4.大樹に潜む呪術師
【STAGE:呪術師の樹海】
「これは・・またとんでもない大木ですね・・」
「話によれば、この木の中に家を作って住んでいるそうですわ・・」
「本当に~?こんなとこ、どうやって・・」
「でも、魔法とか呪術じゃぱぱっとできたりとか・・」
呪術師が住んでいるらしい大樹の前で議論を交わしていると、エリタが口を開いた。
「!・・少し静かに、皆さん・・・何かの心の声が聞こえますの・・」
ひとまず口を閉じ、エリタの反応を待った。
30秒ほどすると、彼女の桃色の瞳が大きく開き、また口を開く。
「“こんな樹海に何をしに来た”、“死にに来るには人数が多い”・・ですわね、呪術師さん?」
「・・・その通りじゃお嬢さん、人間揃いではなさそうじゃのう」
いつの間にか、大樹の枝に座っていた呪術師らしき少女・・いや、幼女は、私たちのほうに飛んで降りてきた。
「女神様には、こんな陰気臭い場所は似合いませんよ」
まるで老婆のような口調で、優しく微笑む呪術師。
深緑色のローブに眩しく光る金髪に、宝石かのような紫の瞳。
だがその姿は完全に幼子で、それらしいのは服装だけといった感じだ。
「あなたが・・呪術師で、間違いありませんね?」
「ええ、その通り。迷わずにここまで来れたとは、さすがの面目ですじゃ」
見た目は幼くとも、年季の入った口調で大体わかった。
「さっそくですが、私たちは、あなたに願いがあって来たのです」
「あら、そうでしたか・・それはまた、こんな婆に何の御用で?」
「私たちと共に、旅をしてほしい」
「・・・ほう」
これには驚いたようで、少しあどけない表情を見せた。
・・さぁ、どうだろうか。
「女神様のためなら、婆やはどこへでも・・お供致しましょうぞ」
おお、またまたあっさり。
「そうですか・・それはありがたい」
呪術という武器があるのと、あとは経験が深そうな人がいてくれるほうが、何か嬉しい。
とりあえず、交渉成立だ。
「いつか出るべきところとも思っていましてねぇ・・いやはや、まさか女神様ともあろうお方から手を伸べられようとは」
「当然のことです・・あなたのような存在が必要なのですから」
あぁそうそう、この辺で自己紹介も。
「あと、あなたのお名前を」
「名前・・なんて、忘れてしまいましてねぇ・・“婆や”とでもお呼びください」
名前を忘れるくらい生きている、ということは・・つまり私より年下で、天使たちより年上だな。
実質、私より生きている奴はいないだろうし。
「んで、私がハニエラでっ」
「僕がシニエラで」
「私がエリタですわ♪」
「何とも可愛らしいお嬢さん方ですが・・そろそろ屈強なのも入れてみたらいかがです?」
「あぁ」
それは確かに。
このままでも世界を滅ぼせるような気はするが、実のところ、私は『魔王』の力を知らない。
たとえ最後に肉壁となろうと、そういう存在も必要か。
じゃあ、ムキムキを探そう。(直球
「それじゃあ次は、ここに行くべきだよ」
マップを開いて、シニエラが指を差す。
指の先にあるのは、【腐臭のする監獄】だ。
「ここから西に向かえば、きっとすぐだよ」
「ええ・・でも、なぜ監獄に?」
罪も何も犯していない、あくまで神聖な私たちが行くべき場所ではないはずだ。
「この監獄の看守たちが、軍隊のエリートだからね」
軍隊、か。
それなら確かに、すごそうな奴もいるだろう。
「でも、看守なんかどうやって~?明らかに働いてるし、そんな簡単に監獄に入れてもらえるの?」
「そんなの、血祭りにあげるだけだよ」
「天使様までがそんなことを言われるとは・・」
それはちょっと殺伐としすぎかな。
完ッッッ全に、私たちのイメージが崩れるよね。
ていうか婆やが引いてるから。
「とりあえず・・・私のチート能力と、婆やの呪術があれば大丈夫でしょう」
「女神様にそう言われるとは・・、身に余る光栄ですじゃ」
「完全勝利ですわね、それは」
監獄も何もあったもんじゃないよ。
「さ、決まったなら行こうよ!ムキムキが逃げないうちにっ♪」
腐臭と死の香る監獄には、どんな筋肉がいるのだろうか。