鬼柱
私の家には、おかしなものがある
それは、一見すると、ただの柱なのだ
柱、家の中に何本も立っている木である
その一つに
「逆さ柱」と言う物がある
みなさんは、しっているだろうか
完璧とは、わざと一つ不完成を、残すことである、と
知恩院の忘れ傘しかり、完成された物は、未完成なところを残して
ようやく一人前と認める
美人弱命
妻を取るならブスが良い
すべて良いなど、誰も許さないのだ
そして、私の家であるが
それも、そう言う意味を込めて
本来、木が育った位置とは
真逆の状態で建てたと
うちのじいちゃんが言っていた
だから、私は子供の頃から
その柱だけ、妙に関心の目で
見ることがあった
でも、どんな完璧なものでも、長くは続かない
それは神でも仏でもない
形は何時か崩れる
プリンは食べないと腐る
だから食べる
怒られても
私の家が、ついに立て替えと言うことになった
そして、あの柱も、壊されることになった
また再利用できないものか
お爺ちゃんが、最後まで言っていたが
結局、壊されることになった
昔の材木は、今使うのは骨が折れると言うことだったという
その昔の家は、シャベルなんかで、たった二日で、そのすべてを
破壊した
昔こわごわ、はいった二階も
いつもみんなが何げなしにいた、茶の間も
全て全て
それこそ、幻だったかのように
家が取り壊されて
新しく住めるまでになるには
半年の間
仮設に、すむことになった
と言っても、古い家の横に、新しい家が、前に建てており
其処に、お爺ちゃんとおばあちゃんも
住むことになったのだ
其処には、台所がなかったので
それだけコンテナハウスに急拵えで作り
後は従来のままである
唯一違うのは
なにも使われていなかった部屋に
おばあちゃん達が居ると言うことだ
それも、今日までである
あたらし家は
どうもなじめない
古い家の方が良かったと思う
私は、建て替え当初から
そう思っていた
でも、それは行われた
何もかもが新しい
何もかもが
「・・新しいな」
おじいちゃんが言った
「そうですね」
母が言う
「前の方が良かった」
誰も私の言葉に耳を貸さなかった
しかし、妙なものが見つかるまで、それほど時間はかからなかった
最初に発見したのは、弟の声である
「あれーー、これでけ、色が古いよ」
わたしは、何だろうと、弟の声のする方へ行った
そこで私は、信じられない物を見た
其処にあったのは
逆さ柱だったのである
「みんな」
私は住ぐに家族を呼び寄せた
しかし、なぜか大人は、それが見えないように
「なんだ、新しい柱じゃないか、どこが逆さ柱なんだ」
と、言う
おじいちゃんもおばあちゃんもお父さんもお母さんも
みなが、そう言う
しかし、それは明らかに茶色く
あの逆さ柱であるのだ
「何で分からないの」
「だって、新しい、白い柱じゃない
おじいちゃんが残した言っていったけど
無理だったでしょう」
母が言う
「でも、あるもん」
「いい加減にしなさい」
母が、珍しく怒鳴った
おじいちゃんの目もどこか厳しい
なんかおかしい
そうきが付いたのは
其処まであとではなかった
「普通の柱だよ」
友達を連れてきても、皆が口をそろえてそう言う
お客さんも
でも、私と弟には、そう見えるのだ
どうしてなのだろう
子供だけが見えるというわけでもなく
それなら、大人の中で誰か見えるものがいるかと聞かれても
誰もいない
・・そうなると、内の子供だけが
でも最近、弟がおかしな事を言う
「なんか、ぼやけて見えるんだ」
何が・・・
私は聞いた
「・・それが、茶色なのか、新しいのか分からない」
私は、古い柱が見える
霞んでなど居ない
「あんたまで見えなくなるの」
弟は首を傾げるだけで
要領を得なかった
その晩、私は夢を見た
その夢は、ひどく暑苦しく
そして息が苦しくなっていた
私はそのとき
何かを見ていた
それは白い着物を着た人間達が
