ながれにゆられて
流れるプールのプールサイドを、さきくんと2人でポツポツと歩く。太陽の日差しもあり、気温は確かに暑いんだけど、それ以上に、別の熱さが身体の内にある気がしてならない。
きっと、自分のスク水姿が恥ずかしいんだと思う。メニューをピッと開いて、パーカーを取り出す。パァッと光が出て、パーカーを着た状態になる。これで少しはマシなはずだ。
スタスタと歩くさきくんの後ろをついていく。どこに向かっているのかわからないけれど、はぐれないように少し早歩きでついていく。
「さきくん、さきくん、もうちょっとゆっくり」
だんだんと追いつけなくなってきたので、ついに弱音を上げてしまう。
その声にさきくんが振り向き、慌てた顔で戻ってくる。
「ごめんっす!だいじょうぶっすか?」
「せやでー、おんなのこにはやさしくしたりーなー」
ビックリして振り向けば、流れるプールをぷかぷかと浮き輪で流れるりんの姿があった。浮き輪に足をかけ、まるで風呂にでも浸かってるかのようなポーズで、流れに身を任せている。
止まっていると、りんの方が先に先に進んでしまうので、歩きながらりんに話しかける。
「えっと、いつからいたの?」
「だまーってあるいてるときからやなー。ずーっと、よこをぷかぷかしてたで?」
……全然気がつかなかった。それはさきくんも同じなようで、口をぽかんと開けている。
りんはそんなことは気にも留めず、波間に任せてただただ流れていた。
「じゃあこえかけてよ!」
「だって、みてたほうがおもしろそうやん?」
そうだった、こいつはこういうやつだった。俺は手を額に当て、失敗したと後悔する。気がついていない以上、成功しようがないのだけれど。
それはさきくんも同じなようだった。あちゃーとでも言っていそうな、いや実際に言いながら、後悔を顔に浮かべていた。
「まぁまぁおふたりとも、そんなかおをなさらずに、こちらでいっしょにゆらぎにみをまかせません?」
そんな中、どこからか声が聞こえてくる。
いつの間にか、りんの浮き輪の横に、エアマットのようなボートに乗ったろぜったさんがいた。
本当にいつからいたのかわからず、話しかけられた瞬間にびくっとした。なんでこの人はこうも神出鬼没なのだろうか。缶蹴りの時はきっと本気を出していなかったのだろう。
「まぁまぁというか、いつからいたの?」
「ずーっといましたよ?」
ニコニコの笑顔で微笑むろぜったさん。けれど、どこか不気味に感じてしまう。
「そんなことより、ありすちゃんやほかのこをさがすなら、あるくよりぷーるのほうがらくですよ」
ろぜったさんの話では、ここのプール施設は、実は敷地の半分近くが流れるプールで占められているらしい。先のウォータースライダーや、他のプールアトラクションに移動するのに、まるで環状線のように流れるプールが機能しているのだとか。それなら確かに、歩くよりも浮き輪やボートで移動したほうがいいかもしれない。
仕方がないと再びパーカーをしまい、プールへと足を入れる。さっきまで火照った身体が、今度は嘘みたいにひんやりとする。けれど、それがまた気持ちよくて。
足だけではなく、今度は身体も水中へと沈める。頭まで一気にじゃぼんと。
潜って目を開けてみると、拍子抜けするほどに浅いプールだった。今の身長でいえば胸のあたりまで。大人なら腰まであるかないかぐらいだろう。
けれど、日差しが差し込んでいるからか水中がキラキラと輝いて、とても綺麗だ。
「ぷはっ!」
息が苦しくなってきたので、水の中から頭を出す。
「お?ととっ」
ほんの少しだけ、まるで背中を押されているような感覚。決して強くはないけれど、確かに少しずつ水が流れているのを感じる。
「ひなちゃーん、こっちですよー」
ろぜったさんに呼ばれるがまま、ボートに乗る。ふぁさっとバスタオルをかけられた。見れば、ろぜったさんが優しく微笑んでいる。
「ぬれたままよりもきもちがいいですよ」
その言葉に甘えて、バスタオルで水分を拭き取る。
プールサイドを歩いているだけの時は暑かったのに、プールの冷たさと、日差しの気持ちよさがちょうどいいくらいだった。
ゆったりと水の流れに任せながら、残りの子たちを探して、次のアトラクションへと向かっていった。




