4話 「弟と妹のように」
4話 「弟と妹のように」
月が沈み朝日が暗い大地を照らし出す。目を覚まし、隣をみるとエルナが涎を垂らしながら幸せそうに寝ているアラムは、冷たい目でそれを見つめ数分、寝ているエルナを放置し、服を着替え、家をあとにした。
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エルナが目覚めたのは、アラムが家を出ていった一時間後だった。
「ふわぁ。おはよぉー、久しぶりにこの姿で寝たわー。アラム何時にここを出るの?」
そう言ってエルナが隣を見ると昨日までいたはずのアラムが居ない。周りを見渡してみても彼がいる気配が全くない。
「アラムー?ねーえ、どこいったのー?」
いくら読んでも彼の返事がない。エルナは少し考えて、最悪の事態が頭でよぎった。
「まさか置いていかれた?!嘘でしょ、聖剣を置いてくなんて何ていう罰当たりなの?!」
エルナが朝から騒いでいると、玄関のドアが開き、赤髪の女性、ミルディアが丁寧な言葉遣いで声をかけてきた。
「朝からどうしたんですか?エルナ様?」
「あんたは昨日の!ねぇアラム知らな?私が起きた時にはもういなかったんですけど。まさか行っちゃったとかないわよね。」
涙目で慌てるエルナに対してミルディアは少し笑いながら、
「心配ございませんよエルナ様。アラムは日課の朝の散歩と村に挨拶回りをしているだけですよ。『災厄の聖剣』を置いて出ていかれてはこちらが困ります。
」
「その『災厄の聖剣』って名称やめてくれないかしら?神様だからって何言われても傷つかない訳じゃないんだからね。まあ、アラムが置いてっていないなら良かったわ。それより朝はまだかしら。お腹が空いてたまらないんだけど。」
「それは失礼しました。分かりましたすぐ用意させて頂きます。それとお願いがあるんですが。」
「なになに?神たる私にお願い?言ってみなさい。」
「アラムが帰ってくるまで、お話しませんか?神様と話すなんてそう無い機会ですから。」
「なんだ、そんなこと。いいわよ、貴方はアラムと違って自分の立場がわかっているみたいだし、暇つぶしに雑談して上げてもいいわよ。」
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「よぉアラム!聞いたぜお前勇者になったんだってな。この村を出て冒険にいくって噂が広まってるぜ。なんかいるもんでもあるか?」
アラムが挨拶回りをしながら寄ったのは少し民家とは離れた所にある武器屋である。アラムは今までお店事態にはお世話になったことがないが、小さな村なので村人全員が顔見知りである。今回も挨拶に来ただけだったが、
「おう、不本意ながら勇者になったからこの村を出て冒険に出るぜ。そう言えばおれ冒険用の装備持ってないんだよな。そんなことするとは考えてなかったし。なんかおっちゃんのオススメとかある?」
「ははっ!お前聖剣以外何も持ってねぇのか!仕方がねぇ、なりたくねぇ勇者になったお前に装備一式プレゼントしよう!」
「おぉ!おっちゃん気が利くな!ありがとよ!勇者になって初めて優しくされた気がするぜ。」
ワクワクしているアラムに武器屋のおっちゃんが差し出したのは、初心者セットと書かれた紙袋だった。
中身は、シンプルな麻の白い服に薄茶色のズボン、青色のマントに丈夫そうなブーツだった。
「わーい。ありがとうー。大切に使わせていただくよー。」
棒読みでアラムはお礼を言うと、少し苦笑しながら
「わりぃなアラム。こっちも経営難でそんなもんしかやれねぇ。まあないよりはマシだろ。大切に使えよ。」
「おう。まあ貰う立場だから文句は言わねえけどよ、ていうかここに買いに来る人っているのか?冒険者事態この村にはそう来ないはずだけど。」
そう言うと、武器屋のおっちゃんは腕を組み首をしたにやった。結構やばいらしい。町はずれの村の商人の闇を知った気分だった。
「まぁ農民用の道具も売ってるし、別に死にはしねぇけど、まあ考えるのはやめよう。それとアラム、これもやるよ」
