隣住民への被害への防止対策にはなったのかもしれない。魔獣という存在
は一体どこから発生源を広げているのか。マナダイト結晶というものは一体
なんなのか未だ謎が多いな。と頭の中が困惑しながらも。
全てルミア達に任せるのであった。
夕食はその魔獣の皮をぶつ切りにして釜でグツグツと煮込み。
それを食べるのだった。邪悪のオーラが如何にも漂っていて、
不味そうな感じだったが、以外にもそれが美味しかった。
そしてそれを腹いっぱいに食べてベッドの上に横になるの
だった。勿論ルミア達とは別部屋だ。
とまぁこうして異世界での一日が始まりを迎えるのだった。
がこの先に何が待っているのかそれすらもまだ分からないままだ。
だが一つだけみて分かったのが、ここならルミアについても距離
を近づけそうだし。もしかしたら自分にとっての大きな何かを
得られるチャンスかもしれない。
そういう光景を頭の中に入れながら。安らかな眠りにつくのだった。
まだ見る明日を見るために・・・・
第5章 主人公の成長と明かされる過去の記憶
ルミアはこの異世界マールシアの国にある。
愛すべき故郷であるイグニアの町を色々と案内してくれた。
この町では皆それぞれの人種に分かれており、特別日本人と同じ種族もいれば、
動物の顔をした亜人やハーフエルフなどもいる。
だがそれぞれが違う人種だからこそ。やはり人種差別というものは異なり、
対立し啀み合うもの同士もいる。
だがこのイグニアという町では争いごとなど滅多に起こることはない。
何故ならばこの町には日本でいう法律。決まり手があるからだ。それを
破ったものに関しては思い罰則が与えられる。
けれど処刑というものはなく。ただ貧しい農村で暮らしている村々を回って
ボランティア活動または馬車の運転手の手伝いや。飲食店や建設作業の力仕事
の手伝いをさせられ。思い罪を背負ったものに関しては重くきつい強制労働
が課せられることとなっている。そして今現在。イグニアの長閑な町では
働きたくない若者共達は日々争いごとを起こさず。楽しくわいわい過ごしている。
ここでは市場マーケットがあり、安い値や高い値で沢山の物。例えば果物。
服。そして魔道具。雑貨類などもある。魔道具に関しては厳密に言えば処罰対象
に含まれるものもある。それは人に害した異物であるものと判断され。その判断
基準は国によっても様々だ。なので、憲兵に見つからないように。魔道具を扱う
魔女は。町から離れた農村や村に住んでいて、商売している。ルミアもよくそこに
買い物に行っているそうだ。
「ここはいい町だろ色々な物が沢山売り買いされている。それに貧しい村人達すら
この町を愛してやまない。それが生活の助けになっているものもいるからだ」
「こういったマーケットとかって毎日行われているわけではないのか」
「えぇそうなの一ヶ月に何回か開かれることがあるわ」
「そうなのか。村から来ている人もいれば。その他の国の地域の人もいるわね
多種多様な種族がいるから混乱を避けるように憲兵が付きっきりで警護見回り
を見回りを行っているわ」
「それからこの町にはね闘技場という場所も設けられているの。イベント会場の
一つとしてね。月に何回からあるマーケットが開かれている時は闘技場で模擬
試合が行われているわ」
「そうなのか」
「見に行ってみる。男の選手の中では皆厳つい体格をした。レスラー並みの格闘家
もいるけど、騎士学校に通っている。剣士も腕を競いにやってくるわ。まぁちょうど
いいし今から寄っていかない」
「別にいいけど」
「じゃあ決まりね。急いで向かうわよ。ついて来て」
闘技場という場所では日々鍛錬を積み重ねた武闘家や剣豪達が腕を競う。勿論それ以外にも
魔法少女による戦闘も行われ。あとパペットマスターと呼ばれる人形使いも戦闘に交わることも
