クラン大陸編③-リンゾ町ついて知るー
パーティ登録を済ませると、ギルドを出る。
ちなみにパーティ名は『悠久の翼』になった。
アタシとしては『風の向くまま、気の向くまま』にしたかったのだが・・却下された。
シャレの分からん連中である。
「とりあえず、武器屋と防具屋に道具屋に行きましょう」
「順当な線だな。ついでに食堂も行きたいが?」
「周ってからね。時間がかかるようならその時考えましょう」
受付嬢から聞いた場所を目指して歩き出す。
まあ、簡単な地図もあるし迷わずに着くだろう。
「鍛冶見習いにさせてもらえるといいんだどが」
「まあ、頼むのはタダなんだしアタシからも頼んでやるわよ」
「ええだか?」
「パーティの強化に繋がるんだし、当然でしょ」
いざとなったら、支度金を出しても良いしね。
まあ、出すのはユズルだけど・・。
「それにしてもこの町の町長は何考えているのかしら?建物の状態からしてこのままじゃいつ潰れてもおかしくないわよ」
「確かにな。人が住める状態じゃないな」
「これは多分、モンスターの大発生による被害だろうな」
「それでこんなに衰退してるわけだ」
―――モンスターの大発生。
小物のモンスターが大量に発生すると言うこの現象は、ただ増えると言うだけでなく大移動して田畑を荒らす『自然災害』の様な現象で、このように建物にまで被害が及んでしまうこともあるのだ。
そのためモンスター大発生時には冒険者ギルドでも一大イベントとして冒険者に登録している全ての者でモンスター討伐を大規模で行うのだ。
なのに・・である。
町がこれほどの被害にあっているのは、思った以上のモンスターが発生したのか。
それとも・・。
「冒険者の数が圧倒的に少ないんだろうな」
アタシが頭で考えてたことをロックが言葉にする。
ここが辺境の大陸の小さな田舎町であると言うこと。
そして、魔王の存在で冒険者になる者が減ったのだろう。
「ロック・・。あんた来る大陸間違えたんじゃない?」
「そうでもないさ。お前たちに会えたからな」
「アタシたち?」
「ああ・・。お前たちがいれば別の意味で田舎暮しでも刺激がある毎日を過ごせそうだ」
「アタシたちを過大評価し過ぎじゃない?別にベテラン冒険者でもないんだし」
まあ、ゲームの中でならベテランを超えたスペシャリストまで上り詰めたりしたが・・・この世界はリアル。
ゲームの世界の常識がどこまで通用するかどうか・・。
「ベテランの強みは『経験』だけさ。そこから何を学び、どんな答えにたどり着くか・・。俺はそれこそが重要だと思うがね」
「答えが1つとは限らないんじゃない?」
「そういう発想がスゴイってことなんだよ・・」
分かってねぇな的な笑みを見せるロック。
別に誇れるようなモノじゃないしね。
廃人レベルまでゲームをして培ったもので自慢できるモノでもない。
いや、むしろダメ人間だからこそ『成しえたこと』だったにすぎないのだ。
「・・リアルでも通用するぞ。お前の知識は」
「ユズル?」
「ガキ神がお前を選んだ時点でこの世界はリアルであってもお前『より』の世界にできているってことだ。多分俺の常識の方がここでは役に立たないだろうな」
「・・確かに、そうかもね」
この世界への転生者を決めたのがあのガキ神である以上そういうことなのだろうが、そうなるとやっぱり最初にすべきことは・・。
「基本中の基本・・レベル上げか・・・」
地味だが、身体が資本である以上レベル上げは外せない。
しかも早急に上げれるだけ上げるべきだろう。
「ちなみロックのレベルは?」
「27だ」
「あー・・壁にぶつかった系か・・」
「―――・・何でもお見通しか?」
「知り合いにもいたからね。って言うか、もったいないわね。まだまだこれからじゃない。ステータスはどうなってるの?」
「ステイタス?」
「ちょっと冒険者カード見せてみなさいよ」
アタシたちの冒険者カードの発行は夕方に渡されることもあって今はない。
なので、元から冒険者のロックに見せてもらうことにしたのだ。
「これは・・そう言うことか」
冒険者カードを見せてもらって納得した。
カードに記載されているのは以降のことだった。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
―冒険者名・ロック―
冒険者6級 職業:戦士 Lv.27 HP:173/173 MP:87/87 SP:151/151
技:『一刀両断』『連続斬り』『受け流し』
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
最低限の情報のみ。
そして、一番気になったのは技の数だ。
レベルと技の相対が合っていないのだ。
なにより、OPが表示されていないということは・・?