そう言っておっちゃんが渡したのは緑色の小さな魔石が入った腕輪だった。
「歴代の勇者は不幸にも死んでったからな。まあ気休め程度だが、うちで扱う一番幸運が上がる腕輪だ。ちゃんと付けとけよ。」
「えっ!そんなのいいのくれるのかよ。」
「当たり前だ。お前もこの村の立派な一員なんだ。ちゃんと生きて帰ってこいよ!その時は冒険話でも聞かせてくれ。」
「おっちゃん・・・」
多分、もう生きてこの村に帰ってくることは無いだろう。今の俺は魔王を倒すことなんて夢のまた夢である。でも、村の人々は俺に期待してくれる。それだけでも力になる気がするとアラムは感じた。
「おう!その時には可愛い嫁さんでも連れて帰ってくるよ!ありがとよ!おっちゃん!」
そう言って、アラムは手を振り武器屋をあとにした。
次にアラムが行ったのは丘の上にある墓地であった。墓の前に立ちアラムは、
「俺勇者になったよ。この先不安で一杯だけど精一杯運命から足掻いて見せる。そしてらまたこの村に帰ってくるよ。じゃあ行ってくる。」
そう言い残しアラムは墓をあとにした。
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家に戻るとアラムは呆然としていた。何故なら、テーブルを囲んだ二人の女性が意気投合して、わんさか騒いでいるのである。何時だと思ってるんだ。
「おっと、アラムが帰ったから、そろそろお別れの時間のようだ。エルナさま、アラムを頼んだよ。私にとっては弟みたいなものだから苦しい時も悲しい時もそばにいて支えてやってくれ。」
「分かりましたわ。ミルディア姉様。冒険のベテランの神様が全身全霊アラムの冒険をサポートするわ。」
本当にこの短時間で何があったんだ。ミルディアの敬語は消え、エルナに至ってはミルディアを姉様としたっている。それでいいのか神様。
武器屋のおっちゃんから貰った装備に着替えて、自分が育った家にも挨拶をし、等々この村にお別れをする時間がきた。
「なかなか様になってるじゃないか。駆け出しの冒険者っぽくて。本当に言ってちまうんだなアラム。」
「駆け出し冒険者は余計だ。一応勇者だぞ。あと、なんか俺が自分から冒険に出るみたいになってるけど、出ていくよう言い出したのはミルねぇだからな?」
そう言うとミルねぇは「そうだったな」と笑った。
「そうだ、アラム。少し少ないかもしれないが冒険の資金にしてくれ。世の中は金だうまく使ってくれよ。あとこれも渡しておく。」
ミルディアはアラムに小袋と手紙を渡した。
「ありがとよ!大切に使うよ。この手紙はなんだ?誰かに渡すお使いか?」
「まず向かうのは、ギフリエの町だろ?困ったらこれを渡すといい。多分スムーズに話が進む。」
少しひかっかったが、小さく頷き、小袋と手紙を腰のカバンに閉まった。
「達者でな。アラム。お前のことを本当の弟のように思っていたよ。世の中が期待してなくても、少なくともこの村の住民はお前が魔王を倒すことを期待している。元気でな。アラム。」
「おう!必ず魔王を倒し、すべて終わらせてこの村には帰ってくる!その時はまた世話になるぜ!ミルねぇ!」
必ずこの土地に帰ってくる。それが何年かかろうとも。そうアラムは心に決意していると。隣ではエルナが何故か涙を流し、そしてミルディアに抱きついた。
「ミルディアねぇさまぁぁ。わだじもぜっだいにがえってぐるからぁぁ。」
「よしよし。エルナ。短い合間だったがお前のことも本当の妹とおもっていたよ。帰ってきたはお前もこの村の住民として迎えうける。頑張ってこい。」
(本当にこの短い時間に何があったんだよ!ていうか神様ならお前の方が年上だろ!ミルねぇ何したんだ?)二人を白い目で見つめながらそう思い、そしてアラムは村をあとにした。
そしてアラムの冒険は今ここに始まるのであった。
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「申し訳ないが!勇者をこの街に入れるわけには行かない!とっとと失せろ厄介者!!」
アラムは最初の行き先の街で、いきなり積んでいた。