恋人の最後
「もういいっ!」
捨てゼリフはありきたりな決めゼリフ。
こんなものじゃあいつが動じない事くらい知ってるけど。
でもでもでも!
今回ばかりはダメだった。
あいつがだらしない事も甲斐性なしな事も分かってたけど。
それでも。
「約束は、守るって言ったくせにぃ………」
悔しくて涙がでた。
つきあって三年目の誕生日。
友達の多いあいつの事だから最初は期待していなかった。
恋人よりも友達でいた期間の方が長いから、はなから自分が優先してもらえるなんて思ってなかった。
けど、あいつの方から言ったんだ。
「来週あけとけよ、誕生日だろ」って。
嬉しかったのに。
だらしなくて甲斐性なしのあいつのいい所は守る気のない事は言わない事だ。
約束は守る。
それがポリシーだとか言ってた。
だから例えそれが口約束でもあいつの言った事なら確約した未来も同然だった。
呆然とした。
誕生日になっても連絡は来なくて、昼すぎにこっちから連絡を入れたら留守電で。
何かあったのかと思って心配して家まで行ったら。
思い出してまた涙がでて来た。
そこにいたのは二日酔いに苦しむ、数人の女に囲まれ横になったあいつ。
衣類に乱れがあったとかそんなんじゃない。
浮気したとかきっとそんなんじゃないんだろうけど。
だけど事実は重要じゃなかった。
もういやだ。付き合ってる意味が見出せない。
「ーーーーー!」
自分の名前が呼ばれる。
今更。そう思いながらも止まる足が恨めしい。
「勘違いすんなよ」
「なにを」
息を切らしたその姿わ視界からわざとはずす。
「これ」
差し出された紙袋。
「……何」
「プレゼントだよ、誕生日の」
「………あの子達に、選んでもらったの?」
「だから勘違いすんなって、あいつらはそんなんじゃねぇよ」
その口調が彼女達との親しさを示して余計辛い。
「いいか、よくあるパターンだ妹だ」
は、とあいつの顔を凝視してやる。
「何言ってんの!?全部で何人いたと思ってんの?!それも年の差だってあんまなかったじゃない」
「二つ違いの三つ子に……あぁあいつらは妹じゃなかったか。まぁ幼馴染というか隣人の三つ子と同い年の双子だ」
は、とさっきとは別の意味合いであいつを凝視する。
「嘘みたいな本当の話だ。いいか、言い訳みたいで言いたかないがそれで勘違いされるくらいなら洗いざらい聞かせてやる」
つまり。
久しぶりに実家に帰った所、妹集団に見つかって。
デートだからと付きまとう彼女らを追い払おうとしたら逆に好奇心を芽生えさせてしまい。
力づくで逃げようにも女相手に本気出すわけにもいかず、(忘れていたがその内2人は人様の子で)
酒の力で吐かせようと死ぬほど飲まされたあげく、
一人暮らしの住まいまで着いて来たそうな。
「すまん」
「じゃあ…約束忘れてたわけじや、ないんだ」
「たりめーだ。俺は約束は守るっつーの」
ふい、と横を向いて。
「好きな奴との約束だったら、尚更だろ」
小さかったがそれはバッチリ届いてて。
さっきまで泣きっ面だった顔が照れくささから火照はじめる。
「んじゃ、行くぞ」
「ど、どこに?」
「あほ、今回の元凶となった行動。なんで俺が家に帰ったと思ってんの」
ん、と先ほど受け取らなかった紙袋を再び突きつけられる。
「サイズは合ってるはずだからよ」
覚悟しとけ、敵は両親じゃなくあいつらだ。
苦々しく吐き出したあいつの姿を見ていると、今言われた事の意味を理解するよりも、これから向かう先の緊張よりも、
こいつとずっと一緒にいたい。
そう思えて。
それは結局、今回こいつからの誕生日プレゼントが的を射たって事だった。
後日、あいつの言葉の意味を知る。
敵は親御さんでなく彼女らだった。
まあ、ありきたりなパターンで
プロポーズです( ´ ▽ ` )
タイトルも恋人としての最後って意味です
もうすぐ夫婦なんで(。-_-。)
妹ちゃん’sはいい子達です
ちょっとはっちゃけてるだけです
兄嫁とも仲良くすごす事でしょう