あるらしい。模擬試合であるが、迫力のある戦闘と見るものを圧倒する。パーフォーマンスを
見せる者共が多く。多種多様な人種がランダムでの戦闘を行い。数時間単位で人が代わる代わる選手交代していき。最後の最後。決勝戦まで生き残った強者こそが勝者となる。
但しペナルティーを受けた場合。罰則として退場が余儀なくされ。二度と闘技場に踏み入ること
が出来ないとされている。闘技場を脅かす存在を監督役であるものが常に監視しているために
厳重な警戒態勢が取られている。そんな中で戦闘が一ヶ月に何度か行われているが罰則を受け。
退場したものはほとんどいないとされていて、安全は保証されている。だから観客も大勢いて、
いつも満員御礼だ。働き手のバニーガール達はせっせとビール瓶とポテトフライを持ちながら。
代金を貰う代わりにサービスを提供している。僕もポテトフライとビールは未成年だから飲めないので、代わりにウォーターボトルを受け取り。代金を払い。ルミアとともに闘技場の模擬試合
を観戦することにするのだった。
会場の熱気は試合開始のゴングが鳴ると同時に歓声のどよめきが上がり、テンションMAX状態のムードが客席に流れ込む。そんな中僕は蒸し蒸しとした空気に晒されて、汗だくに汗をかきながらも真剣な表情でその試合を見届けるのだった。
中でも印象に残った試合は二つあった。巨椀の腕輪。ジャイアントグローブを身にまとった。
巨躯な体つきの武闘家と、聖騎士ゆかりの銀色の鎧を身に纏う。白銀の剣士が立ちはだかった。
持つのは長い二刀流の双剣。その長く太い尖った鋼鉄の刃が巨椀の腕輪と相まみえることとなった。お互いに一歩も引かない譲れない戦いが始まり、凄まじいほどの衝突の影響で地面に大きな亀裂が入るも。お互いにぶつかりあい相手と僅差で並ぶ。だがお互いボルテージがMAX状態と
なり。ここで二人の必殺技が繰り出されるのであった。
「秘技皆伝。覇王滅殺独流奥義。メテオストライク!ゴールデンアッパー!」
だがその攻撃範囲は避けられずも。騎士は倒れることもなく。鋼鉄の守りで防ぎ切り。
必殺技で返り討ちにするのだった。
「秘技皆伝。轟け。雷鳴の剣。ライジングフルカウンター!オーバキル!」
素早い動きで痺れるような電撃が地面を通し。流れ巨椀の腕輪が真っ二つに折れ。
本人目掛けて、最後の電撃の一撃が浴びせられる。その俊敏さもだが、光の速さと
言うべきか目には見えないほどの閃光の速さで相手を攻めまくった聖騎士は。まさに
強者といえた。自分もあんなにまではなれないかもしれないだが、あれだけの力を
大技を見せつけられた後に出せるなんて想像を絶するもので、息を付く暇もない戦闘
に思わず手に汗を握る自分がいた。
そしてもう一つ見所となる戦闘があった。それが魔法使い同士の戦い。しかも。
姉妹双子揃っての出場。もう一方の相手はただ一人だが、背中には使い魔を宿して
いるようだった。邪悪なオーラ漂う使い魔の魔法使いと、お洒落な衣装を身に纏う。
瓜二つの双子の姉妹の魔法使い。その両者の戦いが幕を開けた。
最初はやはり大技は繰り出さずお互いに攻めるも甲乙付け難い勝負が繰り広げられた。
仕掛け魔術や使い魔だけを操りながらの近術戦闘。そして遠距離戦闘。両者の戦闘は
ほぼ互角の戦いを見据え。最終局番に入ったときに必殺技のオンパレードが繰り出される
のであった。
まずは姉妹魔法使いが大いなる力を解放し。必殺技が放たれた
「大いなる願いをもって破滅の力を解放す」
「アルテマ・ライトニング・エンドカタストロフィ」
「はぁああああ!」
「クロスジャッジメント!」
その攻撃範囲は戦闘場所を覆い尽くすほどで、様子が衝撃派の煙でよく見えない状態だった。
