第1話
5話完結の短めの話です。
よろしくお願いします。
私は幼い頃から不思議な夢を見ていた。
ひどく断片的ではあったけど、物語のようにみえるその夢は誰かの人生のようなモノだと感じた。
誰かの生活を体験しているような不思議な感覚だった。
5歳になった今もその断念的な夢は続いていて、寝るのを楽しみにしている。
「ジョーンくんがエマの婚約者になるんだよ。エマは王妃になるんだよ。」
7歳になった私にある日、お父様が、男の子を連れて私に言ってきた。
そのジョーンと言われた男の子は、私の国の第1王子で、次期国王になる予定の子だった。
「私はエマと申します。ジョーン様よろしくお願いします。」
婚約者がいることは、知らされていた私は『あぁこの子がそうなのね』と特になんとも思わず笑顔で自己紹介をした。
この国では、婚約者が小さい頃からいることは普通で、恋愛結婚する貴族はほとんどいない。
生まれる前から婚約者がいることもあるのだ。
「俺はジョーンだ。よろしくな。エマ。」
ジョーン様は握手を求めてきたので、握手をした。
それから3年が立ち、私は10歳になった。
今でもあの不思議な夢は見ている。
夢に出てくる女の子は、私より全然大きい。
見始めた頃はそんなに変わらなかったのに。
ジョーンは、よく遊びに来る。
いつの間にか私はジョーンのことを好きになってた。
ジョーンとは手紙のやり取りも密にしていて、ジョーンは私のことを恋愛的に好きじゃないとしても、一応の婚約者として大切にしてくれていると思う。
だって、よく遊びに来てくれて、手紙をくれて、あそこに行こう、ここに行こうと外にも連れてってくれる。
嫌いな人にそんなことはしないよね?
「ジョーン!見て!とっても綺麗なの!」
13歳になった今でも、ジョーンは私を大切にしてくれているのは、変わらない。
不思議な夢を見ているのも変わらない。
花畑に連れていってくれて、思わず花畑まで走っちゃった。
はしたないって思われないといいな。
他の貴族たちの前では、きちんと貴族の娘としての立ち振る舞いをできてはいるけれど、ジョーンのまえだと素がでちゃう。
でも、そんな私をジョーンは愛しそうに見てくれるから、中々治らない。
「エマは可愛いなぁ~。」
小さく呟いたジョーンの声は私の耳には聞こえなかった。
「そんな楽しそうに笑うのは俺の前だけにしてよ?」
近寄ってきたジョーンは、そんなことをいいながら、チュッと私の額にキスをした。
私は真っ赤になって、ジョーンを見る。
ジョーンは、いつも余裕そうだ。
きっと、私のことを妹のように思っているんだろうね。
だって、いつも額にキスするから。
口にされたことなんて1度もない。
私より3つも上だし、ジョーンは大人っぽくて、私が子供ぽいから。
でも、いいの。
ジョーンの隣に居られるなら、妹のように思われていても。
婚約者であり、いずれ結婚するのな変わらないから。
それだけ長い時間があれば、いつか、私のことを好きになってくれるはずだ。
ジョーンのことが年を重ねるごとに好きな気持ちが増していく。
私はジョーンのお嫁さんになるのだと信じて疑わなかった。