3話 「 大好きな村のために」
3話 「大好きな村のために」
「村から出ていけ。2度と帰ってはくるな。」
「えっ?」
「えっ?じゃない。お前は勇者に選ばれたのだ。だから村から出ていけ。伝わるまで何度でもいうが?」
「いやいやいや、なんで勇者になったら生まれ育ったこの村から出ていかなきゃ行けないんだよ!しかも2度と帰ってくるなって・・・、つまり永久追放ってことじゃねえか!」
冗談ということを願うアラムに対し、ミルディアは真剣な目付きで、
「当たり前だ。お前は勇者になったんだ。」
「だから、だから何で勇者になったら、この村から出ていかなくちゃいけないんだ!」
「11代目の勇者が問題だ。それを理由に私はこの村のためにお前をこの村から追放する。」
「おいおい、11代目の勇者が問題ってどういう事だよますます分からねぇよ。いったい何が関係あるっていうんだよ。」
「もしかして死因のことかしら。」
『ここは私の出番』っとばかりに少し傍観気味だったエルナが口を出した。
「たしか11代目の勇者、ある村の若き英雄は勇者に選ばれた。しかし、英雄はこよなく愛する村を離れようとしなかった。そして、その村は勇者とともに、大量の魔物と天災により破滅した。っていう死因だったはずだけど。」
「いや、なんで村を離れなかっただけで村が破滅する自体になるんだよ。」
「簡単よ、勇者を討伐しに魔王軍が大量に送り込んだだけよ。天災はたまたま時期が重なっただけだと思うけど。」
笑えない話である。勇者が滞在していだけでその場所は魔王軍の手によって破滅する。天災に関しては、どんな事があったが知らないが、時期が重なってしまうのは運の悪い話である。
「つまりメルねぇは、俺がこの村にいると魔王軍が攻めてくる可能性があるから俺を村から追い出すのか?」
「そうだ。お前がいると村人に危害があるかもしれない。正直私は天災はその『災厄の聖剣』の影響もあると思っている。だから頼むアラム、私の、いやお前の大好きな村のために、村を出ていってくれ。」
「ミルねぇ・・・」
深々と頭を下げるミルディアに対して、何も言い返せない自分。この判断は当たり前である。
これまで様々な死因をしてきた勇者たち。そのほとんどが立派な死に方をしていない。基本的に運がない死に方をしている。
そしてその死に巻き込まれた人、土地も少なからずあるという訳であり、ミルディアは村を守るため当然の判断である。
「分かったよ・・・、ミルねぇ・・・。村から出ていくよ。明日の朝にはこの村を・・・俺の大好きなこの村を出ていくよ。」
「ありがとう、アラム。とても辛い決断をさせてしまったな。見送りはしっかりとさせてもらう。今日はゆっくりと休んでくれ。」
そう、仕方がない、仕方がないんだ。俺は確かに、この村でいっしょうぐーたらしていたい。していたいが俺の大好きなこの村が俺のせいで消えてしまうのは嫌だ。ここは勇者アラムの潔い撤退をする。それが唯一無能な俺が出来ることだ。
「っと言うわけでエルナ。お前のせいで俺はこの村から出ていくことになった。お前のせいで俺のスローライフの夢が消えたわけだが、心の広い俺は許す。尚且つ、お前のぼうけんにつきあってって何プルプルしてるんだお前?お腹痛いのか?」
エルナは顔お真っ赤にしたりまた真っ青にしたり、また真っ赤にしたり、プルプル震えている。顔芸に忙しいやつだ。そんなエルナの口から、
「ねっねぇ、『災厄の聖剣』ってなに?私って裏でそんなこと言われてるの?」
「おう、言われてるよ。ていうか、裏じゃなくて表で言われてるよ。」
「なんで?なんで?私は幸せを届ける神様よ。一応。邪神じゃないのに何でそんなこと言われてるの?」
「まあ、今までの勇者を見てきたら、当然っちゃあ当然のことだろ。俺もそう思うし。」
そう言うと、エルナは家の端っこでただただ落ち込み始めた。よっぽどショックだったらしい。
「まっまぁ今日はぐっすりと休んでくれ。それとアラム、追い出す側が言うのもあれだが、ちゃんと挨拶してこいよ。」
「分かってるよ。明日の朝行くよ。行ってきますは言わないとだもんな。」