だがその立ち込める煙の中に使い魔の魔法使いである彼女の姿は黒い円筒形のバリアみたい
なものに覆われていてよく見なかった。恐らく彼女は突然の大魔術発動直後に。使い魔を
自分の大いなる盾としたのだろう。邪悪な使い魔は妖魔であり、あらゆるものに形を変化
させることができるのだ。黒いバリアは数分後。まるで溶解するように溶けていき。やがて
本来の使い魔の姿に変化した。そして彼女は無傷のまま。マナの使いすぎで消耗している彼女
らに追い打ちをかけるように反撃の狼煙を上げる。
「番狂わせといこうか。妖魔よ。私を喰らえ」
妖魔との融合の力により力は覚醒する。そして暗黒の黒魔術により、次次と地面が
溢れ出してくる。亡者の軍勢達。襲いかかるの危機を姉妹二人は最大の防御魔法で防ぎ
と回避運動とともにカウンター魔法で微塵にも亡者達を撃滅しながら。反撃のタイミング
を見計らう。けれどその数の多さに圧倒され。マナの保有量は減少傾向に至り、それから
体力すらも奪われてしまう。そこで彼女達はポケットにしまいこんでいた。活力の実を口
にして、反撃の狼煙を上げるのだった。亡者の達の軍勢がある程度撃滅すると、残る軍勢と
その本体を倒すために大技を繰り出す。
「大技いくよ。シャイニングフォームフルバーストリンク起動」
全てを燃やし尽くせ。エクスプロージョンメテオダイナマイト!」
「なんだ。この神々しいほどの光は」
「喰らって破滅しろおらぁあああ!」
「妖魔の力をもってしても勝てぬか・・・はははっ。ぐふふっ。はははっ
ぐわぁあああ!苦しい。苦しいよ。誰か助けてくれー」
圧倒的な力と交差する戦闘風景。そのどれも誰もが予想できない展開。
その瞬間。瞬間に勝つか負けるかの差があり、両者とも本当にどちらが
勝っていたとしてもおかしくはないほどに全力でぶつかりあっていた。
そして勝敗が決した時。僕はただ圧巻の表情を浮かべていた。ルミアも真剣
な眼差しでどこか虚ろに戦闘風景を眺めていた。
しかしこれほどまでの使い手が存在するとは世界というものが広い中で、
まだ見ぬ強者が僕達の前に立ちはだかっていると考えると、僕に今何が
出来るのか、強くなるには。そしてルミアの支えになるにはどうしたら
いいのか。思考が膠着してしまう。そんな影を落とす僕をルミアは微笑し
背中を叩いてくれた。
「どうした今ので、完全に怖気づいたか。自分では手も足もでないというほどの
恐ろしさに」
「あぁ本当に恐ろしいよ。あんなに強い奴らが居るなんて。まるでゲームやアニメの
世界の話だとしか感じていなかったから」
「だが現実にある。今のお前自身を変えるのはお前しかいない。雑魚でも這い上がれば
強者にだって登りつめることだって可能だ。今の未来を変えるためにはどうすればいいと
お前は思う」
俺が自分自身を変えるために今出来ることそれはただ修行の鍛錬に励むことなのだろうか。
だがそれだけで得られるものは少ないのに。一体どうすれば・・・・
「小さな積み重ねだけでこの運命をも変えられるというのか?」
「あぁ変えられるさ。どんなに努力が無駄だと言われようが変わってしまえば自分のものだ。
お前はまだ覚醒の時を迎えていない。だから成長してみせろ。私の目の前でその身を持ってな」
狂おしいほど強い者に憧れを抱く感情はまだ自分の中にある。運命を変えられるのは自分。
そうかそうだよな。だけど俺なんかが自分のちっぽけな野望のためだけに変えられるのだろうか
この運命そのものを・・・だが今こそ試すしかないそう自分で固く決意するのだった。
「ルミア俺やるよ。そしていつかお前。成長した姿見せるから」
「あぁ見せてみろ。お前の本気というやつ。をな」
この世界は不条理で自分の良いようには成り立ってはいない。誰しもが格差を抱き。
