ぼく出発
桃太郎は鬼がいると聞く鬼ヶ島へ鬼退治に行くことにしました。おじいさんとおばあさんには止められましたが、桃太郎の決心はかたかったのです。
「無理しないで、つらかったら途中で帰って来るんじゃぞ」
おじいさんに言われても、桃太郎はそうやすやすと帰って来るつもりはありません。黙って尻尾を左右に振って答えます。
おばあさんはそんな桃太郎の様子をほほえましく思い、目を細めながら、桃太郎の腰に力の出るきびだんごを入れた袋をくくりつけてくれました。
二人と別れて、桃太郎がしばらく行くと、前から犬がやって来ました。
下を向いてとぼとぼ歩いて来ます。
「こんにちは。犬さん、どちらへ」
「追い出されたんだよ。俺は鼻をやっちまってね。もう猟犬として役に立たないからいらないんだと」
「そうなの。じゃ、ぼくと鬼ヶ島に行かない」
犬は桃太郎より大きいし、猟犬をしていたなら強いはずです。桃太郎が誘うと、犬はうむと考え込みました。すると犬のお腹がぐうっとなりました。
「昨日から何にも食べてないんだ」
「それは大変。ぼく、おばあさんのきびだんごを持っているんだけど」
桃太郎は犬にきびだんごを分けてあげました。すると犬の鼻が治りました。
「よしきた、俺も一緒に行ってやろう」
こうして桃太郎は犬と一緒に鬼ヶ島を目指すことになりました。
二匹がしばらく歩くと、今度は猿があくびをしながら歩いて来ました。
「こんにちは。猿さん、どちらへ」
「群れを追い出されたんだよ。おいらはとっても不器用でね。なぜなら指が思うように動かないんだよ」
見せてもらうと、猿というものは人の手に似たような五本の指を持っているはずですが、指同士がくっついていてうまく開かないようです。
ですが、確かに猿としては不器用でしょうが、猫である桃太郎と犬の手に比べたら器用に動きます。何しろ気づかぬうちに桃太郎の腰にあった袋からきびだんごをくすねて頬張っているくらいですから、きっと何かの助けになるでしょう。
「そうなの。じゃ、ぼくと鬼ヶ島に行かない」
「いいよ。きびだんごを食べたらなぜか指も前より良く動くようになったし」
こうして桃太郎と犬と猿は一緒に鬼ヶ島を目指すことになりました。
三匹がしばらく歩くと、今後は丸々と太った雉がよろよろと歩いて来ました。
「こんにちは。雉さん、どちらへ」
「お嫁さんを探してるんですよ。私は、声が良くないらしくて、求愛しても振られてばかりなんです。おまけにどうにも身体が重くて飛ぶこともできないんです」
雉はげげげえっと化け物のような声をあげました。あまりの大声で、耳が割れそうです。
「普通はもっと高い声が出るはずなんです。だからか、どうにも女の子に好かれなくって」
「そうなの。じゃ、ぼくと鬼ヶ島に行かない」
女の子には好かれない声かもしれないけど、これだけ大きな声をあげられたら鬼もびっくりして逃げ出すかもしれません。雉が了承したので、桃太郎はきびだんごを分けてあげました。
きびだんごを食べた雉が鳴くと、今度はけけけぇんと高い声が出ました。相変わらず耳が割れそうに大きな声でしたが雉は大喜びです。
「これならお嫁さんも来てくれるでしょう。お礼に私も鬼ヶ島に行きますよ」
こうして、桃太郎と犬、猿、雉は一緒に鬼ヶ島を目指すことになりました。




