9.機械仕掛けと灰の墓標
【STAGE:すすり泣く墓場】
「ヤバいっスねー、自撮りウィズミープリーズ?」
「ま、待って待って・・待ってください」
自撮りは分かる。
まあ分かる。
そして“トリマ”?
あと急に出てくる英語は何??
あと、私より分かっていなさそうなのが、婆やである。
「んじゃ皆さんでいきましょうよー、俺あとで写真送るんで」
スマホでも出すのかと思えば、ここは異世界だった。
てへぺろ。
だが、少年がいじっているのは、なぜか自分の腕である。
それも、肌も見えない鋼鉄に覆われた。
「はーい、撮りまーすよー」
少年の腕から伸びたアームから画面が出てきて、そしてパシャリ。
もう何が何だか、ゆとり世代は恐ろしい。
「あの・・すいません、あなたは?」
「俺っスかー?名前がアレなんで紹介しにくいけど、ただのサイボーグっスよー」
“サイボーグ”。
どんな種族とも生き物ともいえない、“作り物”。
そんな少年が、ここで何をしていたというのだ。
「そう・・ですか、こんなところで何をしていたのです?」
「んー、ルックルック!ここ墓場っしょ?弔いっスよ」
無駄に英語を使ってくるのが謎だ。
若いっていいね。
「弔い・・・、そうですか」
「まぁそこは気にするとこでもないっスから」
細かすぎる装置が組み込まれたような、若葉色の瞳を細めて少年は言う。
どうやら腕だけではなく、ブーツかと思われた足の部分も、シルバーのバネがついたロケットのようだ。
まるで、スチームパンクの世界である。
「何かよく分かんないけど・・これで砲撃とか、出せたりするの?」
そう平坦に言いながらも、表情は興味津々なシニエラだ。
こういうの好きそうだもんな。
「当たり前っスよ、サイボーグなんスから」
「採用」
「シニエラ・・」
それを聞いた瞬間に親指を掲げ、その二文字を言う銀髪の天使。
趣味まで無表情ではないのが、こいつの好きなところだ。
「いいよね、女神様」
「え・・ええ、はい」
「この僕が言ってるんだ、きっと損はしないよ」
そこまで断言されると、逆に断りにくい。
「皆さんはいいのですか、この方を入れても」
「いいんじゃない?何か強そうだしねっ」
「そうですわね、機械関係は分かりませんけれど」
「女神様がいいと言うなら」
「いい゛よ・・」
「頼りになりそうですしね!」
後ろでガッツポーズをするシニエラ。
どうしたの君。
「そういえば、名前を言いにくそうでしたが・・仲間ですし、せっかくなら教えていただけませんか?」
「『人間型No.101』っス」
「に、にんげんがた・・ですか」
「せっかくだしー、ゴッドセンスで決めてくれたら嬉しいっスねー」
ゴッドセンス、これ如何に。
「そうですね・・・・“101”ですから、カタカナで読んで“イレイ”というのは?」
「おーっ、ゲキヤバス!マジ感動っス!!」
「そ・・そうですか」
・・まぁ、それならいいんだ。
よければいいんだよ。
「んで女神様たちは、これからアドベンチャーなわけっスか?」
「はい、そうですが」
「それなら、隣の病棟にいいのがいましたよー」
彼が言っているのも、【白き灰の病棟】だ。
どんな奴がいるのかは不明だが、ここまで言っているんだから、行く価値はあるはずだ。
「そうと決まればBダッシュっスよ、女神様」
「・・こりゃあ婆やには理解できんのう」
いや、私も8割くらい分かってないから大丈夫。
たぶん、天使組と監獄組はイマドキだから分かってるな。
ゆとり世代め。
詐欺師も半分くらいは理解してるか、別のこと考えてるかだな。
「僕を信じていれば間違いはないんだよ、女神様」
「ビリーブ俺っスよ、女神様」
いつの間に意気投合したんだ、君たち。
「・・仕方ないですね」
金具の軋む少年の姿を眺めながら、半BBAも後ろをついていこうと思う。