壁にぶつかってはまた這い上がろうと頑張る。それだけで自分の中に残るものは
ちょっとしたことかもしれない。でも少しだけでもいい希望があるのなら。ただ
我武者羅に努力を積み上げることしかないのだから・・・それだけ今は救われる気が
していた。今だけは・・・この先に大きな試練が待ち受けようとも知らずに・・・・
第二話 主人公の修練での成長と発現する剣術スキル
圧倒的な力と技のぶつかり合いの光景を直に見た。あの時の感触は俺にとって忘れられぬ
出来事となった。けれどこのまま僕も手を拱いているわけにもいかない。近づきたいけど
近づけない強大な力に歯向かうには自分で自分自身を変えてやるしかない。そうあの時俺は
決意を新たにした。けれども漠然としてやれることなんて、ひたすら我武者羅に修練の日々に
明け暮れるしかないのだろうか、と思いを馳せるような気持ちになっていた。そこでルミアの
ある提案が示された。
「アルフレッド悪いがこいつの修練の面倒を見てやってはくれないか?」
「老弱な儂が彼を鍛えろと、体が訛っておらんか心配なんじゃが」
「何を戯けたことを言っている。確かに老体で体が多少は訛っているかもしれないが、
私の義理である弟を聖騎士にまで育て上げた男だろう」
「それはそうですがルミア様。私にあの若造を成長させられるでしょうか?真価が問われるのは
あいつ次第だ。それにもう私では手に負えないからな。あとは頼んだぞ私はコレットと付き合
いがあるからな」
「可愛い義理の妹を頬ってはいられない。そんな年頃でしたが、しかしまぁ儂もまたこの老体
に鞭を打つことになるとは世間も狭いものですな。だが儂が指導役に回されたということは
手を抜くわけにはいきませんな」
ルミアは俺の指導役に執事であるアルフレッドを修練の指導者として選んだ。
適任であると考えたからだろう。だがその修練も生半可ではないことくらい
容易に想像すら出来ただろうに俺はまた地面に倒れることが何回か続いた。
何回も先を読まれて、相手は隙すら作らず。自分を攻め立てようと猛追してくる。
僕は必死にガードの構えをとり、反逆の機会を狙うもあっさりと砕かれてしまう。
弱い自分だった。こんな俺でも変われるという未来を漠然と目の前に見据えていた。
けれど、僕は変わることに踏み出すことさえ躊躇い続けていただけであった。
「どうやら完敗のようじゃな。お前はすぐに次に打つ手がすぐに読めてしまう。
それ故に何のために強くなろうとしている」
「俺が強くなる理由」
「守りたいものがあるか、誇れるものがあるか、恐らく。お前にはないじゃろうて。お前は
まだ何一つ踏み出してもおらん。ただの奢れる餓鬼だ。自分には剣術の才能だけがある
と思い込んでおるだがお前には何の才能もなければ誇れるものさえない。ただ高くくって
身構えているだけの脆弱なヒーローだ。それをまだお前は分かっていない。分かろうとも
していない」
「じゃあ僕は、俺はどうすれば・・・どうすれば強く気高くなれると言うのか教えてくれ」
「ただ無我夢中に剣に振り回されているだけではものにできないのだよ。才覚というのは
だがお前には無能であっても諦めない心意気がある。ならイメージするのだ。弱い自分
でも誰かを守れるくらい強くなる自分をそうすれば道は開けるであろう。必ず近いうちに
儂が言えるのは。ここまでじゃが、後はお前次第だ」
俺に足りないもの。イメージする力。努力とかじゃなくて、手に出来る力がまだあるのか。
でもどうしたら。誰かを守る。諦めない心。ただ剣に振り回されるのではなく。理解できない。そこにどんなものがあるのか分からない。でもなんだろう確かに僕はただ今の今まで、
自分の剣に意識だけを奪われていたのかもしれない。でも目の前の敵と相対した時。勝敗は
