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エピローグ 魔王様は今日も胃がストレスでマッハ(死語)です


資料を見るワンゲルの額から、タラリと冷や汗が流れはじめる。彼の縁談のお相手として名が挙がったのは

天皇陛下の孫娘、つまりは内親王さまである。政略結婚の相手に日本側は、最強のカードを出してきたの

であった。


「し、しかしムトウ殿、確かニホンの皇族は他の民族とは結婚しないはずではなかったのか」


「はあ、それがですね・・・・」


ワンゲルは、日本の皇族の知識を持ちだして何とか円満に断ろうとした。しかし、それははかない抵抗で

あった、、、、


「天皇陛下が、”日本も異世界に転移して新しい時代を迎えたのであるから、皇族も変わらなければいけ

ない”と、反対意見を押し切りまして・・・・」


「物分り良すぎるだろ天皇陛下!」


第二次大戦後アメリカ人女性の家庭教師から薫陶を受け、歴代の天皇として初めて民間人の女性と結婚

された現陛下は、柔軟な思考の持ち主であった。しかし、ワンゲルはなおもむなしい抵抗を試みる。


「だがなムトウ殿、我は良くても相手の方はどうなのだ。深窓のご令嬢が魔王の妻など嫌がるのではないか」


「ええ、実はこの縁談、内親王さまが言い出したことでして・・・・」


「はあっ!」


宮中の晩さん会でワンゲルと会った内親王さまは、彼に一目ぼれしてしまったらしい。そして、その想いを

とうとう押えきれなくなり、皇太子さまや天皇陛下に直訴。当然宮内庁は”前例がない”と猛反対したのだ

が、陛下は”前例がないのなら、私の時のように作ればよいではないか”と一喝、相葉や政府首脳も了承し、

現在に至るという訳であった。


「それから、ワンゲル陛下に天皇陛下からの親書がございます」


そう言って武藤は菊のご紋章が押された漆塗りの箱を取り出した。恐る恐る親書を読みだしたワンゲルの

表情は、アンデッドのごとく青ざめていった。格調高い文章ではあるが要約すると、


”可愛い孫娘の希望をかなえてやりたいので、よろしくね。まあワンゲル陛下のお気持ち次第ですが”


と記されていた。こうして、ワンゲルの外堀は着々と埋め立てられていったのである。


「ムトウ殿、もしこの話を断った場合はどうなるのか・・・・」


「別に、日本と魔界との関係はこれまで通りです。しかし内親王さまはさぞかし嘆かれるでしょうし、それを

知った時の国民感情がどうなるか、想像もつきません」


凍りつくワンゲルに、同席していたガレアスやピコリーナからも追撃が加えられた。


「魔王さま、これは受けなければ、魔界の存亡に関わる案件ですぞ」


「魔界が発展するか、滅亡するかの分かれ道なのですぅ。もう、おとなしく身を固められるしか道はないの

ですぅ」


「う、ううっ、、、胃が、胃があっ!」


2人の言葉を聞いたワンゲルは、今まで体験したことのない胃痛に襲われ悶絶する。


「ワンゲル陛下、大丈夫ですか!」


「胃薬も効かないのですぅ!」


慌てる周囲をよそに、ワンゲルの意識は遠くなっていった・・・・


「・・・・陛下、ワンゲル陛下大丈夫ですか!」


「はっ!」


「良かった、ずいぶんとうなされておいででしたよ」


ワンゲルが目を覚ますと、そこには心配そうに見ている女官長のマリサがいた。


「はあ、はあ、、、ずいぶんと悪夢を見ていたような気がする。ところでマリサよ。そなた確か結婚退職した

のではなかったのか」


「は、、、、誰とですか」


「いや、ニホンのムトウ大使とだが」


「ニホン、ムトウ、、、何ですかそれは?」


マリサは首を傾げる。どうやら本気で知らないようだ。


「すまぬ、どうやら勘違いをしていたようだ。そうか、あれは全て夢だったのか。そうだな、異世界から国が

転移してくるなど有り得ぬからな」


ワンゲルはくっくっく、と魔王らしい笑みをこぼす。そして彼は身支度を整えると、定例会議の場へと向かって

いった。


「リグレットの軍に動きがあります。まーたちょっかいをかけてくる気ですかな」


「ふん、こしゃくな奴らめ、ワンゲル陛下、どうか人族を殲滅する許可を!」


「人族なぞ、ことごとく燃やし尽くしてやるのですぅ!」


怪気炎を上げるライドルやピコリーナなどの家臣たち。いつもなら胃痛を覚えるところなのだが、今日は

なぜかこの事にほっとするワンゲルであった。


「まあ、そなたらの気持ちもわかるが、人族全部が結集したら今の魔界も大被害を受けるからな。まずは

国力の充実を・・・・」


「会議中失礼いたします。港町アイゼンの執政官殿から緊急の連絡が入りました!」


ワンゲルがいつものように血気に逸る家臣たちをなだめようとした時、伝令が入室した。何だかイヤーな

予感に襲われるワンゲル、そして、それは不幸にも大当たりしてしまう。


「アイゼンに人族の使節が国交を結びたいと、現れました」


「ま、まさか、、、、その人族は”黒目黒髪”ではないか」


「はい?、、、、陛下なぜご存じで」


ワンゲルの全身から、冷や汗やら脂汗だかがドバーと流れ始める。彼は一縷の望みを賭けて尋ねた。


「その国は、”ニホン”ではないよな。そうだろ、そう言ってくれ!」


「いえ、”ニホン”と名乗っていましたが、、、、陛下、どうなされたのですか!」


国名を聞いたワンゲルは、そのままバタンと後ろに倒れた。会議室はてんやわんやの大騒ぎになって

しまった。大魔王ワンゲル14世、彼の受難の日々はこれから始まるのであった・・・・


本編これにて完結です。あと数話ほどおまけを投稿する予定です。

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