いべんと、るなといっしょに。
「たっきーはかっこいいからね、まちがうのもしかたがないよ」
たっきーって何だよ、友達かよ。
るなはあははと笑いながら言った。以前のおままごとでの仕打ちを仕返しすべく、何かないかと探しているときにあの店に行っていたらしく、既にタツキお兄さんとは知り合いだったらしい。ちなみに俺がタツキお兄さんと呼んでいるのは、「ひなちゃんみたいな子からお兄さんって呼ばれるのめっちゃ萌えるわ。後、できればお兄ちゃんって呼んでほしい。」というタツキお兄さんの熱い要望だったりする。なお、お兄ちゃんと呼ぶのは断固拒否した。
あの後、客引きと写真撮影という事でタツキお兄さんからシールを2枚もらい、レイネお姉さんからも連れが迷惑をかけたという事でシールを1枚もらった。これでシールの枚数は14枚。今日はイベント4日目なのでいい調子なのかもしれないが、ギリギリで半分埋まってないのを見るとちょっと心配になる。
「いやー、ひなちゃんのぺーすならだいじょうぶでしょ。それよりみづきかな。あのこまだ10まいぐらいしかしーるないから」
みづきはどうやら誰も一緒にいないのをいいことに、うさぎ小屋でサボっているか、タツキお兄さんのところにいるかだったらしい。まぁ、うさぎ小屋でもうさぎさんの世話でシール1枚だったり、タツキお兄さんのお手伝いをしたりしてシール1枚貰っていたり、やることはやってるのだけど、いかんせん滞在時間が長すぎるのだ。……初日にお茶をしていた俺が言える事ではないのかもしれないが。
見るに見かねたりんが引っ張って、今日は徹底的に『おてつだい』をさせるそうだけど、昨日あれだけの目にあわされてそれでもなおみづきの心配をしている俺はやっぱり甘いんだと思う。まぁ、妹分だしかわいがりたいよね。
「いや、ひなちゃんのそれはあまいってもんじゃないから」
「ひとのこころをよまないでほしいなぁ」
どうやらみづきが心配だというのが顔に出ていたらしいことをるなに突っ込まれる。そんなに顔に出てたかな。とりあえず顔を両手でぺたぺた触ってみる。……うん、わからん。
「とにかく、みづきのことはりんにまかせていっしょに『おてつだい』するわよ」
るなはそう言うと、座っていたベンチからえいっと飛び降り、俺の方に手を差し出す。俺もるなの手をつかんでベンチから降りる。そして、『おてつだい』を目指して一緒に駆け出すのだった。
ーーーーーー
るなと手を繋いで一緒に歩く。るなはてくてく歩いているが、俺の方が歩幅が短く、ちょこちょこと小走り気味についていく。
てくてくててて。
しばらく歩けば、いつもの商店街。
「お、そこの嬢ちゃん達、ちょっと頼まれてくんねぇか!」
八百屋のおじさんから声をかけられる。
「おじさん、どうしたの?」
「向こうの食堂の親父がさっき買い物に来たんだけどな、あいつネギ買いに来たくせに持ってくの忘れやがったんだよ。ちょっと届けてくんねぇか」
「いいよ!」
『おてつだいをしますか?』というウインドウメッセージが表示される。もちろんはいを選択する。
おじさんはネギを袋いっぱいに詰めて渡してきた。
「悪いな、頼んだよ!」
「うん、いってきます!」
「いてきまひゅ!」
……噛んだ。いや気にしないでおこう。と思ったけど、るなが隣でにししと笑うもんだからとたんに恥ずかしくなった。
恥ずかしさに俯きながらもるなと2人でネギの入った袋を持った。袋の取っ手を片方ずつ。
「まえにもこうやっていっしょにおつかいしたよね」
「はじめて『おてつだい』したときにしたね」
るなが、このゲームがβテストだったときの頃の話をし始めた。俺も、その時のことが懐かしくなったのであーだったこーだったと話をした。
そう言えば最初はるなとしか遊んでなかったのに、いつの間にかみづきがいて、りんがいて、アリスとかロゼッタさんとか、レイネお姉さんとかタツキお兄さんとか、いろんな人と遊んだりした。
まだこのゲームを始めてから2、3ヶ月しか経っていないのに、あっという間に時間が過ぎていくような、そんな感覚だ。
「これからも、もっといっぱいあそぼうねっ」
るなは、金髪を風になびかせながらそう言った。そんなことを言う彼女の顔は、いつもりんと一緒にふざけているような感じの笑い方ではなくて、穏やかな笑い方だった。……普段からそうしていればもっとかわいいのに。俺はそんなるなに、
「うんっ!」
と、最大限に元気に、それでいて自分ができる最高の笑顔でそう言って見せた。
そんなことをしている間に、おつかいの目的地に到着する。
挨拶もそこそこに頼まれたものを渡すと、店主のおじさんがシールをくれた。『おてつだいかーど』に、ぺたり。
「あ、ついでだからこれ八百屋の親父に返してくんねぇか」
そう食堂のおじさんが言うと、目の前にウインドウメッセージ。
俺とるなは顔を見合わせて、苦笑しながら『おてつだい』を引き受けた。




