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桃猫太郎  作者: 桃苗
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お供たちとぼく

 しばらくして犬が舟を見つけて帰って来ました。するとどうしたことでしょう。桃太郎を間にはさんで猿と(きじ)、みんなかたまって眠っています。

 

 「へえ。桃助の奴、ちゃんと猿と雉のけんかをおさめることができたんだな。大将らしくなってきたな。よしよし。それにしてもこいつら、俺だけ働かせてのんきな顔で寝やがって。やい、起きろ」


 犬は雉を鼻先で突っつきました。


 「ふわあ。これは犬さん。おかえりなさい。舟は見つかりましたか」

 「ああ。ちょっとここからはなれた浜辺に捨ててあった。ぼろいが穴はあいてない。使えるぞ。猿とは仲直りしたのか」

 「え、それは良かったです。ええと仲直りしたんでしょうか。猿さんと口げんかしていたら、桃太郎さんがすやすやと寝ていて。なんだかほほえましくて、猿さんと一緒に桃太郎さんのかわいい寝顔をのぞきこんでいたら、こっちまで眠くなってきちゃいまして」


 雉の答えに、犬はあきれてふんと桃太郎を見下ろします。

 桃色と白のしま模様をした小さな猫は丸まって気持ち良さそうに眠っています。ぷすうぷすうと鼻が鳴って鼻ちょうちんができています。


 「俺が求めてる大将の姿って、そういうんじゃないんだけどなあ」

 「まあいいじゃない。おいら達がついて行きたい相手が大将だよ。かわいくって守りたいのが大将でもありじゃないの」


 ふわああ、良く寝たとのびをしながら猿が立ち上がります。


 「じゃあ、ちょっくら舟を取って来ようか。犬さん、そこまで乗せてよ。雉はここで待ってなよ。何かあったら、君の大声で知らせてくれよ」


 猿に偉そうに決め付けられて、雉はちょっとむかっとしましたが、順当な割振りなので素直に従いました。



 さて、時間はたち、夜になりました。舟に乗って出発です。


 「私は鳥目って言われているだけあって、何も見えません。お役には立てませんよ」


 雉は早々に戦力外であることを申告すると、船尾に陣取ってしまいました。なんだか舟が後ろに傾いた気がするのは、気のせいではないでしょう。


 「まあ、(かい)をこぐのはおいらと犬さんだろうね。桃ちゃんは舳先(へさき)で、水先案内をお願い」

 「はいっ」


 桃太郎は元気よく返事すると、舳先にぴょんと飛び乗り行儀(ぎょうぎ)良くお座りしました。真剣な様子で前方に目をこらします。その姿を犬と猿はにやけ顔で見ながら、舟をこぎ出しました。

 暗闇にまぎれて舟はこっそりと鬼ヶ島に近付きます。島はひっそりとして物音一つしません。鬼たちは皆眠っているのでしょうか。桃太郎の先導で、舟を隠せそうな岩がある入り江に舟を止めました。

 皆が島に上陸すると、犬はちょっと見て来ると闇に紛れて偵察(ていさつ)に出てしまいました。桃太郎も一緒に行きたかったのですが、「大将は後ろに控えてるもんだ」と止められてしまいました。

 猿は岩に腰掛けて眠ったのか目をつむっています。雉はきょろきょろと辺りを見回してから、不安そうに桃太郎にすり寄って来ました。


 「さてどうしましょう」

 「どうもしないよ。犬さんが戻るのを待って、それから考えるよ」

 「鬼を退治するんですよね」

 「うん」

 「私たちにできるのでしょうか」

 「しないと家に帰れないもん。おじいさんとおばあさんを村へ行けるようにしてあげるんだから」

 「そうですか。お二人とも喜んでくれるでしょうね」


 雉と話していると、眠ったのかと思われた猿が急に話に割り込んで来ました。


 「じいさんとばあさんが村へ行けなくなったのは鬼のせいなのかい」

 「そうじゃないけど」


 桃太郎は口ごもってしまいました。誰のせいかと聞かれたらそれは桃太郎のせいなのでしょう。桃太郎の毛の色を村の人たちに馬鹿にされたからです。


 「言いたくないのなら無理に言わなくても大丈夫ですよ」


 雉が優しく桃太郎の顔を突っつきます。


 「それでもおいらは聞きたいね。仲間なら」

 「違うでしょう。そこは聞かないところでしょう。仲間なら」


 猿に雉が言い返します。


 「そうかなあ。仲間なら隠し事なんてすべきじゃないと思うけどな。おいらは」

 「仲間だって言いたくない話は隠しておく権利があると思うんですよ。私は」


 雉はいらだったように声が大きくなります。


 「おい、静かにしろ」


 そこに犬が帰って来ました。


 「鬼はどうやら洞窟(どうくつ)に住んでるらしい。姿は見えなかったが、奥にはいるようだ。まだ俺たちがこの島に着いたのを気が付いてない。だからってこっちから大声出して居場所を教えてやるのは間抜けな話だぞ。お前らけんかはもう終わったんじゃないのか」

 「けんかじゃありません」


 雉はふくれっ面してそっぽを向いてしまったので、猿が答えます。


 「桃ちゃんが鬼退治に出た理由を聞いてたんだよ」

 「へえ、そりゃあ俺も聞きたいね」

 「だろうね。だけども全部は言いたくないみたいでさ、肝心(かんじん)な所はまだなんだ。それを聞こうとしたら雉が聞くなって言い出したんだよ」


 へえ、と犬はしっぽをだらんと下げている桃太郎をじろじろ見ました。


 「なあ桃助。この中で人間と暮らしたことがあるのは、俺とお前だけだ。だから人間との間で何か嫌なことがあっても、猿と雉には分からないだろうよ」

 「何言ってるんですか、分かりますよ」

 

 雉が今度は犬につっかかります。


 「はあ。つまりはさ、お前の話を聞いても、猿と雉はお前と同じことを考えるとは限らないってこと。それは俺もだぞ。俺は人間と暮らしてたけど、ご主人様と猟犬だからな。上下関係がある。お前みたいに家の子供として育てられたわけじゃない。つまり、お前が言いにくいと思っている話をしたところで、お前とおんなじ気持ちになるとは限らないってことだよ。まあ、(あらかじ)めそうだと分かっていたら話しやすくはないか」



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