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12.琥珀と白衣

【STAGE:白き灰の病棟】 【SIDE:女神、シニエラ、霞、イレイ】


とにかく誰か見つけるまで、渡り廊下から看護室まで、足がもげるほど歩き続けて1時間半。


誰も、見つからない。


「それはさておきおはようございます、シニエラ」

「おっはようございまーすウェーイ」

「ウェーイ」

「ウェーイ」


というやり取りも、1時間半繰り返している。


「全ッッ然見つからないじゃないですかイレイ、もう私たちの足は限界ですよ」

「俺もそろそろ足が全壊しそうなんだけどさー、絶対いるはずなんスよー・・」


とは言うものの、一向に見つからないのだが。


院長室だってトイレだって見て回ったし、いそうなところはもう・・。


「!・・・屋上だよ、女神様」


「ほいきた出発!!」

「そいきた集合!!」

「しゅっぱつかくにーん!!」


「「「「うぉぉぉおおおぉぉぉぉぁあああああぁぁあぁぁあ!!!!!」」」」


まさに低級悪魔のような雄叫びをあげて、私たちは走り出した。


**************


熱い叫びを冷ますような、静かな風が吹く屋上。

墓場を一望できるその眺めは、はっきり言って不穏だった。


そしてその屋上に寝そべる、白衣の男。


「・・あなたが、元ヤン囚人あがりの」


「うわー、大当たりだよ」


飄々とした糸目がこちらを向いて、へらりと笑った。


シニエラ様の予想は的中だったらしい。


「その通りだよ女神さん、俺がその元ヤン囚人あがり兼医者だ」


白衣が映える褐色の肌に、クルミ色の癖毛。

糸目を開くと分かる、琥珀色の美しい瞳。


これは余談だが、昔、南の地方では、エルフの目玉が高級な妙薬として使われていたらしい。


婆やがいつの間にかこいつをローズマリー状態にしていたり、詐欺師がその目玉を売りに出したりしないかが心配だ。


ああ見えても仲間思いな二人だし、大丈夫だと信じたいが。


「シニエラ、他を呼んできてください」

「御意」


やけに変わった返事をするようになったな、この子。


「そして本題ですが、元ヤン囚人あがり兼医者さん」


「遠路遥々何の用ですか、女神さん」


「私たちと共に旅をしてほしい」


「ふーん、いいよ」


あ、軽い。

しかもOK。

やったじゃん。


「あなたのおかげですよ、イレイ」


「おー、さすが俺!テン上げっスわー」


・・相変わらず8割は理解できないが、まぁよしとしよう。


「あなたのお名前を」


「レギート=イレンジェ・グロスカ。光栄だねー、そこらの女がハエに見えるほど麗しいよ、女神さん」


「それはありがとうございます。ちなみに、言葉より物のほうが嬉しいです」


「おーおーキツい性格してんねー、あいにく貧乏なもんで」


砕けているというか何というか、新鮮な奴だ。


なんか好き。

素で好き。


「あ、発見してんじゃん女神様っ!」

「僕のおかげだよハニエラ、聞いて、僕のおk」


「な、何てこと・・エルフではありませんか、早く言ってくださいまし!!」

「エリタ、調合の準備じゃ」


「待て待て待て待て待て薬品厨ども」


真面目に待って、君たち。

私、ちょっと信じてたんだけど。


「何ですか女神様、エルフの瞳は貴重で・・」

「そうですのよ、いい獲物を見つけてくれましたわ・・♪」


「ちげーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーよ」


せめてセリフだけにして、エリタ。

指を折りながらニヤニヤするのはやめて。


「とりあえずその欲望は置いといて・・。仲間に入ってもらったんですよ」


「あら、そうでしたの?・・・・・・チッ」


「おーいおいおいおいおい詐欺師この野郎」


ちょっと腹黒さ出てきてるよね。

徐々に真っ黒になっていくんじゃないの?


「それなら仕方ないですねぇ・・」


婆やも渋々納得し、調合機具を片付けていた。


「エルフという種族もい畳まれますね、レg」


「ちなみにお嬢さん、俺の眼っていくらくらいでー?」

「そうですわね・・・貴族なんかの薬剤師を相手にすれば、ざっと数千万・・いや数億」


こら詐欺師。

勝手に見積もるな。

そして被害者も乗っかるな。


「これだけ歩いて仲間を見つけ出したんですから、もう少し気を遣いましょうよ」


「これは偽名でしょ?俺は君の本当の姿が見たいな」

「うふふ、口だけですのね」


・・もう、何も言うことはない。

優しい言葉をかけてやったのに、詐欺師を口説いてる医者なんてもういなかったのさ。

偽名使われてるけど。


「しかし女神様・・これから北上する【悪魔神楽あくまかぐら】は本当に危ない場所だと・・・」


「・・・・分かっています。仲間と己の命を失う覚悟は、とうにできていますから」


婆やが、神妙な面持ちで話しかけてきた。


「ねっ、その前にさ!ここの繁華街でパーッと遊んじゃおうよ~♪」

「暗い雰囲気になっていても仕方ないですし、よければ皆さんで・・」

「そっスよ女神様、俺らはまだバリバリのゆとりなんスから、遊ばないとー」


そう言って三人が指さす場所が、【悪魔神楽】の前の【第一・第二混合繁華街】だ。


どういうところかは知らないが、“繁華街”というのだから、それは賑やかな街なのだろう。


「そうですね、少し寄り道していきましょうか」


「おーーーっ!!!」



こういうのは、転生前以来なのかもな。


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