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第7話 魔王さまの日本訪問その1


「はい、ライドル、あ~ん」


「ヒトミ、皆が見てる前でそれは恥ずいよ~」


セリフだけ聞けばどこのバカップルだ、このリア充爆発しろ! と非リア充の怨嗟を買いそうな行為だが、

ここは魔王城の食堂、国交を樹立したばかりの日本と魔界の親睦を深めようと定期的に開かれている、

昼食会の場なのであった。


「ゴホン、、、、あー君島君に将軍、ここは非公式とはいえ、日本と魔界との外交の場であるから、そのような

行為はプライベートでやっていただけないかな」


「う、、、団長すみません」


「ムトウ殿、失礼した・・・・」


さすがに目に余ると感じた武藤が2人を注意する。しかし、その武藤も・・・・


「ムトウ様、ワインのお代わりはいかがですか」


「お、すまないねマリサさん」


武藤に自ら給仕を買ってでたのは、女官長のマリサである。彼女も一見人族だが、その背中には黒い翼

がある有翼族だ。謁見の場で武藤のドストライクゾーンにはまったアラフィフな女性である。


「ではマリサさん、今日の執務が終わったら後程・・・・」


「あら、いやですわムトウ様ったら」


武藤のの言葉に顔を赤らめるマリサ、一応大人な2人は君島とライドルのように公然とイチャイチャはして

いないものの、甘~い雰囲気を醸し出しているのは丸わかりだ。マリサも最近夫を亡くしたばかりで、共に

長年連れ沿ったパートナーを失った者同士、急速にその仲を接近させたらしい。


「う、うう、、、胃が・・・・」


「魔王様、お薬でございます」


ただでさえ胸焼けしそうな光景を見せつけられたワンゲルの胃が、キリキリと痛みだす。よくできた給仕は

そんな彼に、そっと愛用の胃薬を差し出すのであった・・・・


「では、魔界の使節団には陛下自ら向かわれると、、、、」


「そうだ、やはり我が目で直接ニホンという国を見てみたいからな」


半月後に日本に派遣されることが決まった魔界の使節団、当初は宰相のガラリアが名代で訪問する予定

だったが、ワンゲルたっての希望で彼が使節の代表を務めることとなった。使節団にはそのほかライドル

やピコリーナも同行する予定だ。


「4日後に大使館設置のための要員が魔都に到着しますので、その船で日本に向かいます」


トルード自治領とは違い、まだ大使も常駐していない国に勝手に空港は建設できない。まずは船で魔界

から一番近い新潟に向かい、そこから上越新幹線で東京に移動するスケジュールだ。


「船か、、、まあ地続きではないのだから、いたしかたあるまい」


この世界ガイアードルの船は木造の帆船で、船室も狭く快適なものではない。彼はこれまでの常識で

船旅にうんざりした様子であった。


「むっ、この船でニホンまで向かうのか・・・・」


「少し、小さすぎるのですぅ・・・・」


さて、港町アイゼンに到着した魔王さま一行、日本側の用意した船を見て不安げな表情になってしまった。

なぜならそれは全長20mにも満たない、ガイアードルでも小型船に分類される船であったから。


「いえいえ、これは沖合に停泊している船との連絡用ですよ。アイゼンには日本の船は入港できませんから」


「そうなのか」


日本側の説明を聞いてもまだ一行は、不安がぬぐえないようだった。しかし、それも船が動き出すと吹き

飛んでしまう。


「おお、なんだこの速さは! どんな魔導を使っているのか」


「帆もないのにどうやって動くのかと思ったら、、、信じられないのですぅ」


彼らの驚きは、沖合に停泊する巨大な船を見てピークに達した。それは2万トンクラスのクルーズ用客船だ。


「こちらの船にお乗換えください」


「これは、まるで城のような船だな・・・・」


そして乗船したワンゲル一行は、更にその目を丸くする。


「さっきの言葉は撤回だ、、、、この船魔王城より豪華だぞ」


「ほ、ほほほ、、、、このガラリア300年ほど生きておりますが、これまでで最大の衝撃ですぞ」


クルーズ用だけあって、船内はリゾートホテル並みの豪華さだ。彼らが驚くのも無理はない。ワンゲルは

デッキからこの客船に付き添っている小振りな、ただしガイアードルの基準では巨大な2隻の船を見て、

あれは護衛かと日本側に質問した。


「ええ、海上自衛隊の護衛艦で、新潟までのエスコートを担当しております」


それは舞鶴の第3護衛隊に所属する”あたご”と”ふゆづき”だ。どちらもこの世界ではかけ離れた戦闘力

を誇っている。更にワンゲル達からは見えないが、潜水艦部隊も海中からひそかに護衛をすることになって

いた。日本側も万全の構えで、異世界初の使節団を迎える準備をしていた。


「あの船の戦闘能力を見せてくれることは可能か。前にでーぶいでーとかいうもので見たことはあるのだが、

直接この目で確かめてみたいのだ」


「ええ、自衛隊の視察もスケジュールに含まれておりますので、可能ですよ」


そして、ワンゲル達は最初の目的地、新潟に向けて出発したのであった。


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