「ねぇ、技ってどうやって覚えたの?」
「教えてもらうんだよ」
「それって、『魔法』も同じなの?」
「魔法も技も有段者に教えてもらって使えるようになるんだ。って、イズミも魔法を教わったから使えたんだろう?」
「アタシは独学で覚えたのよ」
「・・マジか?そういう者がいるというのは知っているが、見るのは初めてだぞ」
「でも、そっか・・それでこんなにバランスが悪い感じなのね」
職業が戦死だから魔法が使えないのは理解できるが、技が圧倒的に少ないのがロックが冒険者に限界を感じた理由なのだろう。
「・・なあ、『仲間』になったことで、メンバーのステータスが確認できるみたいなんだが・・」
「え?ウソ・・」
視線を左下に移すと点滅が見える。
面倒だが、指で『触る』とステータス画面が広がる。
自分のを合わせて5人分のステータスが確認できるようになっていた。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
―ロック―
Lv.27 HP:173 MP:87 SP:151 EXP:2070 OP:1057P
勇気:174 知識:78 包容力:152 熱意:120 想像力:142 絆:81
能力:なし 技:『一刀両断』『連続斬り』『受け流し』
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
ステータスを確認をして分かった。
OPがちゃんとあるということを。
技や魔法を覚えるために必要なこのポイントがあるなら・・。
アタシはロックのOPの部分を押してみる。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
OP:1057P
技&魔法を覚えましょう。
下の項目から覚えたい項目をお選びください。
『剣技』
『槍技』
『斧技』
『弓技』
『刀技』
『忍術』
『攻撃魔法』
『防御魔法』
『回復魔法』
『精霊魔法』
『召喚魔法』
『錬金魔法』
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
やはり画面が切り替わった。
つまり、これで好きな技、魔法を取得できるということだ。
・・と思ったのだが、調べて分かったのだが、『職業』が邪魔をして魔法の項目は一切選ぶことはできず、物理攻撃系も『剣技』と『斧技』しか選択できなかった。
「職業の壁ってのもあるのね。職業の変更ってできるの?」
「1つの職業のレベルが20以上になると職業の変更は可能になるんだが、『設定士』に決められた金額を納めないと変更してもらえない上に『上級職業』は複数の職業のレベルを20以上にする必要があるらしい」
「・・名作レトロゲームにそういうのがあったわね。確か・・ド〇クエシリーズと言ったかしら?」
小学生の頃にやったきりなので記憶があやふやだがシリーズの途中からあったシステムだったと思う。
今のゲームは職業の変更はレベルに関係なくお金さえあれば好きな職業になれるし、『職業』という決められたものがなく、自分が覚えたい技や魔法を覚えて自分好みのキャラクターになれるというのが『ウリ』のゲームが主流だったからだ。
まあ、リアルではこれが限界なのだろう。
何でもかんでもできるってことはゲームならではのことであって、リアルな世界で矛盾がないようにするには『職業』と言うシステムこそが必要なのだろう。
「まあいいわ。ステータスの更新は帰ってからゆっくりとやりましょう。まずは装備品を充実させないとね」
「・・やる気満々だな」
「ゲムヲタ魂に火が点いたわけよ。こういうのはアタシの分野でしょ」
「そうだな。ここは得意分野で分担するのが良いだろうな」
「アンタの得意分野は?」
「交渉事や管理かな・・今のところは」
「あー・・なんか納得だわ」
そういうのはアタシは無理だしね。
適材適所ってことか。
会話を弾ませながら受付嬢に聞いた場所に着く。
ここが・・・・・。
思わず言葉を失ったわ。
「半壊してるじゃないこの店!」
リリヴェルの言葉はそのまんまで、壁は崩れ店の中がところどころの隙間から内装が見える。
「私たちが冒険者になりたてなんでこんな汚い店を・・」
「そうじゃないわよ。この町の規模じゃ武器屋ここだけでしょうね」
