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いべんと、みづきといっしょに。 1

  「……ひーちゃ、いっしょきて」

  「いいよー、どこにいくの?」

  「……ないしょ」


  イベント3日目。

  昨日はりんと一緒に『おてつだいクエスト』を回って歩いて、一気に6個もシールが集まった。りんはまだ足りないなんて言ってたけれど。俺としてはもう11個も集まったから充分だと思ってる。

  けれどまだ『おてつだいかーど』はまだ全部埋まっていない。だから今日も『おてつだいクエスト』をしようと思っていたのだけれど、そんなときにみづきに声をかけられた。

  まぁ、俺がみづきの誘いを断るわけもなく。意気揚々と歩くみづきの後ろをついていくのだった。

  てくてくとことこ。みづきはも大股でちょこちょこと歩いていく。

  しばらく歩いていくと、たどり着いたのはいつか来たことのある総合デパートだった。ここは迷子になり掛けたりーー実際迷子になっていたのだけれどーーと、るなと喧嘩したりと、いい思い出の少ない場所なんだけれど。みづきはどうしてここに来ようとしたのだろうか。……あんまりいい予感がしない気がするのだけれど、気のせいだと思いたい。

 

  「……ひーちゃ、おててつなぐ」

  「うんっ」


  俺はみづきと手を繋いで歩き始めた。おててをぎゅーなのだ。

  仲良く並んで歩いていると、みづきが指をさして目的地を示す。……まって。あそこは、行きたくない。嫌な予感がプンプンする。


  「み、みづき。わたしいきたくない」


  そう言うと、みづきは握っていた手をさらに強く握りしめ、絶対に離そうとはしなかった。そのままみづきに引っ張られてやってきたのは、前にみづきがガラスにべったりと張り付いてずぅっと見ていたコスプレショップ。メイド服やアイドルアニメの衣装だとか、ふりふりでファンシーな服が多いように思える。よくよく考えれば当然なのかもしれない。元々『ようじょ・はーと・おんらいん』は幼女の外見の大人しかいないゲームだ。普段着れないような服が人気が出るのも当然かもしれない。

  ただ、それを俺が着たいかどうかは別問題であって。今でこそ毎日ひらひらのスカートを履いてはいるが、どうにかこうにか慣れてきただけで、恥ずかしいのには変わりはない。

  それがコスプレだったり、メイド服のような注目を浴びるような服装であればなおさらだろう。

 

  「……いっしょにいく」


  そんな俺の懇願は虚しくもみづきには届かずに、みづきに手を引かれたままコスプレショップの店内へと入っていく。


  「……ちゃっす」

  「おーみづきち。ちゃっす」


  と軽い感じで挨拶するコスプレショップの店員さん。みづきちって言い出したのはこの人か?

  店員さんは前髪がやたらと長く、V系ファッションというのだろうか、わざとボロボロの穴の空いた黒い服を着ていた。なんというか、幼女の身体から見上げるその人は、おっかなく見える。声が男性にしては少し高い気がするが、このぐらいの声の男性もいるし、あんなかっこおっかないような服を着るのは男性ぐらいだろう。

  そんなおっかなく見える人を相手にみづきは平気な顔で近づいていく。店員さんはみづきが近づくと、ちゃっちゃとお茶とお茶菓子を用意した。……もしかしなくてもいい人なのかな?

  店員さんは俺に向かってちょいちょいと手招きをする。俺はいってもいいものかどうか考えていると、カウンターの奥の方から、聞き覚えのあるお姉さんの声が聞こえてくる。

 

  「タツキー、これこっちでいいのー?……ってあれ、ひなちゃんとみづきちゃんだ。こんなとこでどしたの?」


  そこには、服屋『レインボーダー』の店長、レイネお姉さんがいた。レイネお姉さんは何故かこの店で手伝いをしているようで、両手にダンボールを抱えている。


  「おいおい、こんな店はねーだろ。一応姉妹店なんだから」


  タツキ……というのがこの店員さんのお兄さんの名前だろうか。タツキお兄さんはどこか呆れたような声でレイネお姉さんにそう言った。

 

  「いやいや、商品卸してる私もあれだけどさ、こんなコスプレ服、誰も買わないでしょ。奥にある子ども向けのV系の服だって」

  「いや、V系のはともかく、コスプレは人気あるぞ。なーみづきち」

  「むぐむぐ……たっちゃのうってるふく、すき」


  みづきちはいいこだー!とみづきの頭を撫でるタツキお兄さん。みづきも満更でもない様子だけど、そのポジションは俺のなのに、なんて子どもっぽい嫉妬をしてしまう。……今は子どもだからいいのか?

  むむむと唸っていると、レイネお姉さんが話しかけてくる。


  「それにしても、ひなちゃんがこっちに来るなんて意外ねー。こういった服って苦手じゃなかった?」


  そう言って、手に持った段ボールの中から黒と白のシックなメイド服を取り出す。

  というか、俺がひらひらを着るのが苦手なら、毎回ひらひらの服をくれるのはやめてほしい。……結局着るんだけど。


  「あんまりひらひらなのはにがてだけど、いがいって?」


  俺はレイネお姉さんにそう聞くと、レイネお姉さんはそれこそ以外だという風に驚いて、こう言った。


  「あら、今日はこの店の手伝いがくるってタツキから聞いていたのだけど、もしかしてひなちゃん達のこと?そうだとしたら大丈夫?」

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