6.監獄と腐れ外道
【STAGE:腐臭のする監獄】
「それで、話とは?」
「・・・、ああ」
監獄に入るのを執拗に拒んだ詐欺師を筆頭に、私以外入るなと言われたものだから、異様な幼女と青年看守の三人でお話中だ。
どうやら青年の種族は“悪魔”らしく、黒い羽根の出し入れを制御できるのを見ると、割と階級は高い。
「えっと・・まずそちらの看守の方の、」
「看守長のローズマリーです。あ、何なら副看守長もお呼びしますが」
「じゃあ、お願いします」
青年が部屋を出て、幼女看守長と二人きりになった。
気まずい。
・・ていうか、やっぱり看守の長だったのか。
確かにあんな力もあれば、そりゃねぇ。
「あの・・さっきは申し訳ありません、大切な入り口を破損させてしまって」
「・・・う゛ん・・いい゛よ」
「しかもあなたが看守長様だったとも知らず、身勝手に攻撃まで・・そういえば、お怪我は?」
「だい゛、じょうぶ・・・なお゛った」
「そうですか、それなら・・・・って、あの短時間でですか?」
私が攻撃したのはほぼさっきの事だし、こんなに早く治るのはおかしい。
彼女が人間ではないことくらいは分かるが、どういう技術だろうか。
「失礼します、看守長・・それに、客人の女神様」
「あ゛ー・・・」
先程言っていた副看守長らしき男が、頭を下げた。
片言の幼女は手招きをして、親しそうに横に座らせる。
「話は伺っております、副看守長のセトイラ・グースです。お見知りおきを」
背中の羽を隠そうともせず、温和そうに微笑む男。
間違いなく、こいつは“上級悪魔”だ。
「お忙しいのに申し訳ない・・ここまで騒がせることではなかったというのに・・」
「いえ、女神様ともあろうお方が、我々に大事な話があると聞いたもので・・ああ、ローズの話なら僕が代わりに」
ちらりと横を見ると、幼女のほうは、満足そうに青年看守とお喋りしている始末だ。
「では、本題ということで」
ここまで集まられたのだから、もういっそ3人とも仲間に入ってもらうか。
・・だが、天使たちは文句を言うだろうか。
何せ相手は、自分たちが生まれる前から敵とされている“悪魔”だ。
「あなたがた三人に、私たちと共に旅をしてほしい」
「無理です」
即答だった。
青年のほうも、“まさか自分もか”といった表情をしている。
「少なくとも、僕と霞は悪魔。いくらメリットがあるといえど、神の元へ行くのはおかしいかと」
「僕も、そう思います・・!」
「・・・・そうですか」
ここはもう、諦めるしかないだろうか。
なかなかの強者だろうが、こうまで言われては仕方ない。
・・あ。
「それでは・・ローズマリー看守長は、来ていただけるのですね?」
「・・・た、び・・?」
看守長様はきょとんとしているが、副看守長様の目つきがとても険しい。
軍隊ってこんなに恐いのかよ。
こちとら元人間の女子高生だよ。
「無論、却下です。看守長がよくても、我々の規律が乱れるでしょう」
ああ、こういうときにこそ話術が欲しい。
ていうか詐欺師連れてこればよかった。
早く騙して仲間に入れようぜ?
「・・私の有能な部下たちを手配させて、看守に入れるというのは」
「天使などという下劣な種族を?却下です、ここを汚さないで頂きたい」
「ならば」
もう、選択肢はこれしかない。
「実力行使ということで」