立ち上がれっ!! 不細工!
ミシッ
突然叫び、立ち上がった俺に注目が集まる。そして、黒板前まで行き、それを強く叩く。
「あー、言い忘れてたけど黒板落ちやすいから」
俺は黒板を後ろに立てかけて咳払いをする。
「新入生がこんな事を言うのもおかしいかもしれないがな……。お前ら! この学園に何故入ったのかを思い出せ!!」
周りから不満がたくさん漏れる。
「あーあ。毎年、いるんだよ。こういう馬鹿」
お前は何年留年してんだよ……。
「俺がこの学校に入ったのには理由がある!」
「わー。凄いね!」
何だよ……。このブス。腹立つなぁ!
「この学校のルールを忘れたのか?! そう、『スキル制度』があるだろ!」
まぁ、説明しよう。
この学校にある決まり。スキル制度。詳しいことはよく分からないが、神様の力か何かで顔の容姿などを良く出来るというものだ。
例えば、目をぱっちりさせたい! とか、鼻筋を綺麗にしたい! とかだ。
もちろん。このスキルポイントを獲得するのには方法がある。
その方法の一つ目は個人でのスキルポイント獲得法だ。
ルールとしては、必ず低ランクの人から高ランクの相手に挑むこと。
両者の同意のもと。先生に対決内容と時刻。場所を指定するということだ。
この方法はポイントを多く獲得できるが、クラス面での変化が起こる方法ではない。
だが、相手の養子のスキルポイント一つを多く奪い、敵クラスの戦力を奪うことが出来る。
その代わり、低クラスで挑んだ方が負ければ、どれか一つのスキルポイントを全て奪われてしまう。
説明が遅れてしまったが、スキルカードというのは自分の容姿がテストの採点のように記載されている、この学校の生徒手帳みたいな物だ。
そして、二つ目。
『クラス単位での大量ポイントゲット』だ。この方法は低クラスが上のクラスに挑むことが出来る方法で、クラス全体を合計したスキルカードの戦力なども関わってくる。
勝負内容は野球やサッカー等のスポーツはもちろん。ゲームなんかでもいいらしい。
もちろん。これも両クラスの同意が必要だ。
これは相手からスキルポイントを奪う。ということでは無く、クラス全員のポイントを上げることが出来る。
その代わり……。相手に挑んで、負けたクラスはAクラスの雑用を一週間やらされるらしい。
つまり、このルールは挑まれたクラスに取ってはノーリスクという事だ。
一つあるとしたら、負けた時にクラスが落とされる。という事だ。
「あぁ。そんなのもあったなー。懐かしいよ」
前の方で座っていた男が懐かしそうに語る。
「懐かしがっる暇があったら俺らが革命を起こしてやろうぜ!!」
周りから「嫌だ」「恥をかきたくない」などの声が聞こえる。
この容姿自体が恥だろ! と突っ込みたい所だが、火に油を注ぎそうなので辞めておこう。
「だから、賛成のやつは手を上げてほしい!!」
と、深く頭を下げる。周りから見たらぶっ飛んだ新入生と思われているんだろうな。と、思うがこんな所にはいたくない。
しばらくして、俺が頭を上げるも周りは沈黙に包まれていた。
それから、しばらくの間。気まずい雰囲気に包まれていると、顎の長い男性または女性。もしくは妖怪が手を上げる。
「わ、わたひはそれにしゃんしぇい(賛成)だな」
「……アゴシャベル。なら、俺も賛成だぜ……」
すると、豚と人間の合成体のような男性も手を上げる。
アゴシャベル……っていうのは、あの顎の長い人の名前もしくはあだ名なのかな。
俺は何とか笑いをこらえる。いや、本当に感謝してるんだけどな。
それから、徐々に周りの人間も手を挙げていき気が付いた頃には全員が手を挙げていた。
「……ありがとうございます!!」
「何だ、この騒ぎは。ホームルームを始めるぞ!」
対爆スーツのような物を身にまとった男性がドスンドスンと教室に入ってくる。
先生と予想した俺は最後に名前を名乗り席に付いた。
「モテ茄子と言います! 宜しくお願いします!!」
俺の飛んでもない自己紹介はこうして幕を閉じた。
そして、ホームルームが終わり授業が始まるかと思いきや、各自ワークやら、ゲームやらを鞄から出す。
「え、何これ」
俺は隣になれた男の娘に質問をする。
「このクラスでは基本。授業は無いからさ。自由に何かしてていいんだよ」
「先生はあの調子だしさ……」と苦笑いをする。
確かに先生は教室の真ん中で堂々とスマホを開いているな。
パ〇ドラの音がめちゃくちゃ教室に響いているし。
「ありがと。なら……教科書でも眺めているか」
俺は配られた教科書に目を通していると、段々暇になり気が付いた時には眠っていた。
――――――
――――
――
「ふぁああ……」
俺は大きな欠伸をする。これから午前と午後の休憩の時間。
「ところでさ。作戦とかはどうするんだ?」
新入生の中でただ一人。このクラスにされた俺にクラスの皆が集まってくる。
「作戦……。作戦ねぇ。とりあえず、クラス全員で話し合ってみるか! 俺はまだ、この学校の事を全然知らないしな」
「おう。なら、俺が仕切ってやるぜ。このクラスの代表をしている。『西澤 剣』だ。宜しくな」
猫目の鋭い視線。スッキリとした鼻。サメのように長い口。トゲトゲの天然パーマ。痩せ型で高身長の男だった。
そして、心臓に直接突き刺さるような口臭を放つ男だった。
「ゲホ。よ、宜しくお願いします」
学校生活の命運をかける作戦会議が始まった。
何で決めるか……。