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月下美人

「おにいちゃん」

ルーチェがオレの服の裾を強く両手でぎゅっと掴む。

「大丈夫だルーチェ」

「そうよ、私達が居るから大丈夫よ」

オレに加えルナも言う。

けれど、ルーチェは首を横に振る。そうじゃないと・・・。

「違うの」

違う?

っとその時、何者かの気配がする。

「我が主どの」

「ああ」

目の前の深い森の入口から何か地面に引きずるような足音と共に誰かが歩いてくる。

「誰だ!?」

オレが威嚇をして問う。

その者は、いや人影は二つある。

その者たちは答えず、真っすぐオレ達の前へと歩き――そして、深い森から出て。月明かりが二人を照らす。

「あんたら・・・」

一人は軍人を思わせる硬い雰囲気をしてしており、それとは引き換え顔つきは若さと鋭さを持った顔立ちのアンバランスな青年で、なにより特徴なのは黒い長丈のトレンチコートで左腕が本来なら通っているはずの袖がヒラヒラと夜風に舞っている。それはつまり、彼の左腕がないことを示していた。

そして、その腕のない青年の右側に、ルナと同じほどの十~十二歳ほどの幼女。腰ほどまである長い金髪でこのファンタジーじみた世界に似合わない白のキャミソールに紫のだぼっとしたパーカを羽織り、黒のミニスカートを少女には少しおおきだろうと思える二本のベルトをクロスさせ止め、そのベルトの左右、腰の部分には革製のホルスターがついていた。そのホルスターには月明かりに照らされ、蒼銀に光を反射させる――明らかに拳銃が左右収められていた。

「マスター。まだいるみたい」

美しく、童顔で凛々しく見える月下美人を思わせる表情で金髪の幼女が、青年に向けて言った。


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