1話 「厄介者の勇者誕生」
テンションにまかせて、勇者の剣を引き抜きました!
1話 「厄介者の勇者誕生」
俺は今、俺の故郷、小さな村のメルディア村に帰る為、一般的な馬車、ではなく、牧草が敷き詰められた農業用の牛車に乗り帰宅途中だ。
「おいクズ人間」
まあ、行きもこんな感じで王都に出たから気にしないのだが、一つだけ大きな違いがある。
「聞こえてるだろ!ゴミ人間!」
それは、この聖剣。この聖剣を抜いてしまったがために俺は勇者として村に帰ることになった。
えっ?なに?なんで勇者になったのに牛車に乗ってるかって。それは簡単なことだ。話は小一時間前に遡る。
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「新しい勇者の誕生です!」
やっと終わったと、気分のいい声で胡散臭い神父がそう言うと、周りは自分が勇者になれずに落ち込む者や、勇者になれずに落ち込むものがいた、そして、『えっ、こいつが次の勇者?似合わねー。』とゆう感じの顔で苦笑いをする者もいた。いや、なんか大半はそんな顔をしている。
「この、覚えてなさいクソ人間。あなたが私を引き抜いた以上、冒険に出てもうらからね!私には目的があるのだから!」
あ〜怖い怖い。まあ絶対に俺は冒険なんかには出ないけど。まぁとりあえず勇者になった特権として、やっぱ冒険の為のお金とか出るんじゃないのー?っと期待の笑みを浮かべていると、あの神父が嬉しそうな顔で
「はいっ!解散!解散!皆様お疲れ様でした!はい、元の生活に戻ってくださいね。あっ手伝える者がいたら手伝ってくれるとありがたい。もう長い時間突っ立って居たから、わしもう疲れた。」
そう言うとみんな一斉に、開放された奴隷のような勢いでドアから消えていった。
あれ、祝杯は?新しい勇者の誕生の祝杯は?
「ほれ、勇者様も帰れ帰れ。それともわしを手伝ってくれるのかな?」
神父は期待の目でこちらを見てくる。
「あのー、俺これからどうすればいいんですか?王宮にでも行けばいいのですか?」
俺は真剣な眼差しで神父を見つめると、
「なぁに馬鹿なことを言ってるんだ。歴代勇者をみろ!勇者になった癖に全然魔王討伐に近づいていないじゃないか!毎回毎回、王国は国民から集めた税を使って、資金や高価な装備を渡していたが、それがなんだ!幹部の一人も倒せていないじゃないか!しかも前代の勇者にいたってはスライムだぞ!よりにもよってスライムに捕食されて死亡じゃぞ!スライムに捕食される人間など聞いたことないわ!かえれ!この厄介者!」
いや知らねーし、去年まであっただろうが!ってゆうかなんで俺勇者になったのに説教されてるの?新手のいじめか?てか一番腹立つのが、こいつ神父だよね?神父口悪くね?誰だよこいつ勇者選抜の幹事にした奴。
「あっははははww勇者になって怒られてやんのwww。まだ前代勇者の方が待遇よかったわwwwあー面白いww」
俺の頭の中で可愛い声の悪女の笑い声が響きわたる。この聖剣って売ったらいくらになるのかな?
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こうして俺はこの聖剣以外何も手にせず帰宅しているわけだが、何これ勇者ってこんなに待遇悪いのか?
街を歩くだけで嫌な目で見られるし、この税泥棒とまで言われるし。なんだこれ俺の人生真っ暗じゃん。
「さっきから無視するんじゃないわよ!聞こえてるんでしょ!勇者だから聞こえないわけないでしょ!このニート野郎!」
「ニートちゃうわ!しっかり農作業して働いてますぅ!ジャガイモ育てて稼いでそれでぐーたらしてるだけですぅ!ってゆうかお前なんなんだよ聖剣に宿りし精霊かなにかか?」
「はぁ?精霊ですって?神様よ!か、み、さ、ま!天界に君臨する神様の一人よ!私は暇つぶしゴロゴロしてたらいつの間に聖剣に封じ込まれて、こんな辺境な地に落とされたんだから!しかも期限が魔王を倒すまでってなによ!しかもあんたさっき私のこと売ろうとしたわね!立派な犯罪よ!人身売買よ!」
「お前の方がニートじゃねぇか!お前人じゃ無くて聖剣だろ!物を売郎として何が悪い!いいか、俺が勇者になっても、絶対に冒険なんかに出ないからな!俺が死ぬまでお前は俺んちの倉庫でずーっと過ごすんだからな分かったか!この無価値聖剣!」
「さっきから独り言がうるせぇぞ!この厄介勇者が!ちっとは静かにしやがれ!」
俺が聖剣と喧嘩していると、牛車の運転手のおっちゃんがイライラの限界が来たかのように声を荒らげて怒鳴ってきた。
どうやら、この世の中はもう勇者に期待しておらず厄介者の存在なようだ。
「…なんで俺は、聖剣を抜いてしまったんだ…。」
「ざまぁwwww」
おれが小さな声で呟くと、聖剣に宿りし神様は俺の脳内に嬉しそうな声で呟いた。
まだまだ勇者の名前は出てこない!
神様の名前は?次回、村につくよ!