いべんと、りんといっしょに。
「ふぅん、それは、めずらしいなぁ」
「そうなんだよねー」
翌日。今日も今日とて、『ちゃいるど・はーと・おんらいん』では、『おてつだいきょうかいべんと』が行われている。
そんな中で見つけたレアクエストっぽい何かーー内容はおばあさんの話を聞くだけ、お茶とお菓子付きーーの話をりんにしていた。
「というか、みんなががんばって『おてつだい』してたのに、ひなちゃんはおはなしきいておかしをたべてただけってどういうことなんやろなぁ。しかもそれでしーるももらって」
「いわないでよ……わたしもきにはしてるんだから」
ケラケラと笑いながら、りんは俺のことを弄ってくる。言い方はともかく言っていることは事実なので反論できない。
俺は話題を変えようと別の話を振った。
「ところで、きょうはりんはすることないの?」
「んー、まだいろいろしらべることはあるけど、きょうはひとがあつまらないから。だからひなちゃんと『おてつだい』しよーおもうてなぁ。あ、きのうのはなしほかのひとにもしていい?ひなちゃんのなまえはださないようにするし。……どうせばれるおもうけど」
最後にボソッと言った言葉がうまく聞き取れなかったが、りんに聞いてもはぐらかされるだけなので、不承不承了解する。昨日のレアクエストのことは、いろいろ調べる必要があるからね。そのことで注目は集めたくないけれど、りんは名前を出さないって言ってくれているし大丈夫だろう。多分。
それはともかくとして、今は『おてつだいきょうかいべんと』の真っ最中である。昨日のおばあさんの家から出た後、何回か『おてつだい』を行って、今はシールが5つ溜まっている。イベント期間は1週間で残り6日で25個もシールを集めなければいけない。まぁ、毎日5つシールを集めればいいので、何が問題というわけでもないのだけれど。
ちなみにりんにシールの数を聞いてみると、なんと既に8枚もシールを集めていた。『おてつだい』をやった数だと俺の倍はある。……俺の『おてつだい』のうち1つはお菓子を食べてただけだから、それを抜けば倍の数だ。
「きいたはなしだと、もうはんぶんもしーるもらったこもおるみたいやなぁ」
「そ、そうなんだ。すごいね」
一体どんな修羅なんだろうか。りんの聞いた情報だと、ローズゴールドの長い髪の毛に、青と白のエプロンドレスの幼女だそうだけど。……すごく知り合いな気がするけれど、気にしないことにしよう。そうしよう。りんも突っ込んだ話はしないようだし。
そんな話をしながら、てくてく。てくてく。
りんが見つけた面白そうな『おてつだい』をやっている場所を目指して歩いている。
そういえば、りんと2人だけって珍しい気がする。
「そういえば、ひなちゃんといっしょってめずらしいなぁ」
茶色のサイドテールを揺らしながら、りんはそんなことを言う。
おーっと、同じことを考えていたみたいだぞ?
確かにりんはるなと一緒にバカをやっていることの方が多い。俺もみづきを抱きかかえながらおとなしくしていることの方が多いのだけれど。だからと言って全く話さないかと言われればそんなことはないし、不仲かと聞かれれば違うと断言できる。組み合わせが珍しいだけだ
「まぁ、みづきちとぎゅーぎゅーするんわええけどな。あのこかわええし」
「でしょー」
なんかみづきが褒められると自分も嬉しくて、なんとなくドヤってしまった。それを見たりんが苦笑している。
「なかええのもええけどな。みづきちばっかりやなくて、うちにもかまってんかー」
うりうり、とわざとらしく抱きついてくるりん。結構な勢いでくるものだから、ついよろけてしまう。
「かまってって……いっつもるなといっしょにいるじゃない」
「そうなんやけどな、るなちゃんもおもろいし」
かまうもなにも、いっつもそういう組み合わせになるから、あんまり一緒になることが少なくなるわけで。……でも、確かにみづきと一緒で、いつも同じ人といることで俺は安心しているのかもしれない。それは心地はいいけれど、よくはないのかもしれない。その結果、今の、見た目も相まって人に避けられている自分があるのだから。
「まぁわるいとはいわへんけどな。ひとはらくをしようとするいきものやから。ただ、いろんなひととおはなしするのもいいもんやで、なんて。『おにーさん』からのじょげんやで」
むぅ。
俺も自分のことはいい年をしたおっさんだと思うけれど、今のりんは、見た目同じ幼女なのに年上の信頼感のようなものを感じた。頼りになるような、そんな感じだ。
りんはりんで、『おにーさん』として俺たちのことを見ていてくれていたのかもしれないな。幼女なのだから、『おねーさん』なんじゃないのか?なんてことは野暮だから言わないでおこう。
何か、りんのことを少し見直したというか、認識が改まった。そんな日だった。
「あ!ちょうちょさんとんでるやん!?まてー!」
……訂正、やっぱり何も考えていないのかもしれない。とにかく、走って行ってしまうりんのことを、俺は追いかけるのだった。
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