国王の強行
「それで、勇者タクミよ。突然ですまないが、彼女たちと別れてはくれぬか」
国王は言う。オレになにも躊躇もなく。
「国王。貴方がそれほど強引にするということはつまりそれだけの事態なんですね」
国王は無能ではない。偉く寛大でその上賢い。この国王が言うのだから間違いなく、魔王レベルの話なんだろう。けれど、オレは――、
「一つ。確認させてください。仮に、オレがこの話を断ったらどうなるんです?」
納得できないのだ。
「無論、勇者であるお主も例外ではない。拘束して無理やりにでも封印する」
そうか・・・。
「タクミさん・・・」
心配そうな顔でクラリア姫がオレを見る。
「はあ」
溜息一つ。
この溜息は国王の用意周到さに対しての溜息だ。
オレは目の前のクラリア姫を見て、それから不安そうな顔でこちらを見る幼女三人をみる。そしてアーチでも作るように並ぶ鎧を着た兵士達を。
ここにいるオレとルナ、ルーチェ、ネベラ以外は全て王の計算のうちで動いている。
よくよく考えてもみろ、いくら来客が来たとは言えこんなにもアーチを作るほど兵士を並べるか?ありえなくはないが普通はそうはしない。ましてや自分で言うのはなんだが、信頼における勇者であるオレを警戒する必要はない。
逆に言えばその必要があるということだ、つまりこの兵士はオレが断った時に、オレ達を取り押さえるために配置したという訳だ。
それに、クラリア姫の告白だってそうだ。オレが同意するように仕向けたからこのタイミングなのかもしれない。考えすぎかもしれないけれどその可能性もある。
他にもいろいろ用意してありそうだ・・・。
「国王」
静かにオレは国王を呼んだ。
「どういしてくれるか?」
問う国王にオレは――、
「悪いな・・・、フォーメンションA」
そう言った。
ルナが光となり武器の形へと形を変える。