制服デート!? だから男だと!!
やったぜ。これを考えた俺は恐らく天才!
超平凡な俺がこんな美少女? とデート出来るなんてなぁー、夢のようだ!
放課後、俺達は制服デートをしていた。いつもなら、こんなデパートにいる男女は妬みの対象でしか無いが今回は違う。
妬まれる側だ!!
「ど、どうしてこんな事に」
俺のデート相手。女物の制服に身を包んだ女神様がおどおどとしている。
「まぁ、今更考えたって遅いだろ? 塗子からの情報によれば……よし! あっちだ」
俺は女神様の手をがっしりと掴み、可愛い服がたくさん売っているというショップへ向かった。
「手を握る必要はあるのか!?」
「迷子にならないためだ」
そして、ショップへ到着する。
「走っている時、色々な人に見られていた気がするんだが……。どこか変なのか? いや、それとも……男ってバレてる?!」
「それは無いと思う。だって、めちゃくちゃ女の子だもん」
「……喜んでいいのかダメなのか微妙な所だな」
そう言いながら、落胆したように肩を落とす女神様を無視し、再び手を握り店内へ足を運んだ。
「いらっしゃいませー……おおっ! 凄い偶然ですね! 当店、カップルサービスをしてまして……」
「か、カップルサービス!? 僕はお……」
その口を手で覆い喋れないようにする。
「ぶぶせっ(離せっ)!」
「お二人ー! お熱いですねぇ!! 当店、開いたばかりで10組ごとのカップルにサービスをしてるんですよぉ」
「おお! それは凄い! ちなみに何ですか?」
「全品半額です!」
そう言うと、被ってない方の手に半額券と書かれた紙を渡された。
「ありがとうございます!」
「それではごゆっくり……」
「はぁはぁ……死ぬかと思ったぞ?!」
顔を真っ赤にして、そう告げる女神様。
これはこれで良き!
「まぁ、気にするな」
すると、俺のスマホのL〇NEが勢いよく通知音をあげる。
『最近、話題の服で似合いそうな服……』
塗子からのL〇NEだ。
下にはこの店で見たような服も置いてあった。
それよりとても悲しそうな文章だな。
少し気の毒だな。と思う。
いや、男の方が自分より可愛いんだもんな。少し悲惨だ。
「よし……! じゃあ、良い服を探すぞ!」
「うぅ……」
その後、スカート以外、俺の名前の知らないような衣類をたくさん身につけ。
これだ! というやつを選んだ。
こんなに癒されるならずっと嘘をついててもいいかな。なんて思ったけど、それは女神様のメンタルを破壊しかねないので辞めておいた。
こうして、準備は整った。
深く肩を落とす、女神様のご機嫌を取り家へ帰った。
――翌日の放課後。
俺と女神様は重苦しい扉の前へ立っていた。
結局、昨日選んだ私服は何の意味もなく。制服姿で二人とも立っていた。
一方は女物だけれど。
怒って、叩かれた頬が地味に痛い。
「……行くぞ。作戦通り頼む」
ゴクリ。と一つ息をのみ扉をトントンと叩く。
「失礼します」
俺が大きく重苦しい扉を開いた部屋は校長室。
あの鬼ごっこをする計画のためだ。そして、昨日俺が服を選んでいた理由は校長先生を女神様のお色気で倒すため。まぁ、よくよく考えたら服は制服だから意味が無かったんだけど。
何はともあれ、俺が考えたのは新しいゲームではない、校長がどうやったら許してくれるかだったのだ。
「Fクラスに新しく入った。田中 エロ茄子です。校長先生にお願いがあり、今日はお時間を頂きました」
校長室にはたくさんの本が左右に並べてあり、真ん中には木でできた大きな机と黒色の深い椅子が置いてある。
その椅子から校長は立ち上がることも無く、変わらぬ仏顔で口を開いた。
「新入生が……。それもFクラスの……」
校長は白い髭を長く生やしたイケメンで、昔歌舞伎町のナンバーワンホストをやっていた。と聞いてもおかしいとは思わない顔立ちだ。
「そのお願い何ですが……」
俺は、本校とこちらのボロ校舎を使ったゲーム内容を手短に話した。
「高校に入って早々……。君のような人間が現れるとはなぁ。残念ですが、それを承諾することは出来ません」
今更になって思ったんだけど。こんなイケメンに男の娘のお色気なんかが効くのか?
ま、まぁいい! やってみるに越したことはない。
変な冷や汗が出てきたが、俺はそれを無視し手をパチンと叩く。
「頼んだ」
ガチャ
「失礼します。Fクラスの神崎 千冬です」
男の娘美少女が扉を開く。
校長はそれにつれて仏顔を少し緩くした。
お……。意外と効いてるんじゃないか?
「私からも……お願いしますっ!」
「そ、それは無理なんだよー……」
すると、女神様は前に進み校長室の机に乗り上る。
な、何やってんだ!? ていうか、女子は何を仕込んだんだ?
女神様が退学になったら嫌だぞ?!
「んっ……。いいじゃないですかぁ……」
羽織っていた可愛らしい服を肩にかけて脱ぐ。
前方は見えないがパチパチとワイシャツのボタンを外す音が聞こえる。
校長の顔が真っ赤になっていくのも分かった。
すると、女神様は校長の耳に口を寄せて……。何かを呟いた。
校長は慌てるように椅子から飛び上がり、引き出しから紙とペンを取り出し何かを書く。
「しょ、承認書だ! 放課後の夜遅く、一階だけなら許可する!」
その紙を女神様は受け取り、俺の方を向いてニコッと笑う。笑顔は神々しさで溢れていた。
まぁ、上半身軽く脱いじゃってめちゃくちゃエロいんですけどね。
俺が目をそらすと慌てたように顔を赤くし、服を再度着る。
そして、俺の方へ駆け寄り校長室の扉を開ける。
「「失礼しました!! 本当にありがとうございます!」」
そして、俺達はその場を去った。
「……まさか。あんな子が出てくるとはな」