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第17話 姫騎士のジョブチェンジ


「教皇猊下、またお食事を残されて、、、、少しはお食べになられないと、お体にさわりますよ」


「うう、、、いらない・・・・」


ため息をつく女性司祭をよそに、教皇マデラはベットの中にもぐりこんでいた。連合軍の大敗北と、自身の

半身とまで信頼していたソニアまで捕虜になったことで、ショックのあまり寝込んでしまったのだ。


「猊下、敗れたとはいえソニア様や各国の王、騎士や兵士たちも命は落としていないのでしょう。きっと

また、聖都に元気なお姿で戻ってこられますよ」


「うう、、、だから心配なのです」


「え、何がですか?」


「だって、ソニアは美人でしょう」


「ええ、確かにハーネス様の守護天使とまで讃えられておりますね」


「だから心配なのです。きっと今頃は闇の種族や魔界の者に、(ピー)や(ピー)なことをされているんじゃ

ないかと、いえ、きっと(ピー)なこともされて、”くっ殺せ”と言っているに違いないわ!」


そうのたまうマデラに女性司祭は、”何言ってんだこのポンコツ教皇”と内心思ったのだが、不敬になるので

かろうじて口にはしなかった。


「失礼いたします。ニホンの魔導具が入手できました。現在総出で動作確認を行っております。恐れながら

教皇猊下にも立ち会いをお願いいたします」


「私は、、、いいです」


渋るマデラを女性司祭と使いの者は何とかなだめすかして、大会議室まで連れていくのであった。室内

ではすでに(くだん)の魔導具が設置され、各国の首脳や司教たちがあーでもない、こーでもないと配線

の確認を行っている。


「・・・・なんですか、この黒い板は」


「何でも”てれび”とかいうらしいですよ。遠くの物の映像を映し出すそうです」


テレビにはご丁寧なことにアンテナやソーラー式のバッテリーなども同梱され、彼らは説明書を見ながら

セッティングを完了させた。


「この説明書の紙、恐ろしく上質ですぞ」


「この白いクッションや透明な袋、一体何からできているのか想像もつきませんな」


発泡スチロールやビニールなどは、ガイアードルにとって未知の素材である。彼らも薄々と、日本の持つ

力に気がつき始めていたのであった。


「では、このスイッチを入れると映像が出るとのことですが」


「おおっ! 本当だ、音声までもまるでこの場にいるようですぞ」


たまたま映った番組は天気予報だった。その後にニュース、バラエティなどの番組が続き、彼らは初めて

のテレビにどんどん引き込まれていく。


「おっ、次は、、、」


「これは歌ですね。歌い手を見せる映像ですか」


ロックバンドやアイドルなどが繰り広げる華やかなステージに、聖神教の敬虔な信徒である彼らも心を

奪われかけていた。これも日本側の狙いの一つだった。中世水準の彼らに現代の娯楽を普及させ、言い方

は悪いが教義にこり固まった彼らを堕落させることが目的だ。


「ソニアも、歌がうまかったですねえ、、、、」


「ええ、あの出陣式の時の聖歌には、私も心が震えてしまいましたぞ」


そんな話がフラグとなってしまったのか、番組内の司会者の次の言葉にマデラはじめ全員、


『続いてのゲストは、異世界人初の演歌歌手としてデビューした、ソニア・ヴィットさんです』


「「「「「「ブフォッ!」」」」」」


吹き出してしまった。


「そ、ソソソソソソ、ソニアっ! あなた一体何をやってるんですかあぁぁぁぁぁっ!」


「教皇猊下、ゆすらないでください、てれびが壊れてしまいますぞ!」


そして、着物姿のソニアが静々と登場すると、取り乱したマデラはテレビをガクガクとゆさぶり、周りの者

から慌てて止められていた。


『ソニアさんは、どうして演歌の道に入ろうと思われたのですか』


『はい、これまで信じていたものが崩れ途方に暮れていた私は、ある時偶然テレビの歌番組でヤシロ先生の”舟歌”

を耳にして天啓を受けたのです。これこそ、人の情を現した真の聖歌であると。その後もキタジマ先生、ミソラ先生の

歌を知るにつれ、つたないながら私も同じ道に進みたいと思ったのです』


『ありがとうございます。ではソニアさんに歌っていただきましょう。デビュー曲、”異世界おんな道”です!』


そうして、ソニアは切々と歌い出す。


”あれほど想いあっていたのに、離れてしまった2人の道、あなたは私の手の届かぬ人、でも、想いは必ず通じ合う

もの、再び出会えるその日まで、ああ、異世界おんな道”


「ほう、これは心に染み入る歌ですな、、、、教皇猊下、どうなされたのですか!」


ソニアの歌に聞き入っていた周りの者たちは、マデラを見て驚いてしまった。なぜなら、彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃ

になっていたから。マデラは理解したのだ。これは自分のことを歌っているのだと。ソニアは自分のことを、今でも大切

に想っていてくれているのだと・・・・


「うう、、ソニア、ソニアぁぁぁぁぁっ!」


ソニアの歌を聞きながら、マデラは慟哭する。その2日後、ハーネス聖神教圏の国々は教皇マデラの命のもと、日本と

魔界との交渉に入ることを宣言するのであった。


閑話休題


その後、”異世界おんな道”は演歌として異例のトリプルミリオンを獲得した。ソニアは各音楽賞の新人賞を総ナメにし、

異世界人として初の紅白出場を果たすのだが、これはまた、別の話である。


演歌は日本人のソウルミュージックです。

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