れっつおきがえ!(ぷーるばーじょん) あと
床に手をつき項垂れる俺の前に、ふいに影ができる。誰なのかと思って見上げてみると、今日の主催者であるありすが立っていた。
いつの間にか、着替えも終わっていて、準備万端といった様子だ。髪型もいつもの降ろしたウェーブではなく、編み込みを作ってカチューシャのように乗せている。
「あなたたち、なにしてるんですの……」
ありすの着ている水着は、水着と言うよりは、まるでセーラー服をモチーフにしたワンピースのような水着だった。しっかりと襟までついていて、胸元には小さいリボンが付いている。全体の色は紺色で、一見するとスクール水着とそう変わらないが、襟やリボンが付いているだけでこうも違うのかと感心してしまう。スカートから覗かせる足元も、なんだかいつもと違って……、いたっ!
「いつまでみあげてますの」
気がつけば、俺と同じ目線にしゃがんで、チョップをしてくるありす。たしかに、ずっと見上げていたけどさ……。
「いくらみずぎでも、すかーとのなかをずっとのぞかれるのは、その、はずかしいじゃありませんの」
「えっ!?そんなつもりじゃないし!」
もじもじと恥ずかしがるありすを尻目に、俺は項垂れるのをやめて立ち上がる。
なんだか、他の子たちからの視線が痛い気がする。あんまりそんな目で見るのはやめてほしい。みづきはスカートの裾を押さえるのもやめて。るなは押さえても隠れてないから、意味ないんじゃないかな。
「あらあら、だめですよ。すかーとのなかを、みちゃうなんて」
そう言いながら、ろぜったさんも水着に着替え終わったみたいだ。
シンプルに黒いビキニを着ているのだけど、なんだか、俺たちと背丈は変わらないはずなのに、どこか色っぽいというのか、大人っぽく見えるのはなんでなんだろうか。腰周りにはパレオを巻いていて、それが余計に大人っぽく見える。前から思っていたけれど、なんだか本当にお姉さんっぽかった。髪型も、いつものツインテールではなく、まっすぐに降ろしているから余計になのかもしれない。
じろじろと見ていたわけではないのだけれど、ろぜったさんの水着姿を見ていると、後ろから頭をすぱーん!と叩かれた。
「いたぁ!」
「いいからさっさときがえなさい!」
るなに怒られながら、俺は渋々システムメニューを開く。改めて見てみると、ワンピースだったりスカートだったり、服が増えてきたなぁ、なんて思いつつ、この場所で着るべき「それ」を探して、選ぶ。
ぱぁぁっと光に包まれると、それだけで着替えが終わる。
前にも着ていた紺色のスクール水着姿になって、改めて周りを見渡してみる。……やっぱり、俺だけ色物感がすごい。
ただの水着ならまだしも、胸元に大きく、でかでかと「ひな」と名前が付いているのだ。それだけで、恥ずかしさもひとしおと言うものだ。
「……ひーちゃ、こっち」
みづきに呼ばれて椅子に座らされると、どこから取り出したのか、くしやヘアピンで髪型を変えられていく。昨日も作ってもらった、編み込みのお団子だ。
けれどやっぱり、あまりに恥ずかしくその場でもじもじしていると、不意に手を取られて引っ張られる。片方の手をるなに、もう片方をみづきに取られて引っ張られる。横に並んでありすも付いてきているし、後ろにはりんとろぜったさんもいる。
「ほら!はやくいきましょ!」
「……ひーちゃ、いこ?」
「わたた、まってっ」
俺は2人に置いて行かれないように、小走りでついていく。
「まったく、はしったらあぶないですわよ」
「そんなこといいながら、しっかりついてくんやね」
「そこがありすちゃんの、かわいいとこですので」
わいわいとみんなで更衣室を出れば、いよいよプールだ。いっぱい遊ぶぞ!




