プロローグ
プロローグ
「次の者、前へ」
眼鏡をかけた胡散臭そうな神父がそう言うと若者が前に出て、岩に突き刺さった剣に立った。そして、深く深呼吸をし、剣の柄を持ち力一杯に抜こうとするが剣はうんともすんとも動かない。
「次の者、前へ」
これは、天から与えられたこの聖剣は、絶対最強無敵と称される魔王を唯一倒すことのできる剣とされており、二十歳の男女が集められ次々に挑戦していく。
だが、この聖剣を手にしたと頃で魔王討伐出来るわけでもないらしい。
1代目の勇者は王都一の優秀な若者で、魔物を次々に倒し魔王城へ攻め込んで行ったが、魔王城に行く途中、うっかり足を滑らせ先の見えない崖に転落して死亡。そして聖剣はまた元の岩に刺さっていたらしい。
2代目の勇者は、そこらへんの冒険者で、魔王の幹部と対峙した際、背後から大イノシシされ突進され即死。魔王幹部は苦笑いだったそうだ。
一番酷いのは、前の勇者、13代目の勇者だか、港町の力自慢が勇者になった訳だか、旅の途中、テントで居眠りをしていたら、スライムにパックンチョといかれたそうだ。
そのせいか、一部の人にはこの聖剣は、『災厄の聖剣』とまで言われている。(ぶっちゃけ俺も思っている。)
だからここにいる人間は強い正義感を持った勇者になりたい人間と、頼むから抜けないでくれと強く思っている人間が半分半分、そして俺はその後者だ。
俺は勇者になんでなりたくない!って言うか、俺は働きたくないんだ!あの小さな村で一生ぐーたら生活を送るんだ!
「次の者、前へ」
おっと、等々俺の番が来たようだ。この胡散臭そうな神父も大分疲れて来てるようだ。もう目が死んでる。まあ、長い時間同じセリフを言っていったらそれは大変な事だろう。お仕事おつかれさまです!
そう思いながら俺は聖剣の柄を握ると、頭の中にとても可愛らしい声が流れた。
「えっ、うそでしょ…。あなたが次の勇者?ちっさなすっごく小さな村に住んでる、平凡な顔でなんにも取り柄が無さそうな奴が次の勇者?!」
全面撤回、可愛い声だか、性格はクソみたいだ。
「ないわー。あんたみたいなのが、次の私の相棒とかないわー。」
脳内に再生される声に罵倒されながらあることに気づく。
やばい。やばい。やばい。これ抜けちゃうやつですわ。なんか微妙に聖剣ぐらついてるし。なんか脳内で声流れてるし。これあれか?聖剣に宿っている何かか?そんなことよりこれを抜いたら俺は勇者になっちまう!なんで俺なんだ!この聖剣を抜いてたまるか!
「何をしているのです。早くしなさい。」
胡散臭い神父が少しキレ気味に呟いてくる。
「あんた!ぜっっったいに抜くんじゃないわよ!私の相棒に相応しいのは、もっとたくましくて、イケメンで、何よりも誰からも慕われるカリスマ性を持った人物なのよ!それをアンタみたいな貧弱平凡ぐーたら男に抜かれてたまるもんですか!」
なんでだろう、大体自分でも認めている事だが、こいつに言われると無償に腹が立つ。
「おい早くしろ!あとがつっかえてるんだ!てめぇ みてーな貧弱平凡ぐーたら野郎に抜けるわけねぇんだよ!」
っと声を荒らげた神父に言われた瞬間何かが切れた
「オメーらさっきから、人が黙ってれば平凡な顔だの貧弱だのボロカスに言いやがって!!あぁいいさ、それじゃあお望みどおり抜いてやるよ!!覚悟しやがれこのクソタレ!!」
今まで出したことのない大声でそう言うと、おれは柄を強く握りしめ、渾身の力で引き抜き始めた
「あんた、ふっざけるんじゃないわよ!あんたなんかが魔王を倒せるわけないでしょ!さっさとお亡くなりになって次の代の勇者に変わりなさいよ!」
「ははっ!お前の言うとうり、俺は魔王を倒せるとは思ってねぇ!だからおれはこの聖剣を抜いて勇者になり、街の可愛い女の子にチヤホヤされて、旅に出ず家で死ぬまでぐーたらな自堕落の生活を送るんだ!それにお前も巻き込んでやるから覚悟しやがれ!この腐れ聖剣!」
岩から光がではじめ聖剣がみるみる抜けてゆく。それを見ている人々は感動の瞬間を目の当たりにし、勇者になれずに落ち込む者や、勇者にならなくてすみ、本気で喜ぶ人がいた。
「こっこの、このクソ人間がぁぁぁぁあ!!」
とても聖剣に宿りし何かと思えぬ言動に少し怯えつつも、剣先まで引っこ抜いてやった。
はい、一番なりたくなかった勇者になりました。でも何故だろう。とても清々しい気分だ。
そして俺の平凡な日々はこの日を境に脆くも崩れ去って行くのであった。