7.いわくつきの看守長
【STAGE:腐臭のする監獄】
「何を馬鹿げたことを・・女神様ともあろうお方が」
「馬鹿げてなどいません、そのままの意味です」
たとえどれほど上級の悪魔だろうが、フルパワーでもなければ私に敵わない。
それこそ、この監獄を破壊するくらいじゃないと。
「生憎僕らは平和主義でして。監獄を壊させようなどとお考えなのでしょうが、さすがにそういうわけにもいきませんよ」
バレた。
しかも一瞬で。
こいつ、サトリなんじゃないの?
「では、せめて看守長を我々の仲間に」
「・・・。」
「・・いい゛、よ・・・」
この話の中で、初めて口を開いた看守長。
「せとい゛ら、が・・や゛るから・・・・ね、」
「・・ローズ」
「ここ、が・・・・こわ゛され、たら゛・・だめ・・!」
片言ながらも、言葉には強さが入っている。
この覚悟と貫禄は、さすが監獄の長といったところだ。
「昇格でも何でも引き受けますが、それはいただけない」
「本人の口から聞いたのですから、いいのではないですか?それ相応の覚悟もお見受けしましたし」
どうなっても、決めるのは本人だ。
「・・本当にいいんですか、ローズ」
「う゛ん・・・・・てきたい゛、しても・・」
敵対、か。
それもそうだ。
自分と同じ場所で過ごした仲間が、敵になるんだもんな。
「見損ないましたよ、看守長」
それではこれで、と副看守長が部屋を出る。
「あ、えっと、じゃあ僕も、」
「待ちなさい」
「か、すみ゛・・」
名前を呼ばれ、あからさまに嫌な反応をしている青年は、悔しみながらも足を止めた。
残念ながら、君も餌食だ。(下衆
「霞さん、でしたか・・あなたは、来てくれますね?」
「っえ、いやー・・・僕も悪魔なんですけど・・・」
「来なさい」
誰が言ったのかと思えば、片言の片鱗もない看守長だった。
「あなたは私と生きる運命なのよ・・ね、ガッティーナ(子猫ちゃん)?」
「~~っ・・・・もーーっ!いいですよ、行きますから、行きます!!」
これはすごい。
・・が、割とわけが分からん。
まるで人格が変わったように、さっきまでの幼女らしさは消え、言いまわしはどこかのお嬢様かのような。
というか、これが噂のツンデレか。(すっとぼけ
「・・そういえば、看守長の種族は何なのですか?」
「ゾンビよ」
“ゾンビ”・・とは。
ゲームやアニメでも大活躍の種族だな。
まさか、本当に実在するとは・・。
脳は死んでも肉体は生きている、どこまでも不死身の厄介な種族でもあるが。
「まぁ、私はこの身体の主だけれど」
「・・主、とは?つまり生前の?」
「そう。鋭いわね、女神様」
なんでも、この身体で死ぬ前の人格なんだそうだ。
空腹が満たされているときや、活動しやすい夜は、喋り役として出てこれるらしい。
何とも便利な仕組みだ。
「あの能無し幼女と違って、使える能力も増えるのよ」
「へぇ・・・素晴らしい姿じゃないですか」
「長くは持たないけれど、ね。せいぜい、一回死ねば終わりだわ」
・・また、婆やにゾンビのことを教えてもらおう。
話の次元が違いすぎる。
「・・とにかく、あなたがたには来て頂けると」
「そうね」
「・・はい」
青年のほうは惜しむ風だったが、それも仕方ない。
いずれ、彼のような男の力も必要になるだろう。
「本当に、後悔はありませんね」
「もちろん。・・セトイラなら、任せても悔いのない奴だもの」
「あなたは?」
「・・・うちの看守長は、言っても聞かない幼女なんでね」
さすが、説得力がある。
見るからに苦労性っぽいもん。
「・・そうですか、それでは」
ひとまず、門の前の愚民たちの元へ行こう。
静けさの残る廊下を後にして、恐ろしい監獄から抜け出た。
「愚民どm・・・皆さん、新しい仲間です」
「愚民っ!?だいぶ辛辣だよ女神様っ!?」
「ここまであなたを支えてきた僕らに“愚民”だなんて・・せめて僕以外にしてくれるかな」
「クズは嫌いじゃないけれど、綺麗な薔薇には棘があるということですわね」
「こういう女神様のほうが、婆やは人間臭くていいと思いますがねぇ・・」
即反応が返ってきた上に、4人で一斉に話された。
「まぁいいじゃないですか、こちらが看守と看守長の」
空洞の双眸を持つ幼女と、黒き翼を持つ青年。
ゾンビと悪魔に目を合わせてしまえば、それは。
「「「きゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」」
「ちょっと皆、驚きすぎじゃない?単なるゾンbおぼろろろろろrrr」