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12話:気持ちの変化★

「いやー、昨日は予想外だったな。ぶっちゃけ、『おてつだい』クエストのこと自体忘れたけどもな」

「そうだな。まさか、失敗なんてことがあるなんてな」


  昨日、るなやみづきと一緒に、洗濯をしていた洗剤でシャボン玉を作って遊んでいたことを思い返す。

  あのプールや洗剤なんかは、確かに『おてつだい』クエストを発生させたから用意されたものだった。


「俺も、つい夢中になっちゃったから、その時は気がつかなかったけどまさか、『おてつだい』クエストで用意されたもので遊べるなんて思わないしなぁ」


  そりゃそうだ。

  大抵の場合、『おてつだい』クエストを受けた後に、そのための道具で遊ぼうだなんて、普通の大人なら思いもしないだろう。


「けどじゃあ、なんでお前はあんな風な行動に出たんだよ」


  それだというのに、月本、るなは『おてつだい』クエストを受けている最中に、別の道具を持ってきて遊ぼうとした。

  確かにあのゲームの中での見た目は、年端もいかない女の子ではあるのだけれど、その中身は俺と同い年のいい大人だ。普通は思いつかないような行動を、月本はとったのだ。


「うーん、うまくは言えないんだけどな。俺もどうにか、あの子、みづきに好かれようと一生懸命だったからな。後は、洗濯してる時に、一瞬小さいシャボン玉が見えて、これだ!と思ったんだよ。後は、昔にああやって遊んだことがあるからかな」

「なるほどなぁ」

「あんまり聞いてくれるなよ……俺だって、恥ずかしいんだからな」

  見れば月本の顔は、表情こそ普段と変わらないように取り繕っているものの、薄っすらと赤く、照れていることがわかる。

  普段なんでも卒なくこなす月本にしては、珍しい表情だった。


「んー、やっぱ、あっちの世界だと、いつもの自分と違うところがあるというのか……、やっぱり、うまく言葉にできないんだけどな」


  頭の後ろをボリボリと書きながら、やっぱり照れ臭そうに月本は言う。


「お前でも、照れることあんのな」


  俺は、ほんのちょっとだけ笑いながら月本に言った。


「お前ほどじゃねーよ、ひなちゃん」

「んだてめー、やんのか」


  ちょっとでも月本こいつに好感持った俺がバカだった。

  お互いに喧嘩腰になりながら、手元にあった酒を飲み干して、追加の注文をした。

  ドリンク類はそう時間もかからずに、すぐに運ばれてくる。


「……んで、今日はその話しに来ただけか?」

「いや、お前が積極的に人に関わろうなんて、珍しいと思ってな」


  そう言われると、そうかもしれない。

  人見知りで、初対面の人と話すのが苦手で、顔が怖いと言われて、人が遠ざかっていった俺が、他の人と、自分から関わりたいと思ったのはいつ以来だっただろうか。

  そう遠くない過去に、思ったことがあった気もするが、あまり覚えていない。もう随分と、人が遠ざかって、いや、自分から遠ざけて生きていたように思える。

  それなのに、どうして俺は、あの子と関わりたいと思ったのか。

  月本の言う通り、あっちの世界の自分と、現実の自分とじゃ、何かが違うのだろうか。どっちも同じ自分のはずなのに、やっていることが随分違う。

  姿が違うから、心境なんかも変わるのだろうか。なんだか途端に、それが怖くもなってくる。


「ま、どういう心境の変化か知らないけど、いいことなんじゃねーの。特に、お前にとってはさ」

「……そういうもんかな」

「そういうもんだろ」


  俺自身でも気がつかないほどに、あのゲームは俺にいろいろな影響を与えているらしい。

  それがいいことなのか悪いことなのか、まだ判断がつかないのだけれど、でも、月本の言うように、きっといい方向に進んでくれると思う。

  結局のところ、俺がその変化を、自覚がなかったとはいえ受け入れているのだから。

  だから、明日からも、もっといろいろな遊びをしたいと思う。

 

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