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ここはなにかが欠けている

幻の騎士団

作者: 浮月重月
掲載日:2026/10/27

王国制式騎士団は、第一から第十二まで十二の騎士団が存在する。


実際には、物資食料を運ぶ輸送隊や陣地などを構築する工兵隊、

軍馬の世話をする給餌隊などもあるが、これらは戦闘部隊ではない。


怪我や出産などの事情で一時的に予備役になる騎士達もいる。

彼ら彼女らは予備隊として数えられ、どの騎士団にも所属はしない。


他国でいう親衛隊に当たる、王宮騎士団は戦闘部隊ではあるが、

非常事態以外は王国制式騎士団と命令系統は別扱いである。


が、実はそれとは別に知られざる騎士団があるのではなかろうか、

という無責任な噂がここ、王立中央学院にて飛び交っていた。


その名も「第十三騎士団」、特殊任務を帯びる謎の騎士団である。


◆


噂の出どころは、実のところ誰も知らない。

学生達の妄想から出たのか、あるいは何らかの根拠があったのか。


いわく、特殊な才能を見込まれた一部の騎士が殉職扱いとされて、

通常の騎士団からも予備役からも在籍記録が抹消される。


そうして選抜された者達が、王国の密命を受けて暗躍していると。

彼ら彼女らはあたかも一般人のように振る舞って日常に溶け込み、

ある者は帝国を始め諸国へ極秘潜入し、あらゆる情報を収集する、

またある者は王国内の不穏分子を洗い出し、極秘裏に処分する、

などという話が学生達に広まっていた。


いかにもありそうな話だが、一体誰が考え付いたのやら。

仮に事実だとして、極秘情報を軽々しく一般学生に漏らすだろうか。

その存在が知られれば、秘密部隊としては致命的な問題であろう。

如何にもありそうな話だからか、信じている者は結構存在した。


中には憧れるあまり、入団試験の面接で入団を希望してしまう者も。

まあ、九歳十歳の一期二期三期四期辺りまでなら笑い話なのだが。

もうすぐ成人を迎えようとする者が口走って良い台詞ではない。


だが毎度数人出てきてしまうのだ。第十三騎士団への入団希望者が。

しかも学院時代の成績がそういうのに限ってかなり良かったりする。

面接官達は「ああ、今回もいたか」とその都度諦めた目をしている。


◆


事実、王国の諜報活動や暗殺任務を請け負っている者達は存在する。

ただし学生達の妄想の様に、騎士団のひとつとしてではなかった。


実は冒険者なのである。


彼ら彼女らはわざわざ一般人を装う必要すらなかった。

しかも騎士でも兵士でもない為、国境を容易に超えられるのだ。

当の冒険者組合ですら把握していないのだが、結構な人数がいる。

王国だけでなく大公国や共和国も似たような手口を使っていた。

部外者なのでさすがに暗殺依頼などは行ってはいないが。


尤も、それを入団希望者が知ったからといってなるとは思えない。

彼らは言わば浪漫を求めているのだ。泥臭い冒険者などではなく。


国内であれば。後ろ暗い任務は王宮騎士団が一手に担っている。

例えば特殊な情報収集。あるいは問題ある人物の極秘処分など。

万が一にも外部に漏れるようなことがあってはいけない。

ゆえに王宮騎士団は四大名家近辺から選ばれている。


堂々と表舞台に出ているので、怪しんでいる者は極少数にとどまる。

まあこちらは制式騎士団所属の者が声をかけられる事もあるので、

あながち間違った入団への道筋とも言い切れないが。


これは王族と四大名家の中枢、ごく一部の官僚だけが知る事実。

王国制式騎士団の退団者は、有力貴族配下の騎士団に再就職したり、

あるいは故郷に帰って後進の指導に当たったりしています。

学院で教鞭を振るう、というか実技指導に就く者も。

(家を継ぐために退団する人も当然います)


在籍記録を抹消されて第十三騎士団へ…という者はいません。

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