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おまけその七 ヤツルギ国騒動記~不穏な動きの巻


さて、ヤツルギ国の使節が日本に向かっている頃、ハーネス聖神教圏では地下で活動を始めた者たちが

存在した。彼らは”ハーネス聖神教純粋派”と称する連中だ。教義の変更を教皇の名の元に布告したとは

いえ、千年続いた教義に固執する者も少なからず存在する。地球世界でも宗教に関わらず、こうした原理

主義者はいたのであるが、ガイアードルでも同じようなことが起きていたのだった。


「最近の総本山は一体どうしてしまったというのだ。穢れた闇の種族や魔族と和解するなんて」


「その通りだ。ハーネス神さまの御心に背く行いではないか!」


まあ、自分の信じる教義を変えたくないのであれば、それはそれでかまわない。おとなしく引きこもって

くれればいいだけの話だ。問題は、その手の手合いのほとんどが、自分達の考えが受け入れられない

のは世の中がおかしいからだ、などと逆恨みを募らせることだ。世間一般にしてみれば、迷惑この上ない

ことである。


「あんな偽造した日記でウラヌス様から聖人の座をはく奪するとは、総本山はニホンに恐れをなしたのか」


あの調査は聖神教側も立ち合いの元で行われており、結果に疑う余地もないのだが、都合の悪いことは

全て偽造やウソなどと言い張るのも、こうした狂信者の特徴である。なんか、地球でも日本のお隣にそんな

国があったような気もするが、きっと気のせいであろう・・・・


「あのソニアも栄えある聖神騎士団長の座にありながら、ニホンでのほほんと歌い手なぞやっておるそうだ。

なんという不信心者であることよ」


「いや、それより許せんのはあのマデラだ。教皇でありながら事もあろうに闇の種族と結婚するなぞ、これ

こそハーネス神さまに対する最大の裏切りではないか」


彼らの不満は、教義をあっさり変更した聖神教上層部へと向けられていく。そして、とんでもなく斜め上の

方向に思考が向かっていくのであった。


「ふむ、、、もしかしてマデラは闇の種族の邪法に操られているのではないか」


「そうだな、それならば彼女を救い出し、ハーネス神さまに御許(みもと)に送るのも我らの使命だな」


本当に見当違いも甚だしいことであるが、狂信者や原理主義者の思考はこんなものである。話せば

わかる、なんて生ぬるいことは通用しない世界だ。彼らは、マデラを”殉教者”に仕立て上げるべく策謀

を巡らすのであった。


「奥様、そろそろお約束の時間です」


「あら、もうそんな時間、すぐ行くから彼女にそう伝えてくれるかしら」


「かしこまりました」


自分を狙う者がいるとも知らず、マデラは相葉との新婚イチャラブ生活を満喫していた。相葉が聖神教圏

の国々を訪問する時にはファーストレディとして付添い、日本文化の紹介などに努めていた。これはガイ

アードルの人族にも教義の変更を更に印象づけるとともに、未だ根深く残る黒目黒髪や魔族への偏見

払拭に貢献している。これが原理主義者の恨みを買っている一因だ。


「セリア、久しぶりね。ジャンダルムの方は変わりないかしら」


「はい教皇猊下、ルーデル様を筆頭に総本山は改革派の教えを受け入れる者がほとんどです。まあ、不満

を持ち総本山を去った者たちもおりますが・・・・」


すでに教皇を辞したマデラを未だ尊称で呼ぶ女性、彼女はセリア大枢機卿、現在女性では聖神教の最高位

にある人物である。


「いやだわあセリア、私はもう教皇じゃないのよ。ルーデル様に悪いじゃないの」


「はい、聖神教の教皇猊下はルーデル様です。しかし、こちらにつきましてはマデラ様を教皇猊下とお呼び

したいのですが・・・・」


「あらあら、まだ教皇の座から降りられないのね。まあ仕方がないわあ」


その瞬間、彼女らの雰囲気が一変する。


「それで教皇猊下、”例のもの”でございますが」


「はいはい、ちゃんと揃えてあるわよ」


「おお、これが新たな”経典”、聖都の信徒たちにもしかと伝えますゆえ」


聖職者とは思えないゲスイ笑顔で言葉を交わし合う彼女たち、その”経典”とはマデラ直々に東池袋で

仕入れた・・・・


『BL本』


の数々であった・・・・


【悲報】 ハーネス聖神教が、腐った教えに傾いている件について


マデラは外務省の高橋の影響で、あちら側に転向してしまったらしい。そしてかつての部下を通じて日本

文化紹介の名目で、日々BLの布教に努めているのであった。素朴な信仰の生活を送っていた聖都の

女性司教や司祭たちは、たちまちその魅力に取りつかれてしまったという訳だ。今では一般の女性信徒

にも密かに、しかしパンデミックのごとく広がりつつあるのであった。


そして後世マデラは「びいえる教」の初代教皇として、聖人(腐女子限定)に認定された。後で真実を知って

しまった相葉は、


”こんな日本文化、なぜ広めたんだ・・・・”


と頭を抱え、激しい胃痛に襲われたそうな。真にご愁傷様である。


「ところで、ソニア様は相変わらずで・・・・」


「そうなのよ、ソニアったら”男同士の恋愛ものなぞ、どこがいいのですか”と言ってとりつくしまもないのよ」


すでにケモナーとして覚醒してしまったソニアは、BLの魅力を力説するマデラをまるで生ゴミでも見るような

目で見ていたそうだ。そしてやがてガイアードルの人族は、”BL派”と”もふもふ派”の2大派閥に分かれ、

後に世界を揺るがす火種となっていく・・・・


のかは、神のみぞ知るところであった。


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