俺の彼女は馬鹿野郎!
これって、『名誉毀損』的な何かで訴えられるんじゃないか? と思ったが、そんな事は後回しだ。
あんな『田中組』とかいう、ふざけた名前で広がるのはもちろん嫌だし、あこまで恐れられるのも嫌だ。
ていうか、あれは美咲の雇ってる人達だからやばいのがあいつってことになるよなぁ……。
俺は再び、教室に戻る。
すると、何か知らないけど注目を受け、豚男が「T〇itter見たぞー」と言い放つと一斉に周りが色々聞いてきた。
なに、この嫌な事で注目浴びて人気者みたいなのやつ。凄く嫌なんですけど!!
「ストップ!」
集まってきた奴らが一気に震え上がる。
いやいやいや。急に改まるの辞めようぜ?
そんな中、俺に質問攻めをしてこなかった柳と鼻くそマシンガンに感謝の言葉しかなかった。
いや、真顔で席に座ってるし、そもそも興味なんてないのかな。
俺は美咲と付き合っているのに、何だかそこが気になってしまった。
「あのさ。それ、俺の知り合いでも何でもないから」
「でも、田中組なんだろ?! 裏の!」
「はぁ……。演技! そいつらに絡まれたから。そしたら、謎の女性が助けてくれたの!」
皆が怪しそうに目を細める。
はぁ。
そりゃぁ、そうだよな。知らねぇ女の人が助けてくれるわけないし。
どうしたものか……。と悩んでいると扉が勢いよく開かれる。
「はぁはぁ……ダーリン!!」
俺を囲む人達を押しのけて、抱きついてきたのはもちろん美咲だ。
「やめろって!」
「いいじゃんー! ふふっ」
周りはそっちの方に驚いたのか目を丸くする。
「え、お前らって付き合ってんの?!」「どういう関係?!」「殺す」「どういう事?!」「死ね」
所々、悪口聞こえるし!
はぁ……。だから、言いたくなかったのに。
「ちょっと待った!」
俺は美咲の手を取り、教室の外に出る。
そして、声の聞こえなそうな所まで連れていく。
「どうしたの? も、もしかして……こんなところで……」
と、顔を赤らめ制服のボタンを外し始める。
「いやいやいいから! そうじゃなくて!」
「怖い顔しないでよー」
「する! アホか! あんな人前で……付き合ってまーすなんて言ったらからかわれて死ぬぞ?! お前は死ななくても俺は羞恥で死ぬ!」
「死ぬの嫌だー!」
「だから、抱きつくなって! 学校! 俺達は昔の幼馴染で友達! 学校内では!」
「分かったー」
そして、二人で教室に戻る。
「ナニしてたんだー?」
ニヤニヤと煽る男子達。
いいなーと羨む女子達。
死ね。と憎む酷いヤツら。
だが、一番頭のおかしい奴は隣にいるこいつだった。
「何もしてないよー! 私達は幼馴染の友達!」
おい! 馬鹿か! あからさますぎるだろ。可愛いからいいけど!
「そ、そう! 何も無いから気にすんな!」
この後も質問は続き、色々だるかったが先生が入室したお陰でその場を凌ぐことができ、下校までに全ての誤解を解くことが出来た。
今日は特に何をするということも無く、家へさっさと帰り、早めに眠りについた。