不安そうに言うミルディアに対して、アラムは、今出来る精一杯の作り笑いで答えた。
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村で最後と滞在の夜。エルナはまだ落ち込んでいた。
「サイアクノセイケン、…サイアクノセイケン…」
「お前。いつになったら立ち直るんだよ。もう明日「」の朝には村を出るんだぞ。これから先のことじっくり話とかないと行けねぇだろ。いいかげん立ち直ってくれよ。」
そう言うと何故かエルナはキョトンとした顔になっ た。
「えっなになに?この村から出ていくの?もしかして私と冒険にいってくれるの?」
(こいつ、あれから話聞いてなかったのかよ)
深くため息をつきながら「そうですよ」、と答えるとエルナはこれまでに無い笑顔で喜んだ。
さっきまでの落ち込みはどこへ行ったのやら。
「いいわ!いいわ!こうなったらぱぱっと魔王を倒して、神にふさわしくないこの汚名を返上してやるわ!」
「はいはい、いい意気込みなことで。それより聞きたい事があるんだがいいか?」
「なになに、神の私に何を聞こうというのかしら人間。いえ、アラム!」
少々腹が立つところがあるが今は我慢だ。また不貞腐れては話が進まなくなる。落ち着けー落ち着けー。
「勇者になった者は、なにか特殊な才能や能力に目覚めたりするのか?じゃないと俺は本当に役立たずだぞ?」()
「あるわよ、当たり前じゃない。そうじゃなかったらアンタみたいな奴が魔王を倒すことなんて出来るわけないじゃない。」
「あるのかよ!!それを先に言えよ!んでその才能や能力って奴はなんだ?」
「ちっちっち、才能や能力なんて甘いもんじゃ無いわ!あなたが手にしたものは特権よ!」
「特権?」
(やばい、こいつ変なこと言い出しそうだ。頼むからその特権は私とかはやめてくれ!)
「それは!この聖剣に宿りし神様、エルナ様を使用するとっげんっっ!痛い何するのよ!!」
言い切る前に、渾身のチョップをお見舞してやった。いいよね当たったんだから。
「話は最後まで聞きなさい!あのねぇ、今までの勇者は私を剣として使うことしか出来なかったの。」
「うん」
「でも、今回の貴方の世間からの待遇を見ていて、私も流石に不憫に思ったの。」
「う、うんうん」
「だから今回は特別に、あなただけに実体化した私の使用許可を与えてあげる!」
「うん?まてまて、それってどういう事だ実態化したお前をどうやって使うんだ?」
「あらやだ、アラムったら夜だからってお盛ん゛」
罪あるものには制裁を、免罪、犯罪、だめ、絶対。
「あんたの仲間として一人の神として一緒にたたかうってことよ。暴力人間。」
「お前が変なことを言うからだ、自業自得だ。いいかお前が神様でも、そうでなくても、俺は容赦なく手を出す時は手を出すからな。んでお前って何が出来るの?」
「可愛い可愛い神様に手を上げるとか最低ね、やっぱりクズ人間だわ。」
「何度でも言え。それでも俺は止めない。」
「さいでさか。まあ戦闘に関しては、言うまででもないわ。その時のお楽しみってことで!」
っと自慢げに語っていくエルナを見て、俺は不安にしか思えなかった。
そしてら今後のことを少し話し合い、身作りをしてから寝るのであった。布団の中に入ってしばらくすると、エルナが、
「ねぇ、アラン。勇者のせいでここから追い出されるのなら、ほんのすこーーーし私のせいでもあるから謝るわ、ごめんね、そして、これから宜しく。」
なんだよ、お前罪悪感とかあるのかよ・・・
「おまえ謝ることできるのかよ。まあさっきは暴力振って悪かったな。これから宜しくなエルナ。」
ちょっと照れくさそうに言った。まあ、この村でぐーたはできなくはなるかもしれないが、自分の知らない世界を冒険するのもわるくっ
「ぐごぉぉ、わたしはーかみぃたそー、ひれふせーあらむー」
前言撤回こいつと冒険するのはやっぱり心踊らないわ。
歴代勇者死因リスト!
1代目 足を滑らせ、 崖から転落死
2代目 大イノシシの突進で追突死
11代目 村をごと、魔物大量発生、天災により消滅
13代目 スライムにより捕食死