おまけその十 ヤツルギ国騒動記~後始末はこっそりと、の巻
歓迎晩さん会を狙ったテロは、カガリたちの活躍もあって無事阻止された。わずか数分の出来事であったが、
周囲はまだ呆然としている。そんな空気を破るように、拍手と感嘆の声が静まり返った会場に響き渡った。
「Oh! リアルくノ一素晴ラシイデス。ニンジャワンダホーッ! くノ一ビューテホーッ!」
彼は米国大使のライアン・ディアス、この世界でもアメリカ合衆国が建国されたあかつきには、初代大統領に
なる予定の人物だ。ディアスは感動の涙まで流しながら、カガリたちに近づいてゆく。そんな彼にさすがの
彼女たちも引き気味だ。
「マサカ本物ノニンジャトオ会イデキルトハ! 握手トサインオ願イシマース」
「あ、あのー、我らはにんじゃとかくのいちという者ではないのだが・・・・」
忍者やくノ一というのは日本独特の呼び方だ。、ヤツルギ国ではただ単に”影”と呼ばれているだけなので、
カガリが戸惑うのも無理はない。
「な、なあ相葉殿、あの男は一体何者なのだ。カガリたちをまるで偶像崇拝しているようだが・・・・」
「ハクレンさん、彼は、というよりアメリカ人は忍者大好きな人が多いんですよ、、、はあ、そろそろ止めて
きましょうか」
相葉をため息をつきながら暴走気味のディアスを止めに行った。彼はカガリたちのサインと一緒に記念撮影
までしてもらい、テロ騒ぎがあったにもかかわらずホクホク顔であったそうな。三つ子の魂百までも、アメリカ人
の忍者好きは、異世界に行っても通常営業なのであった・・・・
「まさか、マデラの魂浄化が失敗するとは・・・・」
「”穢れた闇の種族”めが、またもやハーネス神さまの御心を邪魔立てするか!」
マイバッハ帝国帝都の一角、秘密のアジトで聖神教純粋派の幹部連中は歯噛みして悔しがる。彼らは
各国の要人であり、普段は何事もないようにふるまっていたが、内心は狂信的な信仰を捨てきれないで
いたのだ。
「まあよい、次の機会を狙おうではないか」
1人が懲りずに次のテロ計画を口にするが、それは叶うことはなかった。彼はその直後、頭から血を噴き
出して倒れてしまったのである。
「な、キール卿、どうしたので、ぐあっ!」
「な、何者だっ!」
アジトに突然乱入した目出し帽を被った男達、彼らは無言でサプレッサー付きの短機関銃で純粋派の
幹部を撃ち倒していった。
「こちらベータ班、”腐ったリンゴ”は全て間引きした」
『了解、後は聖神騎士団にまかせろ。すぐに撤収だ』
彼らは日本政府が派遣した”S”のメンバーだ。晩さん会を襲ったテロリストはその後の調べで、聖神教圏
各国の使節の中に潜り込んでいたことがわかった。地球世界のように、国をまたいでテロ組織が形成されて
いたことに衝撃を受けた日本政府は、早めにその芽を摘むことを決意したのであった。
「相葉首相、マイバッハ帝国内の純粋派アジトは無力化完了です。残党も聖神騎士団に捕縛されています」
「ふむ、これで現在判明しているアジトは全て除去済みですね」
日本政府と、聖神教総本山の動きは早かった。テロ事件の直後教皇ルーデルは純粋派を、
”ハーネス神の御心を曲解する異端者”
と認定し、各国は秘密裏にSの受け入れを許可した。表向きには純粋派の討伐は聖神騎士団が行って
いると発表されている。
「しかし、地球でもそうでしたが、またこの手の連中は出てくることが予想されます」
「はあ、、、そうですねえ、まあ監視の目は緩めないようにしてください」
その後、ガイアードルに居場所をなくした純粋派は、新たに発見された群島に植民を開始した。ルーデルも
これを促した。これにも日本政府の意向が働いている。要は、こちらを闇の種族扱いするのは勝手なので、
迷惑のかからない遠い所に島流ししてしまおう、という目論見だ。その後は日本はもちろん、聖神教圏の
国々も一切関わらないことに決定している。
「日本はすでにこの世界では隔絶した軍事力を保有しています。なのになぜ、新たな兵器開発を行って
いるのですか。もしかして、軍事力による世界征服を企んでいるのではないですか。首相の考えをお聞かせ
願いたい!」
始まった国会では、野党の党首が相葉を厳しく非難する。確かに彼の言う通り、兵器研究などに税金を投入
せずとも当分は安泰と思われた。しかし、相葉には危惧していたことがあったのだ。
「この事は、今ご質問された田代君はもちろん、全ての日本国民が疑問に思うことでしょう。しかし、私は
日本の安全保障に危機感を持っています。それ故兵器開発を怠ってはいけないと考えているのです」
「首相、それはどのような理由でしょうか」
「はい、日本は突然この異世界に飛ばされてきました。今も原因は不明です。そして、これが今後も起こら
ない、という保証はないのです。また、地球や別の世界から国が転移してくるかもしれません。その国が
友好的でなかったら、更には、日本よりも強力な軍備を保有する覇権国家である、という可能性もあります」
「しかし、、、それは話し合いで・・・・」
「あなたは日本が最初にトルード王国と接触した時の悲劇を忘れましたか。あの時、王国が我々より強力
な軍備を保有していたら、日本人は1人残らず殺されていました。地球やガイアードル以外にも別の世界
が存在するという研究結果もあります。その世界がどんな価値観を持っているか不明です。我々政治家は、
日本国民を守るために常に最悪の事態まで想定しなければならないのです」
相葉の言葉は、圧倒的多数の日本人に支持された。日本は今後もステルス機やレールガン、ビーム兵器
などの研究に力を入れるのであった。
「ラスト サムライ」でも「時代に合わないから」という日本人スタッフの
反対を押し切って、米側のスタッフは忍者のシーンを入れたそうで・・・・