「・・ってことは町がこの状態になったのは最近らしいな」
「そうでしょうね」
武器屋の崩れかけている壁の継ぎ目を見てユズルは確信したらしい。
アタシも壊れた壁の破片が地面に落ちているのでそう結論付ける。
「町全体に活気がないのもこれで頷けるな」
「そうね。モンスターの大群に襲われたばかりならこの状況も分かるわね」
「とにかく、店に入ってみよう」
ドアを開けると、ガランとした店内が視界に入る。
見事なまでに何も置いてなかった。
「・・何も無いわね」
「店の人間もいないのか?」
「おかしいわね?ここで武器が買えるって教えてくれたんだし誰もいないってことはないはずだけど・・」
人の気配が全くしない。
それは店の奥もだ。
つまり、誰もいないってことだ。
「出かけてるんじゃないか?」
「・・なるほどね。店に武器が無いってことは武器に必要な鉱石でも探しに行ってるのかもね」
「そうだと思うだど。武器屋に武器が置いてないなんて大事なんだど」
口数の少ないボルボが饒舌になっている。
やっぱ、鍛冶関係のことには並々ならぬ思いがあるようだ。
「客か?ワリーな、今売れる商品がなくてよぉ。暫くは予約品を作るので手一杯なんだ。予約を受け付けてやれるが今の感じだと・・おい、マイル。どうなってる?」
「ハアァ・・ハアァ・・親方ぁ、ちょっと休ませてくださいよぉ・・」
ドアが開き、ヒゲ面のおっさんと身体の2倍はあるであろうリュックを背負ってきた長身の男が現れた。
「こんくれぇでへばってんじゃねぇ。ほら、予約表を確認しろい」
「う、うす。え・・え~と、今の感じだと3ヶ月後まで予約で一杯っス」
3ヶ月か・・。
なら丁度いいんじゃないかしら。
「防具屋や道具屋も同じ状況なのか?」
「道具屋は少しは在庫あると思うスけど、防具やうちと一緒じゃないスかね?」
「まあ、無いもんは仕方ないわよね、それより親方さん」
「何だい、お嬢ちゃん?」
「もう1人弟子を雇ってみない?有望な人材なんだけど・・」
「それは願ってもねぇんだが、見ての通り人を雇えるほど潤ってねぇからよぉ」
「軌道に乗るまでは給金は一切いらないわ。衣・食・住はこっちで面倒見るし、ついでにこの店の建て直し代も半分まで面倒見るけど?」
「そりゃあ、条件が破格だな」
「先行投資ってやつよ。同じパーティのメンバーだしね」
「どうでもいいが、そのお金って俺の持ってる金でか?」
「当たり前でしょ。アタシ一銭も無いし」
「分かった。俺が交渉する・・」
そう言うと、ユズルが親方内緒話を始める。
暫く話し込んでいると、ユズルはボルボを呼んだ。
「できれば住み込みで働きたいど」
「そうだよな。じゃあ・・」
「ふむふむ・・。んじゃあよぉ・・」
「鉄の剣なら・・」
「おう。こりゃあ・・」
「じゃあ、3ヶ月で金貨1枚と・・・」
「それだと、出し過ぎなんじゃねぇのか?」
「いや・・それくらいは面倒見させてください」
時々聞こえる話し声。
そして談笑。
どうやら、話がまとまったようだった。
「で、どうなったの?」
「ボルボはここで住み込みで弟子見習いからってことで働かせてもらうことになった。3ヶ月の住み込み代金として金貨1枚、店の建て直し代で金貨10枚、あと、見習い修行と言うことで鉱石採掘をすることになったから・・」
「ほう。アタシたちも手伝うわけね?」
「ダメか?」
「ダメなわけないじゃん。こっちにしても良い経験値稼ぎになるわね」
「もちろん、ギルドを通しての専属依頼にすっからよぉ。よろしく頼むぜ」
「了解。んじゃあ、ギルドの方に移動しますか」
冒険者ギルドに戻ってきて受付嬢の下で依頼作成。
その依頼を受諾し、サインをする。
サインにはパーティリーダーの署名でなければならないらしい。来てよかったわ。
依頼では、マリヒリャ鉱山で鉄鉱石と鋼鉱石を10キロずつ集めると言うものだった。
ボルボ曰く、楽勝な依頼らしいが報酬金が1日銅貨2枚のため普通なら誰も受けないような内容らしい。
まあ、駆け出し冒険者ならこのくらいのリスクは流して受けるべきだろう。
依頼を受けた後、ボルボとは武器屋で別れることになった。
さっそく修行に入るらしい。
鉱石採取は、明日の朝こちらから迎えに来ることになった。
