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第20話 或る日の魔王城


日本、魔界、ハーネス聖神教圏の講和が成立したガイアードル、魔王城にも久々に穏やかな時間が流れ

ていた。城内の大広間では、地獄の番犬と恐れられるケルベルスがぐでーと寝ころんでいる。彼は着物

姿の女性にもふられて気持ちよさそうにだらだらしていた。


「ソニアよそなた、、、、一体何をやっているのか」


「これはこれは魔王様、見ての通りケルベロスのけーちゃんをもふっているところですよ」


”はあ”とため息をついたワンゲルは、でかい狼ーフェンリルをもふっているもう1人の女性に声をかけた。


「キミジマ殿、そなたは一体何をやっているのかな」


「あら、見ての通りフェンリルのふーちゃんをもふっているところですよ」


捕えられたソニアの担当を務めたのは君島だった。彼女は当初聖神教の教義を振りかざすソニアに対し、

”盲信的にならず、自分の頭で考えなさい”と諭したのであった。その後親交を深め、今ではすっかり気の

おけない友人同士である。もふりの魅力も君島から伝授されたらしい。


「うう、、、ヒトミのもふもふは我だけのものなのに、、、、」


柱の影からライドルがハンカチをギリギリと噛みしめながら、醜い嫉妬をさらすのも魔王城の日常的な

光景となっている。フェンリルはそんな彼の方を向いて、フンっと鼻を鳴らす。それにますますライドル

は嫉妬心を募らすのであった。


「あのなあ、そなたらこの魔王城にただ単にもふりに来ただけか。特に用もないなら外でやってくれぬか」


「陛下、それは失礼いたしました。本日は魔王城の方々にこの招待券をお渡しするのが目的でして」


「む、これは、、、、”第一回 魔界演歌大フェスティバル”とな」


「ええ、演歌界の総力を挙げて実施いたします。ぜひ魔王城の皆さまにも足をお運びいただければと」


実は今、魔界では空前の演歌ブームが巻き起こっていた。演歌独特の情念、耐え忍ぶ心などが魔界の

人々の琴線にドストライクだったらしい。先日も新進気鋭の若手演歌歌手が単独コンサートを開催し、

大好評を博したのも記憶に新しいところだ。


「今回は、キタジマ先生始めレジェンドの方々も来訪される故、ぜひご参加いただきたい」


「そうか、まあ特に懸案事項もないし、皆で参加するとしようぞ」


「ありがとうございます」


しかし、ソニアの用件はそれだけではなかった。


「実はワンゲル陛下にお願いがございまして、ニホンのムトウ大使殿と面会をお願いしたいのです」


「ほう、ムトウ殿にどのような用があるのだ」


「はい、実は・・・・」


「ふむ、、、、それは魔界にとっても益あることだな。わかった、ムトウ殿に取り次ごう」


とりあえず、ワンゲルの胃痛を呼び起こす案件ではなかったようで、彼はソニアの要望を快く承諾した

のであった。


「首相、観測衛星の探査によりますと、この世界には他にも3つの大陸が存在することが判明いたしました」


「ほう、そうですか、それで文明の存在は確認できましたか」


「はい、内2つの大陸には文明が存在しています。特に、この大陸の文明は興味深いです」


「なるほど、、、これは使節を送りたいところですが、まずは海路の安全を確認してからですね」


「はい、現在海上自衛隊による調査が行われています。2か月後にはこの大陸への安全な海路が確定

できる予定ですよ」


なお、文明の存在が確認できない大陸については、この世界でも建国を希望しているアメリカに譲渡する

方向で話が進んでいる。ガイアードルでも日米同盟は堅持していく予定だ。ただし、こちらでは日本主導

で、ということになるが・・・・


「ま、あちらさんも日本の援助なしでは建国しても国の維持は成り立たないですからね。せいぜい恩を

売っておきますか」


「ははは、正にパックス・ジャポニカの実現ですな」


相葉たちは、転移直後の絶望感から、日本の将来に希望の光が射しこんできたことに安堵の息を漏らし

ていた。しかし、往々にしてこんな時に想定外のことが起きたりするのだが、彼らはまだそのことを

知らない・・・・


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