7話 「ミーラという魔女」
7話「ミーラという魔女」
誰も入らないようなパーティに自分から入ろうとする魔法使いに俺は不信感を抱いていた。自分が魔女レベルの魔法使いと言うこともそうだが、ギルドカードを見る限り嘘を言っているようには思えない。だが俺の野生の本能は何かを感じ取っていたり。
自称魔女を街の外に連れ出し、なにか標的になるものがないか探していると、3メートルくらいの魔物を見つけた。
「まだこっちに気づいてないみたいだな。あの魔物はなんだ?」
「あれは、マッドゴーレムね、攻撃力がえげつないことから人々から恐れられているわ。でも、動きが遅いのと鈍感で体力も少ないからだか初心者でも狩れるモンスターで有名よ!」
「へー、そうなのか。おい自称魔女。あのゴーレムに魔法をあってみてくれ。それで仲間にするかどうか見極める。」
「私に対して雑魚モンスターでテストとは失礼ですね。あと私の名前はミーラですよ。あまり魔女って言わないでくださ い。照れるじゃないですか。」
照れるミーラに対して、別に褒めて言ってるわけじゃないん だがと心の中で言いつつ静かに彼女を見守った。少し離れた場所にいるゴーレムに、彼女の背丈ほどの杖を前にかざし、詠唱を唱える。すると杖の前に大きな魔法陣ができた。
「『パーフェクト・エレクトロン』」
彼女言葉と共に魔方陣からえぐい色のレーザーが空に打たれ、次の瞬間、無数のいかづちがゴーレムに落ち土煙を挙げた。
「ふふふっ、どうでしょう。これが私の実力です。嘘なんか言ってないでしょう。」
「おぉすげぇ。これが魔女の力か。こんな規模の魔法初めて見た。エルナお前でもあれ打てるのか?」
「あんな短時間の詠唱であんな規模の魔法打てるわけないでしょ。私が保証するわ。」
まあ神様が言うのだから本当なのだろう。疑ってたことが恥ずかしくなるくらい強い、威力の魔法だ。
「さっきは疑って悪かったな。これからよろしくな、ミーラ。」
握手を求め手をかざした。それを手に取り、「はい。よろしくお願いします。」と言うミーラだが、何やら慌てているようだった。
「さあ、私の実力も証明できたことですし。帰りますよぉっと!」
突如強い風が吹いた。その風は、さっきミーラが落としたいかづちの影響で出た砂煙をさらっていった。そして視界が良くなり気づいた。いかづちの影響で無数の穴があちこちに空いていたのだが、ゴーレムは無傷であった。
「おっと、たまたま!たまたま当たら無かった見たいですね。運がいいゴーレム。だがこれで終わりです!」
またミーラは、杖を前にし、詠唱をし魔方陣を作り。
「『パーフェクト・ウィンドスピア』」
次は風が杖の前で集中し突風を産みそして、ゴーレムに向け放たれた。その勢いはまた凄まじく、地面をえぐりながら進んだが、ゴーレムの横スレスレを通り過ぎていった。
そして、時は過ぎミーラは何十発も魔法を打ったがそれがゴーレムに当たることはなく、地面をボコポコにするだけであった。
ここまで来ると馬鹿でもわかる。こいつは魔法がてきに当たらないと。そんな、そんなベタな展開は要らねぇ。俺が欲しいのは優秀な人材なんだ。
こりゃダメだ。っとミーラに声をかけようとすると、さっきまでうんともすんとも言わなかったゴーレムが動き出しこちらに向かって走り出してきた。
「不味いわ!こっちに気づいて攻撃を仕掛けてくるわ!逃げるわよ!」
深刻そうに言うとエルナ。
「おいおい、今更こっちに気づいたのかよ!どんなけ鈍感なんだよ。ていうかミーラ!さっきから魔法当たってないけどお前ってそういう事なのか!?」
「バレてしまったらしょうがないですね。その通りです。私は強力な魔法を備えていますが、生まれてこの方当たったことがありません!こんなな私ですが仲間にしてください!」