一人の子供を
木に括り付けていた
そして、その子供の首に
縄を掛けている
その先は、木の幹である
何をやっているのか
私は分からなかった
そして、子供の首が宙を揺れた
私は、怖かったか近づいた
そして、気が付くことになる
その子供の顔が
私そっくりであるという事に
私は目を覚まして、あれが夢だったことに気が付いた
そして、なぜか、その理由が分かった
それは、どうしてあんな事をしたのか
非完璧、未完
家が長く続くように
ただの幸せではないように
昔の人間は犠牲をよういたのだ
その家の子供を
一番大事なはずの子供を
家の柱になる木に縛り付け殺す
そうして、できた木を、逆さにして
わざと不吉な物を
家の重要な柱にする事で、悪を寄せ付けない
完璧では無くすことで、中和を取ったのだ
その日から、私は毎晩夢を見る
あの柱が呼んでいるのだ
私を
私は、怖くなり、家族に、相談した
しかし、皆怪訝な顔をして
妙な夢を見ただけという事にした
しかし、おじいちゃんだけが
鋭い目をして、一人考え込んでいた
「なあ、後でわしの部屋に来なさい」
おじいちゃんが食事の後に
私に言った
私は、食べ終わると、そのままおじいちゃんの部屋に行く
おばあちゃんは、まだお勝手でお母さんと
洗い物をしていた
部屋にはいると
畳の上で
正座して座っている
おじいちゃんの姿がある
「ああ・・来たか」
おじいちゃんは、そう言うと
私に座れと言った
「あの話、もう少し詳しく聞かせてくれ」
おじいちゃんは、いつもの暖かな笑いではなく
あのときの鋭い目を私に向けたまま
そう言う
私は、あの夢のこと
そこで感じたことを
全て言った
「そうか・・・そうか」
おじいいちゃんは
何度も頷いて
私の話を聞いた
「それで、お前は、いつじぶんがその柱に殺されるか分からなくて
怖いのだな」
「うん」
私は頷く
「それは、柱が殺そうとしているのだろうか」
「どう言うこと」
「柱は、其処までして、家を守りたいのだろうか」
「・・・・」
何が言いたいのだろう
先ほどから重苦しい言葉のまま
苦虫でも噛み潰したような声で言う
「柱はしょせんは、柱
もし、人がそこで殺されても
その柱には、柱でしかないのでは無いのか」
「どう言うこと」
「もしかしたら」
そのとき、私は目線を感じた
何だろう
私は振り返る
「見ちゃいかん」
おじいちゃんが、叫んだ
しかし、遅かった
私は、振り返るなと言う言葉を聞きながら
その首は
目線を探していた
「・・あ」
其処には、私が立っていた
いや違う
それは、あのときの
あの、死んでいた、あの少女だ
でも、何でおじいちゃんは、振り返るなと言ったのだろうか
その少女は、私に一歩近づいている
しかし、まるで歩いている風ではなく
滑っているようである
「おじいちゃん」
私は、体が動いていないことに気が付いた
しかし、それは近づいていた
「ずるいよ」
小さな声が聞こえた
「ずるい、ずるい、ずるい、何で私だけ」
それは、私の鼻先まで、顔が近づいている
「何で私だけ」
その目は、どこにも向いていない
何も見てない無い
おじいちゃんは何を見ているのだろう
「おじいちゃん」
私は叫んだ
「わしを」
「・・・」
まるで祈るような声を聞いた
「わしでは、駄目なのか」
どうも、私の記憶は
其処までであった
目を覚ますと
私は、布団の中で
そして、下では、おじいちゃんのお葬式をしていた
果たしてあのとき何があったのか
私は分からない
しかし、おじいちゃんは、首を括っていたと
何年も経ってから、親から聞いた
そして、私は、そのとき
柱の下で、倒れていたという
ショックから
それがみんなの考えのようで
また倒れないように
言わなかったそうだ
しかし、そうなると、あの柱には・・・
私は考えないようにした
どうも、あの柱をたまに見ると
おじいちゃんの、面影が見えるような気がして仕方がないのだ