どうやら、明日のみ兄弟子のマイルに案内させてくれるとのことだった。
ボルボと別れ、食事をしに行くことにする。
「これは・・・」
「圧倒的に塩味が足りてないな」
「つーか、具も少ねぇぞ?」
「味はともかく、私には量は丁度良いわね」
食堂兼宿屋での食事。
ランチメニューはコンソメ系の野菜スープと大麦パンだった。
しかし、野菜スープのはずなのに野菜がほとんど入っておらず、また味付けも極薄だった。
マズくはないがもの足りない味であることは確かだった。
量的に満足できたのは風妖精のリリヴェルだけだ。
「すまないねぇ。モンスターの大発生の影響で何もかもが足りなくてねぇ」
「物資の調達は?」
「1週間はかかりそうなんだよ」
「モンスターの大群はこの町で食い止められたんですか?」
「何とかね。でも、おかげで町はこの通りだよ。今は何もかもが足りない状況さね」
それはつまり、資材・物資不足と言うこと。
そして・・。
「もしかして、冒険者の大勢が怪我で動けない・・とか?」
「そうなんだよ。しかも中堅どころが軒並みね。今動けるのは5~6組のパーティだけでね」
ギルドでクエストの受諾を受けに行ったときバラックたちがいなかったのはそう言うことか。
今、この町は何もかもが不足していてその日暮らすのに精一杯な状況なのだ。
魔王がどうの言っている場合ではなかった。
「つまり、アタシたち二人の能力で何とかするウォーミングアップってところか・・」
「わざとこういう状況の町に転生させたってことか・・」
「ガキ神の思惑通りってのが癪だけど、やるしかないわね」
まずは、この町の復興を成し遂げろ。
ってところなのだろう。
「どうする?」
「一朝一夕には無理ね。まずはレベル上げと並行して物資不足の解消からでしょうね」
「どれくらいの期間で復興させるつもりだ?」
「3ヶ月ってところね。勝負は最初の1ヶ月で資材・物資不足を解消させることね」
1日も無駄にできない。
そのためには1週間でできる限りレベルUPする必要がある。
さらに言えば、レベルを上げることでお金を稼ぐこともできるのだから・・。
そしてそのためには・・。
「どうやら資金をさらに切り崩す必要があるようだな・・」
「そうなるわね。食料の確保は頼んだわよ」
「貰った能力をすぐに使うことになるとはな」
その日はロックとリリヴェルを連れて館に帰ることにした。
驚いたのは、敷地内に入るまでロックとリリヴェルには館があることすら気づかないということだった。
どうやら、この館は特殊な結界を施されているようだ。
館の中に入るとそのまま応接室に入る。
ロックは装備を外して、長いソファに倒れこんだ。
リリヴェルは物珍しいのか慌ただしく飛び回っている。
アタシとユズルも装備を外し、二人を放って内緒話を始めた。
「それで、通貨変換はどんな感じ?」
「日本円にすると金貨1枚で1万円と言うのは本当だな」
「そう言えば、モンスターを倒したら金貨を手に入れられるって言ってなかった?」
「それなんだが、アイテムボックスの金貨が2枚増えていたぞ」
「ってことは・・・」
アタシは自分のアイテムボックスを調べると金貨が2枚入っていた。
なるほど、金貨自体が見えると世界観がおかしくなるのでアイテムボックスに入るようになっていたと言うことか。
これなら、かなり大胆に復興支援ができるだろう。
「とにかく、『時空転移』で日本に行って食材の買い出しを頼むわよ」
「ちなみに、お前料理は・・?」
「できるわよ。これでも一応一人暮らし歴長かったんだから」
「じゃあ、ある程度幅広く買ってこれるな」
「その前にキッチン用品の確認しておきましょう」
「いや、日用品全体を見ておくのが良いだろう。量が多そうならお前にも日本に行ってもらうぞ?」
「了解」
話を終え、ロックとリリヴェルに部屋を提供して館の中をもう一度見まわる。
必要な日用品をリストアップし、地下室に降りてユズルの『時空転移』を使った。
移動先は、路地裏を想像してだ。
「・・『時空転移』!」
瞬きが終わったときにはアタシたちは見慣れたビル群の隙間にある路地にいた。
「帰ってきたって感じないわね」
「見知った建物のはずなのにな・・」
アタシたちはとりあえず大型ショッピングモールへと向かうのだった。
次回から、町復興イベントの開始になります。