決裂してしまう。剣に意識だけを持って行かれては駄目ということか、見るべきものは目の
前の相手だけ。振り回されることなく剣を我がものとするには。
とにかく集中して、俺にしかイメージできないもの。それを手にするために。見るべきは相手だ。剣に意識を惑わされるな。相手に惑わされるな。考えるのだ。頭の中で思い描け。盤上に例えば敵がいたとして、その相手がどのような戦法でどのような形で攻めて来るのか、
だが攻めてくる前にこちらも迎え打たなければならない。なら相手を凌駕するにはその相手の速度さえも上回り、尚且つ強力な打撃を与えるにはどうすればいいのか、ただその一点に
問題の打開する解決法を模索し始めるのだった。
一方ルミアとコレットはというと、同じように二人で稽古の真最中だった。
コレットは魔法学校の卒業試験間近で、自分の実力がついてきて、成績も上がり
トップクラスの成績を誇っていたが、最近はスランプ状態にはまり上手く魔法が扱えない
状態にまで落ち込んでいった。なので、義理のお姉さまであるルミアに稽古の手助けを頼もうと
したのだった。
「コレット今更稽古をつけてくれだなんて、珍しいな何かあったか」
「私は姉様みたいに強くはないけど、でも諦めたくないです。私はちゃんとした魔法使いに
なってこの町や村の人々の手助けになりたいから」
「それは故郷の村人や家族を救えなかったからか。だとしても現実は違うかもしれない」
「時々姉さまの言っていることは理解不能です。それにあの男の人とはどういう関係なん
ですか、何で黙っているのですか?どうして相談もしないで一人で決めてしまわれるの
です」
「コレットこの世界は広い。お前はまだ知らないことが多すぎる。あの男もそうだ。お前と
同じだよ。魔法が使えないが、剣術を磨いて私を支えになりたいと思っているはずだ。まだ
這い上がれない若造が私にそういう覚悟を見せてくれる。それにわからず屋のあいつも歯痒い
思いをしていて私はその手助けになりたいだけさ。そして私には友人すら数少ない。あいつは私の暇潰しの用心棒いや友達に過ぎんよ」
「ならいいのですが、なら尚更私の稽古になんて」
「あいつと私じゃ釣り合わんよ。それにコレットの相手が出来るのも今のうちだからな」
「じゃあ手加減しませんよ。ルミア姉様。本気で行きますから」
「あぁそうでないと私が困る。そうでないとな!」
こうしてルミアとコレットの稽古は始まりを告げるのだった。
そして颯真はというと、まだアルフレッドの稽古に苦難を強いられている様子だった。
まだ手も足も出ないアルフレッドとの攻防の連続に心は乱れ。自分自身さえ追い込んで
しまっていた。知恵も体も全て絞り尽くすだけ絞って、ただ立ち向かってはそれを破られ
るまるで全てを読み取られるかのように。ループしていった。
けれど颯真は変わっていった。剣にすら振り回されていた颯真が、自分で剣を振るうという
ことを初めて成し遂げていたのだ。そして新たなる技を覚えていて、アルフレッドでさえ。
防ぐのがやっとというくらいに。だがそれでも詰めが甘く。隙を突かれて颯真は倒れこむ
だけ。倒れこみ。服は引きちぎられ、ボロボロになり体すら傷だらけの日々が10日間続いた。
そして最後。ついに目覚めの時が来たのだった。
「これが最後だぞ。若造。もうお前とも相対することはないだろう」
「あぁそうだな!ジジイけど。なんか分かってきたぜ俺の本当の強さってやつが」
「どうやらもう掴んだみたいだな。ならお前の本気というやつを儂に見せてみな」
「あぁそうだな。見せてやるよ。これが今の俺の本気だ」
こうして決戦の火蓋は切って落とされるのだった。
一方その頃。ルミアとコレットも最後の稽古の真最中だった。
まさに凄まじい目には負えないほどの攻防が加熱するなか。お互いマナが尽き果てる