「いらんわ!お荷物はそこの聖剣で十分だ!ほかを当たってくれ!」
「なんで私がお荷物なのよ!ぶっ飛ばすわよ!って言うかもうゴーレムが攻撃体制に入ってる避けて!」
ゴーレムの巨大なパンチを紙一重で避けたが、ゴーレムのパンチが地面に当たると一瞬で辺りがひび割れ、砕けた。
「ぬぉってい!!おいさっき初心者でも狩れるって言ってたじゃねぇか!こいつのパンチ、当たったらワンパンレベルじゃねぇか!どうなってるんだよ!」
「それは気づかれてない時の話よ!気づかれたら速攻で逃げなきゃ死ぬまで追われるわよ!」
「それを早く言えよ!」
エルナと揉めていると、ゴーレムが大きく振りかぶった。
「くっそ、こうなったら。」
目くらましのため『パリアスモーク』をするために左手を前に掲げようとした瞬間、ミーラがゴーレムの前に立ち、両手で杖を握った。
「まさか近距離で魔法を?!それなら当たるのか?!」
「いや、もうさっきので私の魔力はもうすっからかんてますよ。あと、打ったとしても外す自信があるので期待しないでください。」
「おいじゃあなんで前に立ったんだよ!?もしかして物理攻撃か?小さいお前がそんな力あるわけ!!」
ゴーレムのタメが終わり、凄まじい勢いでパンチが飛び出る。ミーラは力強く杖を振りかぶり、
「うぉぉぉぉぉお!」
小柄な女の子が出したとは思えないほどの力強い叫びを上げながら、杖をゴーレムの拳にぶつけた。そして、ゴーレムの拳を砕いた勢いで、体をもう一回転させ、次は胴体にぶつけた。
「ぶっっっっとべ!!」
雄叫びとともに、巨大なゴーレムは宙に浮き、そのままま10メートル先までぶっ飛び、バラバラになった。
その光景をみた、俺とエルナは、口を開けたまま呆然と座り込んでいた。
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「つまりお前は、強力な魔法を持っているが1発も当たらなくて、今まではその馬鹿力でモンスターをなぎ倒し功績を上げ魔女になったのか?」
「乙女に対して馬鹿力って言うのがちょっと尺ですが、まあ大体そんな感じです。まあ魔法よ当たらない魔法使いなんて誰も欲しがりません。そこで私が目をつけたのはあなた達。みんな嫌がって入らなさそうなパーティなら入れると思ったんですけど。」
「お断りさせていただきます。魔法の当たらないなんて魔法使いじゃないのと一緒じゃん。まあ当てれるよう頑張って下さいな。それでは。」
そう言って去ろうとしたアラムに対して、ミーラは自信満々に、
「まあ、すぐバレると思って、手はうってあります。」
彼女は紙を取り出し俺に渡してきた。それは衝撃なことを書かれた書類だった。
「おい、エルナ。お前…いつの間に。」
「何よ?神様たる私はこの子の才能を見抜いていたわ!だから、このあとの手間を省いて挙げたことに感謝しなさい!」
「だから、こいつの攻撃は当たらないんだって!何勝手に仲間の契約しちゃってるんだ?!って言うか代表は俺だぞ?!よく通ったな!」
ミーラが渡してきたものは、契約書、パーティメンバー募集の契約書だった。そしてそこにはミーラとエルナのサインが書かれており契約成立のハンコが押されていた。
「あの受付のお姉さん融通がきくわ!褒めて遣わす。まあいいじゃないの。仲間が増えたんだし!」
「よくねぇ!この先が思いやられるわ!」
怒る俺の袖を引っ張る、ミーラ。そして笑顔を見せて、
「これからよろしくおねがいします。アラム。」
魔女だ。こいつは正真正銘の魔女だ。アラムはまた深いため息をつき、渋々頷くのであった。