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おまけその三 ヤツルギ国騒動記~開国の巻


「これはこれは、ムラカミ殿と申したか、ご丁寧な挨拶いたみ入る。(それがし)はヤツルギ国総軍奉行、ビゼンと

申します」


「貴国はヤツルギ国という国名でしたか。本来ならば事前にご連絡を入れなければいけないところでしたが、

突然の訪問になってしまい申し訳ございません」


「いや、我らも貴国の巨大船に気が動転してしまいましてな、このような物々しい出迎えになってしまった

こと許していただきたい」


「いやいや、とんでもございません」


「いやいやいや、こちらこそ申し訳ない」


そうお互いにペコペコ頭を下げながら言葉を交わす村上とビゼン、他の国どころか別世界の人間なのに、

どーみても日本人同士としか思えない会話が展開されていた。


「村上さん、そろそろ本題に・・・・」


「ビゼン様、挨拶だけで日が暮れてしまいますぞ」


なかなか進まない会話に周囲が促すが、


「あ、これは失礼いたしました。私としたことがとんだ失礼を」


「いや、某も同様でござる。ムラカミ殿が気にかけることではないぞ」


「いやいや、とんでもございません」


「いやいやいや、こちらこそ申し訳ない」


そう元に戻ってしまう村上とビゼン、周囲はそれを苦笑して見ていることしかできなかった・・・・


「なるほど、貴国は我が国と国交を結びたいと」


「はい、それで貴国の外交担当者とお話しさせていただきたいと思いまして」


「うむ、それではその旨城中にも連絡するゆえ、しばし待たれよ」


やっとこさ本題に入ったこの2人、ビゼンは名代のムラクモに報告するため、一旦城中へと戻った。


「そうか、我が国と国交を結びたいと、、、、してビゼン、そなたは彼らを見てどう思った。率直に答えては

くれまいか」


「ははっ、どうも同じヤツルギ国の民と話しているような感じでしたな。我らに危害を加えるような素振りは

全くございませぬ」


「よし、そちの眼力信用するとしよう。明日の午後に会見をすると彼らに伝えよ」


「ムラクモ様の仰せのままに」


ビゼンはムラクモの返答を村上たちに伝えた。


「ありがとうございます。ところで、その際日本の紹介をするための装置、、、、まあカラクリの持ち込み許可

を頂きたいのですが」


「それは、どのようなものじゃ」


ビゼンの質問に村上はタブレットを取り出し操作する。画面には桜の花や富士山などの動画が再生された。

それにヤツルギ国からは”おおっ”とどよめきが上がる。


「これを大きくしたようなカラクリで、大勢でこの動く絵を見ることができますです」


「・・・・貴国は、何とも摩訶不思議な道具を所有しておるのう。わかった、(それがし)からも話は通しておく」


「ありがとうございます」


そして翌日、日本国使節一行はジオウ城へと案内された。前日は万が一の攻撃に備えて最小限の人数で

交渉したのだが、その心配はなさそうと判断し、女性を含む30人ほどの大所帯での訪問となった。


「それでは皆様方、ここからはお履物を、、、、すでに脱いでおりますな・・・・」


「履物はこちらに入れておけばよろしいですか」


「う、うむ、、、、それにしてもよく、ここからは履物を脱ぐとわかりましたな」


「ええ、日本も同じですから」


ビゼンがここからは土足厳禁と言うまでもなく、使節一行は靴を脱いだ。ほとんど日本風な造りの建物の

ため、欧米人がよくやらかすテンプレ行為など起こすはずもない。


「いやあ、それにしても外観だけでなく、中も姫路城にそっくりですね」


「ムラカミ殿、ニホンにもこのような城が建っておるのか」


「はい、400年ほど前に建設され、今は国宝、つまり国の宝として保存されております」


その他にも現存する江戸時代の天守閣は、全てが国宝か重要文化財に指定されている。ともあれ一行は、

名代ムラクモが待つ広間へと入っていった。


”ふむ、、、、確かに我らと同じ黒目黒髪であるな。それに畳にも全然驚いた様子がない。彼らは我らと同じ

文化を持っているのか・・・・”


ムラクモは畳の上に正座する使節一行を観察する。実は彼らもこうなることを予想して、禅寺で正座の特訓

を受けていたりする。


「日本国の使節よ。遠いところを大義であった。余がヤツルギ国名代ムラクモである」


「会見の機会を頂き光栄のいたりです。私は日本国外務省の村上と申します」


お互いの挨拶から始まり、まずはムラクモがヤツルギ国について簡単に説明する。日本側が驚いたのは、

彼らがガイアードルをハーネス聖神教からの弾圧を受けて逃れた者たちの、子孫であるということだった。

苦難の航海の末、この新大陸にたどり着いたのは約半数であったという。その後は新天地で国造りに励み、

現在にいたるという訳だ。


「では、日本国の説明をさせていただきます。まずはこちらをご覧ください」


日本側はプロジェクターやスクリーンをセットし、DVDの映像を流して説明に入った。事前には聞いていた

ものの、実際に動画を見たヤツルギ側の驚きは大きかった。


「なんともはや、、、、一体全体どんなカラクリなのやら、想像もつきませんな・・・・」


「建物も、妙にシャチホコばったものがあるかと思えば、寺院などは我が国に良く似ておりますな」


「ヒメジ城なぞ、このジオウ城とそっくりですぞ!」


DVDを見終わったムラクモは、村上に質問する。


「このカラクリといい、巨大船といいそなたらの道具はとてもこの世のものとは思えぬ。正直に答えてくれ。

一体そなたらは何者だ。この世の者なのか」


「ムラクモ様、当然の疑問でございます。我が国は元々この世界に存在していた国ではございません」


村上は、日本は別世界から移転してきたこと。当初はハーネス聖神教とも衝突したが今は講和し、聖神教

も教義を変えたこと、魔界とも友好国になっていることなどを説明した。


「少なからぬ犠牲は払いましたが、今は平和な状況になっております」


「・・・・そうか、そなたの言葉に偽りは感じぬ。わかった、我がヤツルギ国はニホンと友誼を結ぶこととしよう。

詳しいことは次の会見で話し合おうではないか」


「ありがとうございます。ムラクモ様のご英断に日本国を代表して、感謝いたします」


日本とヤツルギ国の、友好の歴史が幕を開けた瞬間であった。


おまけと言いつつ、結構真面目に書いてしまった・・・・

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