鼻くそを武器扱いするのはおかしい。
ふふっ。
楽しいー! 地味にデブの足が速くて追いつかれそうだけど楽しいー!
なんて、思っている時。
相手の教室から声が聞こえてきた。
「助けてくれー!! 囲まれた!!」
そして、俺は振り返り……。
「ばーか! ばーか! デブとブスー! お前らが追い回してる隙に仲間がリーダーを倒しに行ってるんだよー!!」
「何やて」
「工藤……」
「バロー……って、何だこの会話は!」
「まぁ、ウチらのリーダー超強いから何とかなるんじゃない?」
「だよねー! ははっ!!」
こいつら冷たいな。助けてやれよ。
「あんたの思い通りにはいかな……」
「試合終了!! 勝者はF組でーす!!」
あれ、終わったね。やったぜ。
「思い通りにいきましたねー! ありがとうございましたー!!」
「マジで?」
「あいつ、意味わかんないんですけどー。ぶっ殺しに行くか」
二人はダッシュで教室に戻っていった。
いや、その気力があるなら試合中に行けよ。
そう思いながら、俺も敵リーダーの負け姿を見るために本校舎へ入る。
すると、五人は喜びはしゃいでいた。
「やぁー、お疲れ様!」
「とは、言うものの私達は何もしてないんですけどね」
と、言うリーダー。
「じゃあ、どういう事なんだ? それが……柳さんがですね――」
「! マジか。強いなー!」
勝つ手段は単純。壁とほぼ同化している柳さんが気づかれないうちにフラッグを抜いて試合終了。
あまりにも呆気なかったらしい。
ていうか、柳さん。最強じゃん! 他の茶番いるか!? 顎クラッシュとかさ!
だいたい、顎とか壁と同化とかマジの妖怪大戦争が起きてんじゃねぇか!!
色々、ツッコミたいことはあるけど勝てて良かった。
そして、皆に『本当にお疲れ様』と言おうとしたその時。
一つのアナウンスが流れた。
「少し待ってください……。先程の試合での不正と思われる行為がF組の方に……」
周りがざわめき始める。
落ち込んで倒れ込んでいたEクラスが飛び上がり煽り始め、俺達は落胆したように肩を落とす。
ここまで来て? 嘘だろ?!
「Eクラスが指摘した審議の点は……」
審議の点は……? 何なんだ?
「鼻くそが武器に入るかの有無です」
「「「「「「「「ブフォ」」」」」」」」
その場にいた敵を含めた八人が吹き出してしまう。
何だよ! 鼻くその有無って! 鼻くそは武器じゃないだろ! 鼻くそだろ!
俺の鼻からだって、出てくるぞ?!
「それでは審議のため……ビデオ判定をしたいと思います。ビデオ判定は会場中央で見れるので見たい人は見てねー!」
俺達全員は願いながら、外に出る。あの大きいテレビだよな……。
ゴクリ。俺は息を呑む。
「何だ、何だ? お前らの守りは一人って作戦か。やけに真剣に守ってくると思ったぜ」
一人のデブが勢いよく教室に入り、ブスボを響かせる。
「下らん。私に勝ってから言え。それも一人とは笑わせる」
鼻くそマシンガンが座っていたダンボールから立ち上がる。
月の光が目を照らし、妙に格好良く演出されている。
鼻くそマシンガンには主人公補正がかかっているのではないだろうか。
鼻くそサーティーン。かっこいい!
まぁ、あれはスナイパーだった気がするけど気にしない。
「所詮は女一人。舐めた態度を取ってられるのも今のうちだぜ」
「声がブスい。帰れ」
まぁ、確かに鼻くそマシンガンの容姿は正直言って普通な方だからな。
俺の名前と同じような感じで鼻に手を入れ続け、ブスに見えたからここに送られたんだろうな。って感じするもん。
「おい……。俺、地味に傷ついたぞ」
「あぁ。悪かった。顔もだな」
「……許さねぇぞぉ!」
男は怒り狂い、ダンボールを足で吹き飛ばしながら鼻くそマシンガンに近づいていく。
それは人を狩る巨人のようだった。
「遅い」
鼻くそマシンガンがそう呟き鼻から手を離すと……。
ピシューン!
その鼻くそは見えないスピードで相手の体のどこかに当たり、教室の壁へと飛んでいく。
そして、黒板が外れ相手の頭に落下。デブは簡単に気絶した。
「人差し指の力だけであの威力を……」
「何か分かんないけど凄いですね……」
全員が騒然としていた。
そして、同時に下手したら鼻くそに世界が征服されるという恐怖を感じていた。
あれは軍事兵器だ。同じ人間じゃない。少なくとも俺はそう思っていた。
「つまらん。雑魚か……」
こうして、デブのフラッグは倒された。
「……後のが来たか」
後に入ってきた眼鏡をかけた地味系女子と出っ歯系男子は足を震わせ立ち止まっていた。
「ビビってんのか?」
「び、ビビってなんかねーし!」
「なら……」
すると、鼻くそマシンガンは鼻に手を戻す。
「「ひぃ!」」
二人は互いが好きとか関係無く、恐怖で反射的に抱きついていた。
「命だけは助け……」
ピューン
鼻くそが相手の腹に突き刺さり、その場に倒れる。
二方向に飛ばしたのか、同時に倒れたのだが、倒れ方が異常だった。
まるで、麻酔を打たれたかのようにしてぐったりと倒れていた。
そして、この出来事からしばらくした後に「試合終了!!」のアナウンスが流れていた。
「いやー。これはいかがなものですかねぇ……。滝沢さんはどう思われますか?」
これはこのアナウンスが決めるってことか? なら、願うしか無いじゃないか。
俺達は祈り続ける。
「そうですね。鼻くそは風紀を乱します。私だったら……反則にするかと」
「んー……。悩ましい! 読さんはどう思いますか?」
「私は……ありだと思います。鼻くそは自然現象ですからね。それを飛ばせるなら実力として認めるべきです」
何やねん。鼻くそを飛ばす実力って。
「確かに。そうですね。私なんかは召使いが鼻くそを自然に回収してくれるので見たことすらありませんが……」
いや、金持ちアピすな!
「分かります! 分かりますー!」
「それよりどうするんですか? 読さんも真面目に考えて下さい。早く帰りたいんでしょ?」
「そうでしたー!」
「もう、これは明日、先生に見せて判断します! どうせ、ポイントをどのようにして割り振るかも先生の判断なのでー。とりあえずは普通に投稿してくださいねっ? それじゃあ、解散! お疲れ様でしたー!!」
そう言うと、ドームのようになっていたのが元の学校に戻る。
「え、スキルポイントの割振りってなんですか?」
「あぁ。えーっとな。チーム戦の場合は活躍したやつが特にたくさんポイントを貰えんだよ」
「そうなんですか!」
「とりあえずさー、勝った時のことより、明日の勝利を信じようよ!」
「お前ら負けだからー!」
「うるせ! 黙れ。そうだな。勝つって信じてれば勝てるよな!」
俺達は明日の勝利を信じて、全員で円陣をした後、戦ったメンバーで飯を食べに行き、家へ帰った。