まで、奮闘し戦い抜いた。両者とも互角の戦い。防御魔法を展開しながらの攻撃魔法。
そして不意打ちからのカウンター魔法など、様々な戦法を用いて戦いは繰り広げられ
ていた。
けれど、ルミアがコレットの最大火力の魔法を受け。撃沈して倒れ込んでしまった。
本来のルミアが展開する防御魔法の障壁なら防ぎ切れたのかもしれないが、マナも
体力すらすり減らしたようで、限界を迎えていたのだった。
「ルミア姉さま大丈夫ですか?今治癒術を施しますので」
「いやこれくらいなら平気さ。それよりコレット魔術前よりも上達したな。これならお前
ならきっとこの町や村を守れるさ」
「お姉様。どうして・・・どうして私なんかに手加減を手加減さえ無ければ勝てたでしょうに」
「可愛い妹のためなら手加減すらしたくなるのさ。けどお前ならきっとやれる私はそう信じているからな」
ルミアは愛する妹の為に鞭を打って稽古に付き合うようにしていたのだ。
体に大きな負荷がかかろうともマナが尽き果てようとも構わず。全てを背負い込んで。
だがそれはルミアにとっては宿命づけられたもののようで、考えはそこにしか至らなかった
ようだ。それからはっとルミアもコレットも颯真とアルフレッドのことを思い出したように。
すぐに屋敷へと帰還するのだった。
そして颯真は前言通りのことをやってのけるのだった。序盤は前と動揺で相手の行動に沿った
行動をして、一進一退の攻防を見せていたが、その行動パターンも全てアルフレッドに完全に
読まれていて、隙を突かれるのも時間の問題だった。とそんな時だった間を指すようにコレット
とルミアが現れるのは。そして勝負はそこで決するのだった。アルフレッドがコレットとルミアに一点を見据えたミスによって形勢は大きく翻った。
「コレット。ルミア。来てくれたのじゃな」
「アルフレッドよそ見をするな」
刹那。目の前にいた颯真はいなくなっていて、静かな空気が辺りを包み込んだ。そして
颯真の大きな一撃がアルフレッドの背後から浴びせられることとなったのだった。
「喰うがいい瞬刃月光斬!」
「ぐっはぁあああああ!ぎゃぁああああ!」
「ぐへっ。危うく死ぬところじゃったわい」
「小僧いつの間にこんな剣術を覚えたのじゃ」
「爺さんとの修行で分かったことがあって色々と。だからなんていうか
ありがとうございます」
「全く言うようになったわい。この若造が」
こうしてアルフレッドと俺との修練は幕を閉じたわけだが、アルフレッドは
さっきの不意打ちで納得できない素振りを見せているようでもあった。
だけど成長できた気がしてなによりも技を覚えることがこんなに苦労を強いる
ことだとは漠然としていて最初は手に取るようには分からないでいた。けれど
修練を積んでいくとそれがはっきりとイメージとして湧いてきていて、爺さんの
言っていたことは本当だということに改めて気付かされることなったわけだが、
よからぬ凶報が僕達を待ち受けていたのだった。
「ルミア姉さま。ルミア姉さま。しっかりして下さい。しっかりして下さい」
「アルフレッド私がルミアに治癒魔法を施しておきますので、その間にベッドに
移す準備を整えておいて」
「はい分かりましたお嬢様。ルミア様をどうか頼みます。」
「颯真君悪いが君も手伝ってくれたまえ」
「はい分かりました」
僕が今彼女のためにしてあげられることはしてあげたいと心から思う。けれど彼女の傷を
癒せないことは自分で理解していたと知っていても。心の底から煮えたぎるような。
虚しい気持ちが心の内から溢れ出るかのように涙がぽつり、ぽつりと零れおちていくのだった。
そしてその思いが通じたのか。ルミアは一晩横になると、お前に灯台を見せてあげたいと行って
僕を外に連れ出すのだった。